11月になると、サッカーの予定で手帳が埋まる。筆者はそう感じながら、12年前の11月にも同じことを書いた覚えがあります。
2014年11月に筆者が書いたとおり、当時の筆者は、リーグ優勝争い、カップ戦の決勝、天皇杯、そして移籍の話が一斉に押し寄せてくる11月を「繁忙期」と呼びました。あれから日本のサッカーは、シーズンそのものの区切りを動かしました。2026/27シーズンから、Jリーグは8月に開幕して6月に閉幕します。
では、筆者が繁忙期と呼んだ11月は、いまどうなっているのでしょうか。当時の記事に書いた予定をひとつずつ現在の日程に当て直していくと、11月という月の中身が入れ替わっていることが見えてきます。
2014年11月に、筆者は何を見ていたのか
当時の記事の書き出しは「佳境に入ってきました」でした。並べていた予定は4つです。ナビスコ杯でガンバ大阪が優勝したこと。Jリーグでは浦和レッズが優勝に大手をかけていること。天皇杯が決勝に向けてラストスパートに入っていること。そして、選手の移籍話です。
筆者はこのとき、ガンバ大阪について「三冠に向けて好発進」と書きました。一方で、リーグは浦和が獲るだろうと見ていました。結果はどうだったか。Jリーグは公式サイトの「Jリーグヒストリー」で、この年の最終節をこう記録しています。
同勝点の浦和が名古屋に敗れ、同じく優勝の可能性を残していた3位の鹿島も鳥栖に敗戦。そのまま逃げ切りを果たしたG大阪が、2005年以来2度目の優勝を成し遂げた。
Jリーグ「最大14ポイント差を逆転。驚異のⅤ字回復を見せたG大阪が昇格イヤーに優勝を成し遂げる!【Jリーグヒストリー:2014年】」
つまり筆者のリーグ予想は外れ、ガンバ大阪への見立てのほうが当たっていたことになります。同じ記事は、その先まで記録しています。
さらにこの年のG大阪はナビスコカップ、天皇杯も制し、史上2チーム目となる国内三冠を達成している。
12年前の筆者が11月の時点で見ていた「佳境」は、実際に三冠まで一直線につながっていたわけです。ここまでは、当時の記事の答え合わせです。ここから先が本題になります。
シーズンの区切りが、年末から初夏に動いた
まず用語を整理させてください。世間では「秋春制」あるいは「秋冬制」と呼ばれますが、Jリーグ公式が使っている呼称は「シーズン移行」です。ここでも、公式資料を引くときはその言い方に合わせます。
Jリーグは2023年12月19日の理事会でこれを決議しました。
これにより、2026-27シーズンは、2026年8月1週頃に開幕、12月2週頃の試合後から2027年2月3週頃の試合までをウインターブレーク期間とし、2027年5月最終週頃に閉幕となります。
Jリーグ「2026-27シーズンからのシーズン移行について」(2023年12月19日)
そして実際の日程は、2026年6月16日に確定しました。
2026/27明治安田J1リーグは8月7日(金)に開幕し、12月19日(土)の第20節まで2026年内の対戦を行います。その後ウインターブレークを経て翌年2月13日(土)に再開し、6月6日(日)に最終節(第38節)を迎えます。
Jリーグ「2026/27明治安田Jリーグ(第1節~第38節)対戦カード決定」(2026年6月16日)
ここで11月の位置づけが変わります。2014年の11月は、シーズンの終わりが見えている月でした。順位も、タイトルも、契約も、年末に向けて一斉に決着していく時期です。2026年の11月は、8月に開幕したシーズンがまだ折り返しにも達していない、途中経過の月になりました。
移行そのものの利点と課題については、当サイトでも別に扱っています。制度の側から読みたい方はシーズン移行と0.5シーズンの論点を整理した記事、選手の負担という観点からは移行に伴う健康面の課題を扱った記事もあわせてどうぞ。
11月に、タイトルが決まらなくなった
2014年の記事で筆者が真っ先に書いたのは、ナビスコ杯決勝でした。Jリーグの歴代決勝の記録では、2014年大会は決勝の舞台が埼玉スタジアム2002に変更となった年で、ガンバ大阪が延長の末にサンフレッチェ広島を3-2で下しています。筆者がこれを書いたのは2014年11月10日ですから、その時点でもう優勝チームが決まっていたことになります。当時のナビスコ杯は、11月のうちにシーズン最初のタイトルが確定する大会だったわけです。筆者が「三冠に向けて好発進」と書けたのも、そのためでした。
現在のJリーグYBCルヴァンカップはどうなっているか。Jリーグの大会概要によれば、2026/27シーズンのプライムラウンドは、準々決勝が第1戦11月11日(水)・第2戦11月15日(日)、準決勝が第1戦2027年3月24日(水)・第2戦3月28日(日)で、決勝の日程は未定です。
つまり11月に行われるのは準々決勝までで、優勝チームが決まるのはウインターブレークを挟んだ先ということになります。同じ大会概要には、出場資格登録期限が2027年3月19日(金)と記載されています。カップ戦を戦うメンバーを締め切る日まで、11月からは4か月以上あるわけです。
11月にスタジアムで紙吹雪が舞い、優勝監督が胴上げされる。あの光景を11月の風物詩として記憶している方にとっては、いちばん実感の湧く変化かもしれません。予定が減ったわけではなく、11月の試合の「意味」が、決着から通過点へ移ったということです。
