12000人を見たと書ける国と、8月末に選出の告知が並ぶ日本の違い

ここ数週間、Jクラブのアカデミーの告知を毎日読んでいる。8月の終わりになると、どのクラブからもよく似た形の記事が出ます。「◯◯選手が選出されました」。写真が一枚あって、名前と学年と選出先が並ぶ。クラブが違っても書式まで似ている。毎年の光景なので、長いあいだ読み飛ばしていました。今年は同じ週の分を並べて数えてみて、気づいたことがあります。同じ「選ばれました」でも、行き先が三つに分かれている。

インドサッカー連盟が8月29日に公開したU-15代表の記事に、選考の中身が書かれていました。ベンガルールのCentre for Sports Excellenceで8月16日から合宿が始まり、選手を何組かに分けて招いてトライアルを続けている。8月末までに絞り込み、最終的に14人でアゼルバイジャンへ行く。10月22日から31日の、初開催となるFIFA U15ワールドカップ&フェスティバル。監督のビビアノ・フェルナンデスの言葉に添えて、もう一つ数字が出ていました。2024-25と2025-26の国内シーズンを通して、60人のスカウトが12,000人以上の少年を見た、と。国外にいるインド人選手も対象にした、とある。試合形式は11人制ではないので、準備もその形式に合わせて組み直すと説明しています。

「選ばれました」は一本の線ではない

日本のU-15年代で、8月末に出てくる選出の告知は少なくとも三系統ある。JFAのナショナルトレセンやナショナルGKキャンプ。日本クラブユースサッカー連盟のメニコンカップ東西対抗戦。そしてJリーグのU-15 Jリーグ選抜海外遠征。徳島ヴォルティスの井上蒼士郎選手はGKキャンプ、カターレ富山の辻口緒斗選手やベガルタ仙台の氏家累選手はブラジル遠征、というように、同じ「選ばれました」でも統括団体が違う。

面白いのは、その選ばれ方の入口。メニコンカップ2026の出場選手は、第41回日本クラブユースサッカー選手権(U-15)とJCYインターシティトリムカップの優秀選手から選ばれる。EASTの監督は横浜F・マリノスジュニアユースの梅津博徳、WESTはサンフレッチェ広島F.Cジュニアユースの岡本知剛。つまり、この系統では夏の全国大会に出ていることが前提で、指導者も現場のクラブ監督が務める。大会に出た子の中から選ぶ形で完結している。

JFA側にも、ナショナルトレセンU-14、U-15、女子U-14、JFAガールズ・エイトU-12、そしてJFA U-15タウンクラブ・中体連トレーニングキャンプが並んでいる。中体連やタウンクラブの選手に別の名前が付いているのは、Jクラブのアカデミーと同じ場では拾いにくいからでしょう。所属している団体の名前で、通る道が先に決まっている。

見に行くのか、来た子を見るのか

60人で12,000人を見る、という書き方は、探しに行った側の記録。日本の告知はそうなっていない。まず大会に出る、次にその大会の優秀選手に入る、そこから選抜に呼ばれる。順番が逆で、来られる場所に来た子を見ている。

その「来られるかどうか」が、かなり早い時期に決まる。東京ヴェルディジュニアの2027年度U-9セレクションは、現小学2年生が対象。参加費3,000円、事前のオンライン決済でクレジットカードのみ、Jリーグ IDの登録が必要、同意書は印刷して当日持参、実技は平日夕方から夜。同じクラブがU-10、U-11、U-12のセレクションも学年順に締め切っていく。8歳の子の応募は、家庭が決済手段と書面と送迎を揃えられるかどうかにかかっている。

年代が上がると、今度は大会の並び方が偏る。全日本U-12は第50回で、46年協賛しているYKKをはじめ長期のパートナーが並ぶ。第41回まで来ているクラブユース選手権U-15は、8月14日から24日までの10日あまりに全国の日程が詰まっている。その間にあるU-13は、たとえば長野なら第13回の県U-13リーグで、第12節と第13節のあいだが3週間以上あく。8人制から11人制に移る時期の設計が、県ごとのリーグ運営に委ねられたまま残っている。見られる回数そのものが、年代によってこれだけ違う。

8人制の蓄積は、どこに積まれているか

アゼルバイジャンで行われるU15の大会が11人制ではない形式で組まれる、というのは、日本にとって他人事ではない。全日本U-12もJFAガールズ・エイトU-12も少人数制で、日本の子どもはその形式を何年もやってから11人制に移る。ところが、その蓄積を持っているのは小学生年代の指導者であって、U-15の選抜を率いるジュニアユースの監督ではない。インド側が8人制の経験を持つコーチをスタッフに入れたと明言しているのを読んで、日本ならその人材は全日本U-12の現場にいると思った。同じ協会の中にいるのに、年代をまたいで呼ばれる道筋が見当たらないのではないかと。

選ばれた子の名前を追うのは楽しい。ただ、名前が出た時点でその子はもう見られている。数えるべきなのは、見られなかった側にどれだけの人数が残っているか。日本にはナショナルトレセンからクラブユース選手権まで選抜と大会が何層も積んであるのに、母数を公表した記録をまだ見たことがない。だから、代表や選抜に誰が選ばれたかを追う前に、その名前がどの系統から出てきて、その手前に何人が立てる大会が並んでいたのかを数えるところから追っていきたい。

出典: www.the-aiff.com(2026-08-29)

評価 :5/5。