12000人を見る国と、枠の数が先に決まっている国

8月の後半は、クラブの告知を毎日開いて選出の名前を拾っていました。ナショナルトレセン、メニコンカップ、U-15 Jリーグ選抜のブラジル遠征。カターレ富山の辻口緒斗選手、サガン鳥栖の村上瑛斗・早坂良蒼選手、ベガルタ仙台の氏家累選手、ロアッソ熊本の馬場勇一郎選手、横浜F・マリノスの佐野翼・中島颯汰選手と、クラブが違っても告知の書式まで似ている。読みながら気づいたのは、どの記事も「選ばれた」から始まっていて、「何人の中から選んだ」がどこにも書かれていないということ。

インド代表のU-15が、10月にアゼルバイジャンで開かれる初回のFIFA U15ワールドカップ&フェスティバルに向けて、8月16日からベンガルールで選考を進めています。監督のビビアーノ・フェルナンデスによれば、最終的に選ぶのは14人。その手前に置かれた数字が具体的で、AIFFは60人のスカウトの網で、2024-25と2025-26の国内シーズンを通じて12000人以上の少年を見てきたと説明しています([the-aiff.com](https://www.the-aiff.com/article/hunger-desire-and-a-never-give-up-attitude-come-first-says-india-u15-mens-head-coach-bibiano-fernandes))。海外に拠点を置くインド系の選手も対象に入れている。「見る人数が多いほどチームは良くなる」という言い方をしていました。

日本の入口は、見る人数ではなく枠の数で書かれている

日本のU-15で「選ばれる」は一本ではなく三本ある。JFAのナショナルトレセンとGKキャンプ、日本クラブユースサッカー連盟のメニコンカップ東西対抗戦、そしてJリーグのU-15 Jリーグ選抜。統括団体が三つに分かれているので、告知も三種類が同じ週に並ぶ。しかもクラブユース連盟の東西対抗戦は、クラブユース選手権とJCYインターシティトリムカップの優秀選手から選ばれ、EASTの監督は横浜F・マリノスジュニアユースの梅津博徳氏、WESTはサンフレッチェ広島F.Cジュニアユースの岡本知剛氏と、指導者もクラブから出る。大会に出た選手の中から、大会を戦ったクラブの監督が選ぶ。回路が自己完結している。

ここに「12000人を見た」に相当する数字が存在しない。存在しないというより、必要とされていない。なぜなら日本の入口は、見る人数ではなく**出場できる大会の数**で設計されているから。全日本U-12は第50回、クラブユース選手権U-15は第41回、その間のU-13は県のリーグ戦で第13回。長野県のU-13リーグは第12節と第13節の間が3週間以上あく。年代ごとに、何の大会に出られるかが先に決まっていて、選考はその結果の上に乗る。

JFAの選手育成のページに並ぶ枠組みを見ても同じで、ナショナルトレセンU-12、U-14、U-15、女子U-14、JFAガールズ・エイトU-12、U-15タウンクラブ・中体連トレーニングキャンプ、U-16トレセンキャンプ。年代と性別と所属種別で分かれて置かれている。どのトレセンに名前が載ったかで、その子が制度上どの層にいるかが分かる。逆に言えば、載る前の母数は誰も数えていない。

母数を数えないと、何が見えなくなるか

東京ヴェルディジュニアのU-9セレクションは、現小学2年生が対象で1次が9月12日。参加費3,000円、スクール生は1,000円。事前オンライン決済でクレジットカードのみ、Jリーグ IDの登録が必要、同意書は事前ダウンロードして当日持参しないと参加できない。実技は17時開始と18時40分開始の2部制で、クラブハウス周辺での乗降と長時間の駐停車は不可。

3,000円という金額だけ見れば低い。しかしカード決済とID登録と書面と平日夕方の送迎を全部そろえられる家庭かどうかで、応募できるかが決まる。ここで絞られた分は、どこにも記録されない。8歳の入口で何人が来られなかったかは、クラブも協会も持っていない数字。

水戸ホーリーホックのGKスクール中学生コースも同じ形をしている。木曜18時30分から20時、1回2,000円の回数課金、全8回。回ごとにテーマが決まっていて、第1回が基礎技術とリカバリーアクション、第2回がポジショニング、第4回・第5回がクロス、第8回は前の7回の達成度に応じて内容を決める。積み上げ式で設計されているぶん、途中の回を家庭の判断で買わないと完成度が落ちる。専門性を足そうとするほど、家庭の時間と現金が可視化される仕組みになっている。

インドが12000人を見たと言うとき、その数字は「まだ見つけていない選手がいるはずだ」という前提から出ている。日本の告知が母数を書かないのは、母数がすでに絞られた後の集団だけを見ているからではないかと。街クラブからジュニアユースへ、という経路は公表される経歴にきちんと載る。モンテディオ山形の2種登録選手は北部FCから、あるいはQuinto鶴岡FCからジュニアユース村山・庄内を経てユース。FC東京の田中遥大選手は瀬田SCからU-15深川、U-18。街クラブが経路の第一段として記録されている点は日本の強みで、そこは疑っていない。ただしその街クラブに入る手前で何が起きているかは、誰の告知にも出てこない。

器は増えた。次は母数の話

2026/27シーズンからU-21 Jリーグが始まり、東西のリーグラウンドが動き出しました。会場は川崎フロンターレの麻生グラウンドのようなクラブの練習場で、全席自由席、照明塔と防球ネットでピッチが見えづらい場合があると案内されている。特別指定選手も出場資格を持つので、大学生も混ざる。清水エスパルスの北本久仁衛U-21監督は、この場を「なかなかトップに絡めない選手たちが成長できるか」の場と説明し、最初の課題として戦術ではなく身体づくりを挙げていました。

2種登録、特別指定、育成型期限付き移籍、そしてU-21 Jリーグ。この数年、日本が増やしてきたのは公式戦に出す器のほうで、そこはかなり具体的に積み上がっている。特別指定の認定は毎週火曜正午締切・木曜認定という週次サイクルで回り、出場時間はプロ契約の締結条件にも加算される。制度としては相当細かい。

そのうえで足りないのは、器に入る前の母数を誰が数えるかという話。JFAアディダス DREAM ROADの派遣は多くが1回4名で、2025年度に女子が加わったばかり。数の話をすると必ず「枠がいくつあるか」に戻ってくる。60人のスカウトが2シーズンかけて12000人を見るという設計を、そのまま日本に持ち込めるとは思っていない。三つの統括団体に分かれた国で、誰が全体の母数を数えるのかという問いに答えがないから。

だから、選出の告知を読むときに名前だけを追うのをやめ、その一つ手前で何人が候補に挙がり、そこにどんな家庭の条件が効いていたのかを、県協会の年間計画やセレクション要項の側から数えていきたい。

出典: www.the-aiff.com(2026-08-29)

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