8月の終わりに協会とクラブが出す告知を上から順に読んでいると、年代別代表の合宿の記事で毎回ほとんど同じ一行に行き当たります。国内合宿の最終日に大学とトレーニングマッチをやった、という一行。最初は日程の埋め草だと思って読み飛ばしていました。相手欄が毎回大学だと気づいてから、見方が変わった。
同じ日に二本、相手はアカデミーと地元クラブ
ナイジェリアのU-17代表が、10月4日から17日にワガドゥグで行われるWAFU-B U17選手権に向けて、アブジャで練習試合を組みました。土曜日の昼にSimonben Academyと対戦して4-0、同じ日の夜に同じピッチでGaladima FCと0-0。会場はMKOアビオラ国立競技場内のFIFA Goal Projectのピッチで、相手はアカデミーと地元クラブ(thenff.com、2026年8月31日)。
一日に二本、相手を替えて組める。しかも呼んだのは代表でも大学でもなく、街にあるアカデミーとクラブ。この年代の強度を測る相手が、移動なしで手の届く距離に複数ある状態。
同じ週、日本のU-19日本代表はカンボジアのプノンペンで調整していた。AFC U20アジアカップ予選に向けた活動で、この予選は翌年のU-20ワールドカップの一次予選を兼ねている。そして国内合宿の最終日、8月26日の相手は東洋大でした。
18歳から22歳の強度を、日本は大学に置いてきた
なぜ大学なのか。日本の育成年代は高体連、日本クラブユースサッカー連盟、全日本大学連盟という別々の統括団体に分かれていて、選手はそのどれか一つの傘の下にいる。特別指定制度の目的文にわざわざ「種別や連盟の垣根を越え」と書いてあるのは、垣根が実在して選手の環境を決めているからだ。
その三分割が18歳でいったん合流する場所が大学。総理大臣杯に出た東京国際大の登録メンバーを見ると、出身欄に千葉U-18、柏U-18、横浜FCユース、JFAアカデミーが並び、その横に堀越高、帝京高、山形明正高、都市大塩尻高、小山南高、日体大柏高が並ぶ。学年は1年から4年まで同じ列。クラブのアカデミーで育った選手と部活で育った選手が一つのチームに入り、しかも4学年分の身体差が同じピッチに乗っている。
19歳の代表チームが直前に当てる相手として、これほど都合のいい編成はない。年上がいて、育ちの違う選手がいて、しかも週末にリーグ戦を戦っている。日本は18歳から22歳の実戦強度を、長いあいだ大学サッカーに置いてきた。
強度だけではありません。JFAが8月に公表した特別指定の認定・承認の所属先を並べると、国士舘大、立命館大、東京学芸大、日本体育大、明治学院大、東洋大、日本大、桃山学院大、青山学院大、九州産業大、専修大が続き、高校は豊川高と帝京高が少数入る程度。大学に籍を置いたままJの公式戦に出る線が、制度としていちばん太い。全日本大学選抜のイタリア遠征に中央大の常藤奏選手(柏内定)、流通経済大の西川楓人選手(町田内定)、京都産業大の伊藤翼選手(徳島内定)が揃って選ばれたように、選抜と海外遠征の経路も大学の側に一式ある。
大学は「プロになれなかった子の受け皿」ではなく、選ぶ側から見て最も情報の集まる場所として運用されてきた。代表の直前マッチの相手欄が大学で埋まるのは、その帰結ではないかと。
そこに二本目が置かれた
2026/27シーズンからU-21 Jリーグが始まりました。東西リーグラウンドの第1節は8月23日から24日にかけて行われ、清水エスパルスはU-21浦和レッズ戦、ファジアーノ岡山はU-21ガンバ大阪戦のレポートを同じ週に出している。会場はスタジアムではなくクラブの練習場で、川崎フロンターレの麻生グラウンドは開門がキックオフ1時間20分前、全席自由席、照明塔と防球ネットでピッチが見えづらい場合があると断り、鳴り物と声を出しての応援は近隣への配慮で不可。
そして特別指定選手には、明治安田Jリーグやリーグカップと並んでU-21 Jリーグの出場資格がある。大学に籍を置いたまま、このリーグのピッチに立てるということ。
清水のU-21を率いる北本久仁衛監督は、この年代の課題として真っ先に身体づくりを挙げていました。フィジカルコーチが鍛えて下半身が少しずつ変わってきた、と具体的に説明したうえで、リーグの位置づけを「なかなかトップに絡めない選手たちが成長できるか、伸びていけるか、という場」と言っていた。技術と判断の話から入らないところに、現場が見ている差が出ている。
つまり日本は、これまで大学に外注していた18歳から22歳の実戦を、クラブの中にも一本立てた。育成型期限付き移籍で下位カテゴリに出場時間を取りに行く経路や、湘南U-18出身の杉浦誠黎選手がスペイン3部のサン・アンドレウで期限を延長したような国外の経路と並んで、選択肢が三方向に増えたことになる。
相手欄を見ていく
ナイジェリアが同じ日に二本組めるのは、その年代の対戦相手が街の中に複数あるから。日本のU-19が国内で強度を確保しようとすると、大学まで行かないと年上と育ちの違いが同時に揃わなかった。どちらが優れているという話ではなく、そこに至る制度の形が違う。
だから、年代別代表の合宿レポートで最初に見るのは戦術でも招集メンバーでもなく、直前マッチの相手欄にしている。U-21 Jリーグが一年、二年と回った先で、そこに大学以外の名前が入るのかどうか。入らないのなら、大学が担ってきた合流点としての役割は当分動かないということになる。清水と浦和と岡山とG大阪の第1節から始まったこのリーグが、代表の相手欄をいつ書き換えるのかを、練習場の自由席の側から追っていきたい。
出典: thenff.com(2026-08-31)
