手元に、JFAの選手育成のところに載っている特別指定選手の説明を刷った紙が一枚ある。読み返すたびに引っかかるのは、競技の話がほとんど出てこないこと。紙の半分近くが、誰と誰が合意するかという話で埋まっています。
数えてみる。申請を出すのは受入先のJクラブ。そのクラブは、所属チーム(大学又は高校等)と選手本人の双方と合意したうえで申請する。選手が未成年の場合は保護者の同意も必要。さらに所属チームが大学サッカー部に準じるチームや一般ユースチームの場合は、その選手が通学する学校の合意も併せて要る。Jクラブ、所属チーム、本人、保護者、学校。一人の子がピッチに立つ前に、五つの名前が並ぶ。
ガーナサッカー協会が、U-17の代表がベナンに3-1で勝って準決勝に進んだことを伝えていました。4分と8分にAlidu Issahが続けて決め、後半にNii Odoi TawiahがPrince Apamのパスから3点目。2試合目の勝利で、1試合を残して勝ち上がりが決まったとあります。この大会は2027年のU17アフリカネーションズカップの予選を兼ねている。
気になったのは得点の時刻ではなく、選手の所属がどこにも書かれていないこと。Alidu Issahが二点決めた、それで記事として足りてしまう。日本で同じ年代の発表を開くと、名前の横には必ず所属が入っています。そして所属の欄は一行しかない。
一行に収まらない子がいる
特別指定で認定された選手は、所属チームに登録したまま、受入先のJクラブの選手として公式戦に出る。名簿の上では高校や大学の名前が残り、ピッチの上ではJクラブの選手。一人が二つに属している状態を、国内の制度はわざわざ作っている。
二つに属すれば、ぶつかるものが出てくる。どちらの練習に行くのか、どちらの試合を優先するのか、怪我をしたら誰が面倒をみるのか。この手の話は、普通なら上下を決めて片付けたくなる。学校が上だ、クラブが上だ、と。JFAの書き方はそうなっていない。同意と、懲罰と、費用。三つに割って、一つずつ誰のものかを決めている。
懲罰の条は読んでいて少し驚きます。所属チームの試合で科された処分は、原則として所属チームの試合にのみ適用され、Jリーグの試合には適用されない。逆も同じ。ただし出場停止が期間で科された場合などはこの限りでない、と但し書きが付く。試合数で出場停止になった子は、平日に高校の大会で裁かれても、週末のJの公式戦には立てる。同じ人間の同じ足が、二つの規律のあいだを行ったり来たりしている。それを曖昧にせず、原則と例外の形で書いてある。
交通費を誰が出すか、まで書いてある
費用の条は一行だけ。活動にかかる交通費等の経費は、受入先のJクラブが負担する。JFAが推薦した場合はJFAが負担する。
この一行がどれくらい効くか。大学や高校に通いながら、週に何度かJクラブの練習場へ通う。試合があれば移動も泊まりも出る。普通に考えれば、十八歳の子がその金を自分で持てるはずがなく、放っておけば家の財布から出る。育成年代の負担の話は、どうしても最後は家庭に落ちていく。そこへ明文で、出すのは受入先のクラブ、と書いた。合意の列に保護者の名前を入れておいて、その保護者に請求書を回さない作りになっている。
出るときも同じ。認定解除にも所属チームと選手の合意が要り、争いが生じた場合はJFAが決定する。入口で五人ぶんの合意を取り、出口でもまた合意を取る。申請から認定までの中2日を数えたときは、ずいぶん速く回る制度だと思っていたけれど、速いのは事務の側だけで、合意の人数は一つも減らしていない。
誰が偉いかを書かなかった
日本の育成年代の制度を読んでいると、だいたいこの癖に行き当たる。上下関係を決めずに、手続きで解く。高体連とクラブユースという別々の団体で育った子が十八歳で同じ大学の名簿に並ぶのも、同じ流儀の延長にあるように見えます。どちらが本流かを決めないまま、両方から来られる道を引いておく。
歯切れは悪い。読んでいて、結局この子はどっちの選手なんだ、と言いたくなる。ただ、歯切れをよくした瞬間に落ちるものがあって、たとえば学校を上に置けば、高校に籍を置いた子はJの公式戦に出られなくなる。クラブを上に置けば、学業の側が後回しになる理由を制度が与えてしまう。どちらも選ばずに、合意する人を一人ずつ数え上げたのが今の形ではないかと。
ガーナの記事に所属が無くても誰も困らないのは、代表の選手がその日、一つの場所にだけ属しているからでしょう。日本の十七歳は、そうではない日がある。次に特別指定の認定が並んだとき、Jクラブの名前ではなく横に残った学校の名前を先に読み、その一行の裏で誰が合意して誰が交通費を出したのかを数える。
出典: www.ghanafa.org(2026-10-13)