サッカーの分析は、指標の定義をそろえることから始まります。同じ「スプリント」でも計測基準が違えば数字は比較できず、ツールごとに取得できるデータの範囲も価格も大きく異なります。ここでは試合分析で使われる主要指標と、現場で導入されている分析ツールの条件を一覧で整理します。
サッカー試合分析で使う主な指標一覧
まずは何を測るのかを定義レベルで確認します。目安値が示されない指標は絶対値ではなく、試合間・チーム間の相対比較で読み取るものです。
| 指標名 | 定義 | 測り方 | 一般的な目安値 |
|---|---|---|---|
| 走行距離 | 選手が1試合あたりに移動した総距離(歩行含む) | GPSトラッキングやビデオ分析ソフトで算出 | プロ選手で1試合平均約10km |
| スプリント回数 | 時速24〜25km以上で一定時間以上走った回数 | GPS機器やトラッキングデータでカウント(Jリーグ公式では25.0km/h以上で1秒以上) | 1試合で多い選手は約40回 |
| xG(期待ゴール値) | シュートがゴールに至る確率を示す統計指標。チームのxGが高いと得点機会を多く作れていることを示す | シュート位置・角度・状況等から統計モデルで算出 | 相対比較に用いる指標 |
| ボール保持率 | 両チームのボール保持時間の合計に対する自チームの保持時間の割合 | 試合映像・トラッキングデータから算出 | 拮抗した試合ではおおよそ50%前後 |
| 攻撃回数 | ボールを保持してから相手チームに渡る、もしくはファウルやボールアウトで試合が止まるまでを1回とする | ビデオ分析ソフトでカウント | 目安値の提示なし |
| チャンス構築率 | シュート数を攻撃回数で割った値 | シュート数÷攻撃回数 | 目安値の提示なし |
| アクチュアルプレーイングタイム | 試合開始から終了までに実際にプレーされた時間 | ビデオ分析ソフトで計測 | 目安値の提示なし |
| 枠内シュート | 枠内に飛んだシュート(ブロックされても枠内方向と判断できる場合を含む) | 映像分析によるカウント | 目安値の提示なし |
| パス | 味方選手にボールをつなぐことを目的としたプレー | 映像・トラッキングデータでカウント | 目安値の提示なし |
| J STATS(総称) | Jリーグが認める試合記録・プレーデータ・トラッキングデータなど競技データ全般の総称 | 公式データパートナーによる計測・集計 | 目安値の提示なし |
出典:https://thepfsa.co.uk/ja/10-essential-football-metrics-you-should-know//https://sport-science.jp/blog/detail/20200721092307//https://spojoba.com/articles/1152/https://support.yahoo-net.jp/SccSports/s/article/H000011893/https://www.football-lab.jp/pages/about/https://www.jleague.jp/news/article/17303/
走行距離とスプリントは基準速度で数字が変わる
スプリントはサッカーでは一般的に時速24km以上の走行として定義されますが、国やリーグによって基準はやや異なります。Jリーグの試合スタッツの定義では25.0km/h以上で1秒以上走った回数とされており、同じ選手でも採用する基準によって回数は変動します。他チームや他リーグの数値と比べるときは、まず基準速度と最小継続時間をそろえてください。
走行距離はプロ選手で1試合平均約10kmが目安です。総距離だけでは強度が見えないため、スプリント回数と組み合わせ、ポジション別・時間帯別に分解して読むのが基本になります。
xGとチャンス構築率は結果ではなく過程を測る
xG(期待ゴール値)はシュートがゴールに至る確率を統計モデルで表したもので、得点という低頻度の結果に左右されずに攻撃の質を評価できます。一方、チャンス構築率はシュート数を攻撃回数で割った値で、ボールを持った回数のうちどれだけシュートまで到達できたかを示します。xGが1本あたりの質、チャンス構築率が到達頻度を表すため、両方を並べると「数は作れているが質が低い」「質は高いが本数が足りない」といった課題の切り分けができます。
ボール保持率と攻撃回数はセットで見る
ボール保持率は、両チームのボール保持時間の合計に対する自チームの保持時間の割合として定義されます。拮抗した試合ではおおよそ50%前後に落ち着くため、単独では優劣の判断材料になりません。攻撃回数とアクチュアルプレーイングタイムを添えることで、同じ保持率でも少ない回数を長く持つのか、短い攻撃を何度も繰り返すのかという質の違いが見えてきます。
主な試合分析ツール・アプリの比較
