ここ数週間、Jクラブが出すアカデミー関連の告知を毎日まとめて読んでいる。試合結果とチケットの案内に混ざって、判で押したように同じ形の文章が出てくる。「2種登録のお知らせ」「JFA・Jリーグ特別指定選手 承認のお知らせ」「トップチーム昇格のお知らせ」。クラブが違っても書式まで似ている。最初は事務連絡の山だと思って読み飛ばしていました。並べ直してみて、そうではないと気づいたことがあります。これは日本が時間をかけて増やしてきた「若い選手を公式戦のピッチに立たせるための装置」の一覧ではないかと。
ドイツサッカー協会が、SCフライブルクのU-19を率いるユリアン・ヴィーデンゾーラーへのインタビューを公開しています。プロの一員になるために選手は何を持っていなければならないかと問われた40歳の指導者は、才能はこの世界への入場券にすぎず、その先で差をつけるのは姿勢と人格だと答えている。あわせて、できるだけ多くの選手をプロの領域に送り込むこと、そして残りの選手を普通の職業人生に備えさせることを、クラブの目標として並べて挙げていました。
入場券という言い方が成り立つのは、入場券の先に部屋がある場合だけ。日本の育成年代を見ていて思うのは、この国が力を注いできたのは姿勢や人格を語ることではなく、部屋を増やすことだったということだ。しかもその増やし方が、日本らしくどこまでも手続き的だった。
一人の選手に、二つの所属を許す
装置の一本目が2種登録。モンテディオ山形はこの夏、ユース所属の2選手をトップチームに登録した際、制度をこう説明しています。日本サッカー協会の第2種チーム、つまり高校生年代のチームに所属したまま、Jリーグの公式戦に出場することが認められる、と。同じ月に清水エスパルス、FC岐阜、ブラウブリッツ秋田、横浜FCも同じ告知を出した。所属を動かさずに、出場資格だけを上へ足す。それが2種登録の中身。
二本目が特別指定で、こちらは外側に開いている。JFAが公開している制度の説明を読むと、目的は種別や連盟の垣根を越えて個人の能力に応じた環境を提供することだと書かれている。認定されると、大学や高校に登録したまま、受け入れ先のJクラブの選手として公式戦に出られる。面白いのは認定の条件。受け入れ先のクラブが、その選手を公式試合に積極的に出場させる具体的計画を持っていること。名誉ではなく出場計画を条件にしている。
運用も具体的だ。クラブは申請書類を各週の火曜日正午までに出し、JFAの技術委員会が各週の木曜日に認定する。週ごとに回るので、シーズンの途中でも進路が動く。8月に大学と高校の名前が次々と流れてくるのは、この週次のサイクルが背景にある。さらに、特別指定として出場した時間は、その選手が将来はじめてプロ契約を結んだときに、契約区分の締結条件を満たす出場時間として加算される。高校生や大学生のうちに積んだ時間が、後の契約の中身に効く。ここまで設計されている。
三本目は、練習場の自由席で始まった
そして2026/27シーズン、三本目が動き出しました。U-21 Jリーグです。東西のリーグラウンドに分かれ、8月下旬に第1節が行われている。
このリーグの性格を一番はっきり感じたのは、川崎フロンターレが出した会場運営の案内を読んだときでした。会場は麻生グラウンド。スタジアムではなく、クラブの練習場である。席はすべて自由席で、開門はキックオフの1時間20分前。照明塔や防球ネットでピッチが見えづらい場所があると事前に断っている。周辺が住宅街のため、鳴り物もメガホンも、声を出しての応援も不可。施設内での食事は遠慮してほしい、ゴミ箱はない、観戦者用の駐車場も駐輪場もない。
つまり日本は、18歳から21歳の選手が観客の前で公式戦をやる場所を、住宅街の練習場から始めた。立派ではない。だが立ち上がっている。
このリーグに何を期待しているかを、清水エスパルスの北本久仁衛U-21監督は会見でこう言っていました。なかなかトップに絡めない選手たちがいかに成長できるか、伸びていけるかという場だ、と。必要なことを聞かれると、まず身体作りはマストだと答え、フィジカルコーチが鍛えていて下半身が変わってきたと具体を挙げた。技術でも判断でもなく、身体。そして観客の前でやることについて、大きな喜びであると同時に責任が発生する、と付け加えている。
特別指定の説明文に戻ると、認定された選手が出場資格を持つ試合として、明治安田Jリーグ、U-21 Jリーグ、リーグカップ戦、プレシーズンマッチが並んでいる。新設のリーグが、既存の制度と最初からつながっている。大学に籍を置いたまま、U-21のピッチに立てるということだ。
器を作ると、日付がずれる
器が増えると、別のところが動きます。FC東京はU-18の田中遥大選手について、2026/27シーズン、すなわち2027年1月からのトップチーム昇格を公表しました。モンテディオ山形の佐藤陸斗選手も2027年1月からの昇格。発令が学年度の途中に来る。高校3年の3学期にプロになるということで、卒業と入団の日付が一致しなくなった。家庭の側から見れば、進学の締めくくりと転居とプロの準備が同じ冬に重なる。制度が器を増やした分の負荷は、こういう形で現場に出る。
フライブルクの指導者が語った姿勢と人格の話は、その通りだと思う。ただそれは、入場券の先に部屋がいくつも用意されている国の言い方でもある。日本がこの数年やってきたのは、姿勢を説くことではなく、2種登録と特別指定とU-21 Jリーグという三つの入口を作って、若い選手が実際にピッチに立つ回数を増やすことだった。姿勢や人格が問われるのは、その部屋に入ってからだ。だから、日本の育成年代を語るときに指導論から入らず、麻生グラウンドの自由席に何人が座っていて、そこで誰が最後まで出たのかを追っていきたい。
出典: www.dfb.de(2026-08-29)
