必見!サッカー戦術100通りの考え方!


100チーム、指導者が100人いれば、サッカーの戦術は少なくとも100通りある。筆者はずっとそう思っています。ただ、そのうち何人が、自分の戦術を筋道立てて2時間語れるでしょうか。

サッカーの講演会を開いているジャーナリストも、サッカーの記事を書き続けている記者もいます。戦術を語る人はたくさんいます。けれど、独自のサッカー観を戦略から組み立てて、それをチームの戦術として2時間話し切れる人となると、そう多くはないはずです。

そこで今回は、筆者が現場で使ってきた「戦略」と「戦術」の分け方と、その戦術を90分の中で何通り用意しておくかという話を、日本サッカー協会(JFA)が公にしている競技規則や育成の考え方と突き合わせながら整理します。

戦略と戦術は、何がどう違うのか

サッカーで「戦略」という言葉を使う場面はよくあります。ただ、チーム戦略とチーム戦術を同じようなニュアンスで使っている指導者は、けっこう多いのではないでしょうか。そもそも区別していないことすらあります。

では、戦略と戦術では何がどう違うのか。定義は使う場面で少しずつ違いますが、基本的なところは変わらないと筆者は考えています。

戦略とは、その試合における全体のシナリオです。今日の試合は前半15分で先制する。同点に追いつかれるが、後半のアディショナルタイムに勝ち越して勝つ。ざっくばらんに言えば、このようなシナリオのことです。

戦術とは、そのシナリオを実行するための手段を具体的にしたものです。今日の相手は左サイドが弱いから、うちは右サイドから攻めよう。これが作戦です。そのために、ドリブルが一番うまいA選手を右サイドのウイングとして高い位置に配置しよう。これが戦術です。

シナリオがあって、そこに至る道筋を具体化したものが戦術。この順番が入れ替わると、話がややこしくなります。

なぜ言葉の定義にこだわるのか

戦略と戦術が頭の中で散らかっていると、戦略のない戦術を一生懸命に試行錯誤することが起こります。これは珍しいことではありません。

たとえば「今日はハイプレスでいく」と決めたとします。これは戦術です。では、そのハイプレスで試合をどう運ぶつもりなのか。前半のうちに1点取って、後半は相手に持たせて構えるのか。それとも90分間ずっと圧をかけ続けるのか。ここが決まっていないと、選手は「いつまで走ればいいのか」が分かりません。

言葉の定義は、ほんとうに重要です。放ったらかしにしていると、大きなミスや敗北を招きます。指導者が自分の中で戦略と戦術を切り分けられていないチームは、選手にもそれが伝わりません。

90分は「時間軸」で考える

戦術は90分間、時間軸で考えます。そして引き出し、つまり選手の使い方を複数パターン用意しておきます。

ここで一度、試合時間そのものを確認しておきます。サッカー競技規則の第7条には、こう書かれています。

試合は、前半、後半共に45分間行われる。

日本サッカー協会「サッカー競技規則2025/26」第7条 試合時間

そして、そこに足されるアディショナルタイムについては、同じ第7条にこうあります。

主審は、アディショナルタイムを増やすことはできるが、減らすことはできない。

日本サッカー協会「サッカー競技規則2025/26」第7条 試合時間

つまり試合の終わりの時刻は、ベンチにも選手にも最後まで確定しません。第4の審判員が掲示するのは、あくまで主審が決めた「最小限の」アディショナルタイムだからです。

30秒あればゴールが決まる競技で、終わりが確定しない。だとすれば、常に変わる状況に対して、本来はその都度、戦術は変わるべきですし、変えるべきだと筆者は思います。最後の最後まで戦い抜くための戦術が必要になります。

「引き出し」を何通り持っているか

試合のシミュレーションを事前に行っている指導者は多いはずです。もし退場者が出たら。もしPKを献上したら。もし先制点を奪われたら。もしGKが体調を崩したら。

ただ、そこで止まっていないでしょうか。この程度の対策案を考えているだけ、ということはないでしょうか。

選手の配置、ボールの動かし方、攻守の決まりごと、そして相手のウィークポイントを早々に見抜いたシステム変更。90分間、常に戦術を変更するのかしないのか。細かいところまで考えて判断するには、時間軸で考えることが有効です。

逆に言えば、90分間集中して戦い抜く気力とプランが必要になります。あなたの戦術には、何通りの引き出しがありますか。相手に合わせる戦い方と、自分たちのサッカーで戦う戦い方。どちらを選びますか。

どちらが正解ということではありません。大事なのは、どちらも選べる状態にしておくことです。引き出しが1つしかなければ、それは選択ではなく、ただの決め打ちになります。

引き出しは M-T-M で増やす

では、その引き出しはどこで増えるのか。試合、練習、試合の繰り返しの中でしか増えません。練習でしたことを試合でトライし、出てきた課題を練習で解決し、また試合でリトライする。練習のための練習では意味がありません。

この「試合、練習、試合」の循環は、JFAが育成の考え方として公式に掲げている M-T-M(Match-Training-Match)そのものです。JFAは、指導者にとっての意味をこう説明しています。

指導者にとっては、M-T-Mで、試合で日頃のトレーニングの成果を確認し、その結果を分析してトレーニングを重ねまた次の試合に臨むというサイクルの中で、課題克服にトライし、一つ一つ取り組み、積み重ねていくことができるという面があります。

日本サッカー協会「ゲーム環境整備」

注目したいのは、JFAがこのサイクルを選手だけでなく指導者が上達する仕組みとして説明していることです。同じページには、分析・計画・トレーニングというサイクルを重ねることが指導者自身のスキルアップにつながる、という趣旨のことも書かれています。引き出しが増えるのは選手だけではない、というわけです。

試合では、練習でやったことしかできない。筆者はそう思っています。だからこそ練習で様々な戦い方のパターンを試してみる。選手の使い方の経験値やパターンを増やすことで、いろいろな場面で考えられる引き出しを、事前に増やしていくことが求められるのではないでしょうか。

そして、このサイクルで効いてくるのが「分析」の部分です。感覚で振り返るのではなく、課題を要因に分解して並べてみると、次の練習で何を触るべきかが見えやすくなります。製造業で使われる手法をサッカーの分析に持ち込んだ話は、特性要因図を使ってプレーを分析する記事にまとめています。

100通りの戦術は、どこから生まれるのか

冒頭の話に戻ります。100チーム、指導者が100人いれば、戦術は少なくとも100通りある。これは、戦術が「正解探し」ではないからです。

同じ相手、同じ会場、同じ90分でも、どんなシナリオを描くかで打つ手は変わります。そのシナリオが指導者の数だけあるのなら、戦術もその数だけ生まれます。100通りの戦術とは、100通りのシナリオの裏返しです。

だからこそ、自分の戦略を筋道立てて語れるかどうかが効いてきます。2時間話せなくてもかまいません。ただ、少なくとも自分のチームの選手に対して、今日はどんなシナリオで、そのために誰をどう使うのかを、迷わず説明できるかどうか。そこが出発点になるはずです。

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