先日、来シーズンに向けて非常に大きな契約が締結されました。バルセロナと日本企業である楽天の大型スポンサー契約です。
楽天はご存知のようにJリーグクラブのヴィッセル神戸のメインスポンサーであり、ヴィッセル神戸の運営法人である株式会社クリムゾンフットボールクラブは楽天の100%出資企業です。
実質的にJリーグクラブを運営している日本の企業が、広告戦略の相手として世界最高峰のバルセロナを選んだのはなぜだろうか。
楽天とヴィッセル神戸とバルセロナ
楽天株式会社は、誰もが知っているだろうECモール「楽天市場」を中心とした事業体で、現在はグループ営業利益の過半数をオンライン株式販売やクレジットカード等の金利・手数料収入で稼ぐオンライン金融事業者である。
その他、M&Aを繰り返し楽天グループを拡大させながら各種オンライン事業を手掛け、1997年に現会長兼社長の三木谷浩史が創業して以降、現在の売上高は7,135億55百万円(2015年12期連結)まで成長している。
コボ、 プライスミニスター、 Rakuten.com Shopping、 OverDrive、 Rakuten LinkShare、 Vikiなど、世界各国に展開するサービスを子会社で保有しており、2006年7月18日にはFCバルセロナとのマーケティング・パートナーシップ契約を締結、2014年12月6日にはクリムゾンフットボールクラブ(ヴィッセル神戸)の全株式取得を発表している。
そんな歴史を辿っていた企業がついに、2016年11月16日にはリーガ・エスパニョーラに所属するFCバルセロナと、2017年から4年間256億円(為替レートにもよるが報道されている一般的な金額を記載)でスポンサー契約をすることが発表された。
基本的にバルセロナはメインスポンサーとして楽天の広告戦略に伴う要望を聞くことになるが、今現時点ではヴィッセル神戸との関係性はそこまで深くはなく、アジアツアーでの対戦相手がヴィッセル神戸となることが予想される程度である。
Jリーグの魅力で4年契約256億円を引っ張れるのか
単年で見ると、Jリーグで一番稼いでいるクラブである浦和レッズの年間営業収入を上回る金額である。
当然、バルセロナほどのサッカークラブになるとその金額は妥当となるわけだが、全世界にファン・サポーターを持つクラブの資金源としては、日本企業からの支援は今注目されているアジアサッカーマーケットをしっかり抑えることができたのではないだろうか。
楽天がヴィッセル神戸に256億円を投じることはなかっただろうが、日本にはまだまだ多額の資金を持て余している企業がいるのは間違いない。
また、バルセロナが何年かけて楽天との交渉を進めたのか知らない。もしくは、楽天がバルセロナに対して交渉を続けていた可能性の方が高いが、それがどのような過程で成就したのかはわからない。
ただ、数ヶ月間の交渉で4年間256億円の契約が締結されたことを考えると、サッカー界、スポンサー獲得に物申すでも述べましたが、スポンサー側とクラブ側の両方にメリットがなければ成り立ちません。単なるお願いレベルではない交渉が繰り広げられ、256億円の大型契約がなされているのです。
この契約に総計何名の人が仕事をした成果であるのかも不明です。しかし、少ない人数でこのような大型契約がなされたのであれば、成果額とすればこれ以上ない契約でしょう。それまで1円も稼げなくても一発逆転で256億円を売上げることもあるかもしれません。
そういう意味では、川崎フロンターレの求人募集に飛びつく前に見るお話で募集していた人材に対し、専属で大型契約を狙わせる条件を加えてもいいかもしれません。
そうなると、当然ながら募集要件である報酬額は最低保証金額であり、大型契約を成し遂げた場合の成果報酬額を明記することで、とんでもないスポンサー営業マンが現れるかもしれません。
256億円の契約を取れた営業マンに、成果報酬として5000万円を確約するだけでは報酬額としては少ないのではないでしょうか。
Jリーグクラブの魅力だけで256億円を引っ張れるような価値はないかもしれませんが、そんなJリーグクラブの現状でも256億円を獲得できる営業マンが、世界のどこかにいるのは間違いないでしょう。
ソフトバンク、ユニクロ、サイバーエージェントが狙い目
世界のどこかに潜んでいるスーパー営業マンを獲得するのは今のJリーグクラブには非常に困難でしょう。さらに、世界規模でスポンサーを探さなければ、今後のJリーグの大きな発展も見込めず、観客動員もおそらく微増微減を繰り返すのではないでしょうか。
来シーズンからは多額の放映権料を獲得できたJリーグは蘇るのかで紹介した通り、少しばかりJリーグクラブの資金環境が変化をとげ、各クラブのお財布事情はこれまでよりも潤う予定です。
ただ、やはり単体クラブの絶対的な成長には、単体クラブによる大型スポンサーの獲得が必要であり、さらにはその大型契約をなすための準備と戦略を徹底的に練る必要があるでしょう。
準備とは具体的にはファン・サポーターの絶対数値の増加です。そして、戦略とはどんな相手をどのようにしてどのタイミングで獲得するのか、成功ストーリーを描くことです。
一発屋のように当たって砕けろでは256億円の大型契約は結べないでしょう。だからこそ、緻密に計算した戦略を駆使して、慎重にかつ大胆にスポンサーの懐を狙って業務を推進しなければなりません。
ただ、専属で全世界の企業を相手にできるような余裕もリソースも今のJリーグクラブには全くないでしょう。そもそもそのような考えに至らない可能性だってあります。今の業務で精一杯だと自分たちで限界の壁を作ってしまっているからです。
とにかく、効率的に大型契約を結ぶとなれば、机の上に座って何をしているか分からないような役職の人に動いてもらうか、社長自らが専属で話をしに行くのがいいでしょう。
スーパー営業マンを獲得できないのであれば、今のJリーグにはそのような動力が必要となってくるのではないでしょうか。
そして、そのようなクラブのトップが動くとなれば、なかなか世界各国を回る余裕はありません。そうなると、国内企業で大型契約を結べそうな相手を探す必要があります。
その相手としてふさわしい日本企業は、ソフトバンク、ユニクロ(ファーストリテイリング)、サイバーエージェントでしょう。
サイバーエージェントは特に東京ヴェルディのスポンサーになったこともあるので、話が通しやすいかもしれません。あくまでも大型契約を狙う前提です。
とにかく、スーパー営業マンに256億円獲得の成果報酬として5000万円を渡すことを確約するのか、または社長やそれに筆頭する役職者が専任となり、大型契約締結プロジェクトを立ち上げるかでしょう。
世界のクラブと資金面で渡り合えるJリーグクラブが現れない限り、この資本主義が中心のサッカー界で上に行くことは難しいでしょう。
ソフトバンクの孫会長、ユニクロの柳井会長、サイバーエージェントの藤田社長が世界のサッカークラブと大型契約する前に、Jリーグクラブは見逃しては行けないと思いませんか?