もし中学3年の子が、自分でクラブの登録から名前を外してほしいと言い出したら、その話はどこへ行くのか。親が言うのでも、監督が言うのでもなく、本人が言うとしたら、誰の前に立つことになるのか。しばらく考えて、行き先の名前が一つも出てこなかった。
マンチェスター・ユナイテッドの15歳、JJガブリエル選手が、自分の登録を取り消してほしいとクラブに求めた。11歳から在籍し、トップチームの練習にも入っていた選手。クラブ側は、契約がシーズン終わりまで残っているので、本人の求めがあっても登録は解除できない、と説明しています。プロ契約を結べるのは来年10月に17歳になってからで、16歳になればスカラシップの合意は結べる。
引っかかったのは、移籍先の名前でも得点の数でもなく、本人の求めでは登録が消えないという一行。15歳が自分でそれを言い出したことも珍しいのだろうけれど、言われた側が「消せない」と答えられるということは、その一行の持ち主が本人ではないということ。では日本の育成年代で、登録という一行は誰の名前で動いているのか。
8月にモンテディオ山形が2選手の2種登録を公表したときの説明が、いちばん分かりやすい。トップチーム2種登録選手は、日本サッカー協会第2種チーム、つまり高校生年代のチームに所属しながら、Jリーグの公式戦に出場することが認められます、と書いてある。所属は動かさない。登録が一本増える。同じ月に清水エスパルス、FC岐阜、ブラウブリッツ秋田、横浜FCからも、似た形の公表が並んで出ていました。
この一文に出てくる名前を数えると、日本サッカー協会と、クラブ。認めるのは協会、申請して公表するのはクラブ。選手は「認められます」の側に置かれている。増やす話だから、それで誰も困らない。ただ、同じ文をそのまま裏返したとき、外してほしいと言う先の名前が、一つも書かれていない。
増えた日には文章がつく
2人の経歴を並べると、北部FC、アバンツァーレ山形SC、モンテディオ山形ジュニアユース村山、モンテディオ山形ユース。もう一人はQuinto鶴岡FC、ジュニアユース庄内、ユース。街クラブから始まって、中学でクラブに入り、高校でユースに上がり、その上にトップの2種登録が乗る。2人はどちらも東北文教大学山形城北高等学校に在学している。16歳か17歳の一人の上に、高校という所属と、クラブのユースという所属と、トップの登録が同時に乗っているわけです。以前高校生の名前の下に所属が何行並ぶかを数えた話とほとんど同じ並びが、今度は反対側から見えてくる。
行が何本あるかが問題ではない。増えたときには、必ず日付と文章がつくということ。何月何日、2種登録のお知らせ。街クラブからジュニアユースに移った年も、経歴の年号として残る。ところが、その一行が減る日には文章がつかない。ユースの登録が終わる日、2種登録から外れる日、街クラブを辞めた日。どれも、次の行が始まったことで前の行が黙って終わったように処理されている。増える側にだけ申請者と書式と日付があって、減る側は誰の名義でもないのではないかと。
これがいちばん効いてくるのは、トップに乗った選手ではなく、乗らなかった側だと思う。街クラブから中学でクラブのジュニアユースに入り、3年やって、高校でユースに上がらなかった子。その子の名前は、どこにも一行として出ない。入るときの選考には案内があって締切があって会場が書いてあるので、家庭は日付を見て動ける。出るときには、その日付を誰も書かない。日本の育成年代で「辞める」が本人の言葉として記録に残る場面は、ほとんど無い。
15歳が自分の登録を消してほしいと言えるのは、本人が言えばそれが一つの出来事として扱われる場所にいるからで、日本の高校生年代で同じことを言いたくなった子が最初にぶつかるのは、言う相手の名前が公表された文面のどこにも無いという段差。2種登録の公表を読むときは、出場した試合の数より先に、その一文に名前が出ている大人を数えるようにしていて、そこに本人の言う先が一つも入っていないことを、いつかクラブの担当の人に直接聞いてみたい。
出典: www.theguardian.com(2026-09-15)
