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サッカー指導者の転職インフラが整っていない


サッカー界で活躍する指導者。カテゴリは幼少からプロチームまで様々です。サッカーの指導者を生業とし、生計を立てている人は全国でも多数存在しています。

全員がサッカーの指導だけで生計を立てているわけではありませんが、その数ざっと日本サッカー協会に登録しているだけでも73,555人(13年度登録現在)。

出典:http://www.jfa.jp

2004年時点の登録者数と比較すると、実に2.75倍の成長産業なのです。

指導者を取り巻く環境

指導者の数は年々増えています。これはサッカー選手を引退した人が、自身の経験を活かして子どもたちへ指導する立場になりたいと思う人が多くなってきている証拠です。

出典:http://www.jfa.jp

こちらは同じく日本サッカー協会に登録している選手の推移です。微増ですが年々増えていることが分かります。

一方、社会問題となっている少子化が加速度的に進んでいることも事実です。

出典:http://www.soumu.go.jp/

総務省のデータでは、人口そのものが減っていることがわかりますが、14歳以下の人口減少は顕著に見てとれます。

指導者は増え、子どもの数は減っているのは、まさに指導者としての環境としては好ましくなく、逆転現象により需要と供給が釣り合っていない状況が今後は更に拡大していくことが予想されます。

学校の合併や、クラスの減少は既に社会問題として現れており、サッカークラブも1996年の29,230クラブから2013年では28,533クラブと横ばい、もしくは微減の状態がずっと続いている状態です。

クラブに属する選手もJリーグクラブが増え、アカデミーの環境が良くなっていく一方、溢れた選手は強豪クラブへ人が集まるような流れがあることも否めません。

今後はより一層、指導者のスキルが問われることとなり、学べないクラブや指導者は自然と淘汰されていくことになることが考えられます。

サッカー指導者の転職は簡単ではない

そのほとんどの指導者は自身が育ったクラブで指導者キャリアをスタートします。もしくは、知り合いからの引き抜き、自身でクラブを設立するなど、決して広い門が開いているわけではなく、指導者人生も考えているほど簡単な世界ではありません。

指導者がもし転職をしたい、いわゆるクラブを変わりたいと思っても、サラリーマンのように全国的な異動届けを出せるわけでもなく、家族がいる指導者に至っては指導者の県外移籍=引っ越しを伴う拠点の移動を考えなくてはなりません。

そして、同じくサラリーマンのように常に転職先の求人情報があるわけではなく、指導者の転職を支えてくれるサービスや民間企業も非常に少ない状況です。むしろそれを本業としているところは皆無に等しい状況です。

単身、必要とされているクラブからのオファーがある場合は、すんなりクラブ間を移籍することも可能ですが、それでも間を取り持つ仲介がいないことが基本であり、給与の交渉さえもクラブ主導の都合に任せるしか他ありません。交渉する場も持たれるかどうかも微妙なところです。

クラブの求人が多くない状況は、そのクラブが選手から得る指導料(月謝)など、全国的に平均を考えても5,000円程度と考えられます。そうなるとクラブが1学年30人弱、3学年で100人程度の選手を在籍があったとしても、クラブの収入は月商500,000円でしかありません。この状況下、クラブ側が指導者へ渡せる給与が200,000円だった場合、多くても2人だけで定員オーバーとなる状況です。

また、サラリーマンなど一般的な企業間を仲介する民間サービスは、採用した企業から採用者の給与の1割や、その情報を掲載する広告費などで賄っていることが多いのですが、指導者を仲介したところで、上記の例で言うと1回の仕事が2万円で、広告費を取るとしても73,555人向けとなり、仕事量の割りに合わないことが容易に考えられます。

ですので、指導者の転職や求人を大々的にサービス展開する企業はほぼなく、未だ指導者の転職に関するインフラ自体が整っていないことが現実です。

今は日本サッカー協会に属していた(年代別代表指導経験者やS級ライセンス保持者などの)指導者でさえも、次の指導先を探すのに実は苦労しているのです。

指導者が転職をするためにするべきこと

いつどんな状況で指導者のオファーが来るか分かりません。また、クラブのオーナーまたは監督などと折が合わずにクラブを去ることもいつ起こるか分かりません。

そんな時に指導者として今後も活躍する場を得るためには、以下のようなことを考えていく必要があります。

①常に準備を怠らない
②常に指導の勉強を怠らない
③万が一のため一般的なサラリーマンスキルを得る
④積極的に関連する情報を得る
⑤指導者間の人脈を浅く広く保つ
⑥NEWJIを常に頭の隅に入れておく

サラリーマンでも同じことが言えますが、次の活躍の場所が見つからない場合、次が見つかるまでの期間は当然ながら収入が途絶えます。貯金を切り崩したり借金をして生活するしかありません。

筆者は32歳で既に一般企業に5回転職していますが、その期間で指導者のオファーも3回ありました。しかし、一つ目のオファーで給与の提示額は月額7万円、二つ目のオファーでは10万円、三つ目のオファーでは30万円です。

三つ目であればなんとか生活はできるかもしれませんが、サラリーマンと違ってボーナスもなければ、成果報酬もありません。いくら自身が頑張ったとしても年収360万が限度です。更にその中には移動のための交通費も含まれており、家賃手当など以ての外、存在していません。

そのようなオファーを受け入れるぐらいの覚悟がなければ指導者としてのプロにはなれませんし、一生の軸で考えると、年金や社会保険も負担しているクラブは多くありません。

学校に属して給与やボーナスを得ながらサッカー部の顧問をすることもひとつの手段ですが、それを得るには教員免許が必要となり、更には指導者としてのプロとは言えません。あくまでも本業は学校の先生であり、サッカーを指導することで得られる報酬は1円も出ない学校がほとんどです。

指導者として今後の人生を全うする覚悟があるのであれば、確実にステップアップできる環境を作ることが必要です。10年後のサッカー界を取り巻く環境、強いては指導者を取り巻く環境は今より良くなっているとはなかなか考え難い中で、それでも覚悟を決めたならば指導者人生を突き進んで行かねばなりません。

指導者の転職をどのような形で実現することができるかは、自身の指導スキルやサッカーの信念や愛が非常に大事となり、常にどんなクラブでもどんな選手でも指導できる準備をしておく必要があります。

まずは自分自身への投資も兼ねて指導者に必要な環境を整えていくことが大事です。

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