練習からの帰り道、車の中で何を言えばいいのか迷ったことのある保護者は多いはずです。「サッカーをすれば自信が育つ」「協調性が身につく」。そう言われることは多いのに、実際に子どもの中で何が起きているのかは、外からはなかなか見えません。ここで扱うのは、その見えない部分ではなく、保護者が実際に見られる部分です。身体と心への効果全般はサッカーと健康の記事にまとめてあるので、こちらは「サッカーをやっている子どもを、保護者はどう見ればいいか」に絞ります。
近い話題を扱っている記事との役割分担は、次のとおりです。
| 記事 | 扱っていること |
|---|---|
| サッカーと健康 | 身体と心への効果全般(公的資料の数値つき) |
| 協調性と責任感 | 味方との関係 |
| 礼儀とスポーツマンシップ | 相手・審判への態度(競技規則) |
| ミスからの立ち直り | 選手本人がミスの後にすること |
「サッカーをすれば○○が育つ」は、どこまで言えるのか
「プレー中にエンドルフィンが分泌され、ストレスを軽減します」「自信が向上し、自己肯定感も高まります」「速やかに正しい判断を下す能力を養います」「リーダーシップは将来、職場や人間関係においても重要なスキルとなります」。こうした言い方を見かけることは少なくありません。どれも、そう書かれているだけで、根拠は示されていません。公的な資料で確認できるわけでもありません。
立場ははっきりさせておきます。「サッカーをやると○○が育つ」という因果は、断定しません。公的な資料で確認できることと、確認できないことを、分けて書きます。
確認できないことのほうが多い、というのが正直なところです。ただ、「確認できない」と「効果がない」は違います。保護者が知りたいのはたぶん、「効果があるかどうか」より「うちの子に何が起きているか」のほうだと思います。後者なら、見ればわかることがあります。
日本サッカー協会が、保護者に何と書いているか
いちばん確かな資料は、日本サッカー協会が公開している「保護者の役割」のページです。ここには、はっきりした文章が書かれています。
しかし、サッカーでの主役は子どもです。子どもたち自身が考え、感じ、判断し、プレーしたことを認めてあげてください。それがうまくいかなくても、決して責めないでください。失敗したことは十分にわかっています。上手にできたことはしっかりとほめてください。
そして、その次の一文です。
勝っても負けても大きな拍手。良いプレーには味方、相手関係なしに拍手。そんなすてきな応援が子どものサッカーを盛り上げます。
「良いプレーには味方、相手関係なしに拍手」。ここが、一番伝えたい一文です。
同じページには、保護者の側にも役割があるとも書かれています。「社会の中に多くのマナーがあるように、サッカーを楽しむためにもマナーがあります。サッカーに必要なマナーをきちっと教えていくことは、保護者としての大切な役割です。そして、みなさん自身がマナーを守ることは言うまでもありません。ここではみなさんが主役です」。マナーは大人の担当、プレーは子どもの担当。役割がきれいに分けて書かれています。
協会は、保護者向けの冊子「めざせ!ベストサポーター」も公開しています。むしろそちらを読むほうが早いかもしれません。
何を見れば、変化に気づけるか
「自信がついたか」「協調性が育ったか」は、外から測れません。測れないことを話題にすると、結局は親の印象の話になります。かわりに、見えることを並べておきます。
| 場面 | 見えること | ここまでは言える/言えない |
|---|---|---|
| 試合中 | ボールを持っていないときに、顔が上がっているか | 言える=見えたかどうかは事実。言えない=それが「判断力」かどうか |
| 失点の直後 | 次のプレーに入るまでの時間 | 言える=時間の長短。言えない=立ち直りの速さ全般 |
| 交代を告げられたとき | ベンチに戻るまでの態度、戻ってからの様子 | 言える=見えた行動。言えない=内心 |
| 練習後 | 自分から話すか、聞かれてから話すか | 言える=話し方の変化。言えない=原因 |
| 相手が良いプレーをしたとき | その場でどう反応するか | ★協会が「相手関係なしに拍手」と書いている、まさにその場面 |
この表の右の列が核心です。見えたことは事実として言えますが、その理由や内心は見えません。「今日はよく判断できていたね」ではなく「今日は顔が上がっている時間が長かったね」のほうが、事実に近く、しかも子どもにとっては具体的です。
続けている子は、どれくらいいるのか
数字で言えることも1つあります。日本サッカー協会が公開している選手登録数です。2025年度の登録数はこうなっています。
| 種別 | 2024年度 | 2025年度 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 第4種(小学生年代) | 274,774 | 270,188 | -1.7% |
| 第3種(中学生年代) | 212,846 | 216,612 | +1.8% |
| 第2種(高校生年代) | 150,750 | 148,967 | -1.2% |
| 合計 | 838,657 | 836,297 | -0.3% |
全体では減っていますが、中学生年代だけが増えています。この増減の理由は分かりません。登録数の統計は、理由までは書いていないからです。ただ、「小学校でやめる子が多い」という漠然とした印象とは、少なくとも同じ方向を向いていません。
試合が成り立つのに、何人必要か
もうひとつ、規則の側から言えることがあります。感情ではなく条文なので、子どもにもそのまま説明できます。
サッカー競技規則2025/26の第3条は、こう定めています。「試合は、11人以下の競技者からなる2つのチームによって行われる。そのうち1人は、ゴールキーパーである。いずれかのチームが7人未満の場合、試合は、開始も続行もされない」。
7人を切ったら、試合そのものが成立しません。出場している・していないにかかわらず、その場にいる人数が、試合が存在するための条件になっているということです。「チームのために」という抽象的な言い方より、この条文のほうが具体的です。
交代についても規則があります。公式競技会では最大5人の交代要員を使うことができ、その数はFIFA、大陸連盟または各国サッカー協会が決定します。交代枠には上限があります。だから、出場機会は「やる気」だけで決まるものではありません。規則の側にも制約があります。審判や相手への態度に関する規則は礼儀とスポーツマンシップの記事に、味方との関係については協調性と責任感の記事にまとめています。
うまくいかない時期に、親がしないほうがいいこと
ここは、協会の文章に戻ります。
「それがうまくいかなくても、決して責めないでください。失敗したことは十分にわかっています」。この一文には、理由まで書かれています。本人がすでにわかっているから、というのが理由です。
試合でミスをした後、選手本人が何をすればいいかはミスからの立ち直りの記事にまとめました。そちらは選手向けです。保護者向けにここで書けることは、そう多くありません。
- 帰り道にプレーの反省会をしない。協会が書いているとおり、本人はもうわかっています。
- 「なんであそこでシュートしなかったの」と理由を聞かない。理由は本人にしか見えていません。
- 他の子と比べない。これは規則にも資料にも書いてありませんが、上の2つの延長です。
3つ目には出典がありません。そのことも書いておきます。
結局のところ、確かに言えるのは、日本サッカー協会の資料と競技規則で確認できることだけです。効果を大きく謳うような話にはなっていません。それでも、「良いプレーには味方、相手関係なしに拍手」という一文を持ち帰ってもらえれば、じゅうぶんだと思います。