11月から天皇杯が消え、代わりに「元日」が戻ってきた
当時の記事で、筆者は「天皇杯も元旦決勝に向けラストスパート」と書き、そのうえで「元旦」の3文字に取り消し線を引いていました。書いた本人としては、消さずに残したうえで線を引く、という小さな抵抗のつもりでした。線を引いた理由は、その年の決勝が元日ではなかったからです。
第94回天皇杯全日本選手権大会は12月13日、横浜・日産スタジアムで決勝が行われ、ガンバ大阪(J1)がFW宇佐美貴史選手の2ゴールなどでモンテディオ山形(J2)を下して優勝しました。
日本サッカー協会「ガンバ大阪、山形に3-1勝利で天皇杯優勝 ~Jリーグ史上2度目の3冠達成~」(2014年12月14日)
12年後の日程を見てみます。日本サッカー協会が発表した天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会の日程は、1回戦が8月19日(水)、2回戦が8月26日(水)、【3回戦】9月23日(水・祝)、10月7日(水)、【ラウンド16(4回戦)】12月9日(水)、【準々決勝】12月23日(水)、【準決勝】12月27日(日)、そして【決勝】2027年1月1日(金・祝)/元日、となっています。
お気づきでしょうか。11月に天皇杯の試合日が1日もありません。3回戦の10月7日から、ラウンド16の12月9日まで2か月あきます。筆者が「ラストスパート」と書いた11月の天皇杯は、日程表から消えました。
その代わり、決勝が戻ってきました。
MUFGスタジアム(国立競技場)での開催は4年連続、元日開催は第100回大会以来6年ぶりとなります。
日本サッカー協会「2026年8月開幕、決勝はMUFGスタジアム(国立競技場)にて元日開催 天皇杯 JFA 第106回全日本サッカー選手権大会」
12年前に取り消し線で消した「元旦」が、日程表の上に戻ってきたわけです。筆者にとっては、この話をもう一度書きたくなった理由の半分がここにあります。11月から仕事がひとつ減って、元日にひとつ戻ってきた。予定表の話でありながら、少しだけ感情の動く変化ではないでしょうか。日程はJFAの大会日程の発表で確認できます。
移籍の話は、もう11月には固まらない
当時の記事で筆者は「この11月で、ほぼ固まる選手の移籍動向には大注目なのです」と書きました。シーズンが年末で切れていた頃は、契約の切れ目も年末でした。だから11月には来季の去就が漏れ聞こえてきたのです。
ではいまはどうか。移籍がいつ動けるかは、日程ではなく規則で決まっています。
Jリーグに参加する各チーム(第1種)については、選手は日本サッカー協会(JFA)が定めた年2回の移籍を認める期間(登録ウインドー)においてのみ、登録することができます。
Jリーグ「選手、チーム、試合関連情報/シーズンの定義と登録期間(ウインドー)」(2026年8月25日確認)
選手が動けるのは年2回のウインドーの中だけで、その外では原則として登録が動きません。シーズンの開幕が8月に移った以上、この2回のウインドーが置かれる位置も当然ずれます。
ここで正直に書いておきます。2026/27シーズンの登録ウインドーの具体的な日程は、Jリーグ公式の該当ページにまだ掲載されていません。掲載されているのは移行期にあたる2026特別シーズンのものです。11月がウインドーの内か外かは、日付では言い切れません。確定している規則の部分だけを引きました。
言えるのは、11月に移籍情報が集中する理由だった「年末という区切り」が無くなった、ということです。2014年の筆者が11月に耳をそばだてていた種類の話は、いまは別の月に移っています。
それでも、11月は繁忙期なのか
ここまで並べてきた変化をまとめます。11月にあったナビスコ杯の決勝は、ルヴァンカップの準々決勝になりました。11月にあった天皇杯は、日程表から消えて12月と元日に移りました。11月に固まっていた移籍の話は、区切りごと動きました。リーグ戦だけが、シーズンの途中経過として11月に残っています。
では、11月はもう繁忙期ではないのでしょうか。筆者はそうは思いません。予定が減ったのではなく、詰まっている中身が変わったからです。ルヴァンカップの準々決勝はホーム&アウェイの2試合で、11月11日と11月15日に組まれています。リーグ戦も12月19日の第20節まで続きます。11月の手帳は、やはり埋まります。
変わったのは、11月に「何かが決まる」という感覚のほうです。12年前の筆者は、11月に結論が出るものを数え上げて繁忙期と呼びました。いまの11月は、結論が出る月ではなく、結論に向かって順位も編成も動いている最中の月です。忙しさの質が、決着の忙しさから途中経過の忙しさに変わったと言えるかもしれません。
そして年が明ければ、元日にMUFGスタジアム(国立競技場)で天皇杯の決勝があります。シーズンは2月に再開して、6月に閉幕します。1年を通してどこかで何かが動いているというのが、移行後のカレンダーの姿です。手帳が埋まるという意味では、11月に限らず繁忙期になったのかもしれません。
12年前の記事は、ひとつのシーズンの終わりを眺めた記録でした。今回は、そのシーズンの区切り自体が動いたあとの記録です。次にまた手帳を開いて確かめてみようと思います。