映像へのタグ付け、共有、フィジカル負荷の計測まで、ツールによって守備範囲が異なります。価格は公開情報があるものを掲載しています。
| ツール名 | 提供元 | 主な価格プラン | 主な機能 | 対応端末 |
|---|---|---|---|---|
| Hudl | Hudl社 | ブロンズ年額76,478円(40時間)/シルバー137,660円(100時間)/ゴールド244,728円(200時間)、全プランアカウント数無制限 | 映像アップロード・共有・タグ付け分析 | 記載情報の範囲ではPC/Web中心 |
| Sportscode | Hudl社 | 料金は非公開(要問い合わせ) | 項目を自由にカスタマイズできる柔軟な分析設定 | 記載情報の範囲では不明 |
| Hudl Assist | Hudl社 | 自チームプラン年額107,069円/自チーム&スカウティングプラン198,842円 | 映像分析の自動サポート・スカウティング | 記載情報の範囲では不明 |
| Nacsport Basic | Nacsport(スペイン) | 年間ライセンス税込33,000円 | モバイル分析用のタグ&ビュー機能 | モバイル対応 |
| Nacsport Basic Plus | Nacsport | 年間ライセンス税込73,700円/ライフタイム税込148,500円 | 最大50のカスタムボタン、カテゴリー・ディスクリプタータグ、プレイバイプレイ機能 | 記載情報の範囲では不明 |
| Nacsport(上位プラン) | Nacsport | 年間ライセンス税込517,000円/ライフタイム税込1,452,000円 | クラスタ化ボタン、無制限データ容量、最大4アングル同期分析、コーチステーション連携 | 記載情報の範囲では不明 |
| Nacsport Hub(H40) | Nacsport | 年間サブスクリプション本体価格79,000円(税込86,900円)、40GB/管理者4名/ユーザー50名 | 映像・分析データのオンライン共有、チーム内コミュニケーション | インターネット環境があればどのデバイスからでもアクセス可能 |
| Catapult(フットボール向けソフトウェア) | Catapult | 料金は記載なし(要問い合わせ) | ウェアラブル技術によるフィジカル負荷の定量化、映像分析、スカウティング、データ分析 | 記載情報の範囲では不明 |
出典:https://szkknsk.com/tool//https://www.nacsport.jp/pricing/https://www.nacsport.jp/hub/planandprice/https://www.nacsport.jp/comparision/https://www.catapult.com/ja/スポーツ/フットホール
年額が公開されているプランを安い順に整理
公開されている年額のみを抜き出し、安い順に並べたものです。Hudlは映像の保存時間による課金、Nacsportは機能の深さによる課金という違いがあるため、金額だけでなく条件欄を合わせて確認してください。
| プラン | 年額 | 主な条件 |
|---|---|---|
| Nacsport Basic | 税込33,000円 | モバイル分析向けのタグ&ビュー機能 |
| Nacsport Basic Plus | 税込73,700円 | 最大50のカスタムボタン、プレイバイプレイ機能 |
| Hudl ブロンズ | 76,478円 | 映像40時間、アカウント数無制限 |
| Nacsport Hub(H40) | 本体79,000円(税込86,900円) | 40GB、管理者4名、ユーザー50名 |
| Hudl Assist(自チームプラン) | 107,069円 | 映像分析の自動サポート |
| Hudl シルバー | 137,660円 | 映像100時間、アカウント数無制限 |
| Hudl Assist(自チーム&スカウティング) | 198,842円 | スカウティングを含む |
| Hudl ゴールド | 244,728円 | 映像200時間、アカウント数無制限 |
| Nacsport 上位プラン | 税込517,000円 | 無制限データ容量、最大4アングル同期分析 |
出典:https://szkknsk.com/tool//https://www.nacsport.jp/pricing/https://www.nacsport.jp/hub/planandprice
選び方の分岐点
Hudlは映像の保存時間で段階が分かれ、全プランでアカウント数が無制限のため、選手全員に映像を配るチームと相性がよい構成です。Nacsportはボタン数やアングル数など分析機能の深さで価格が分かれ、ライフタイムライセンスも用意されています。長期間使う前提なら、ライフタイム(Basic Plusで税込148,500円、上位プランで税込1,452,000円)と年間ライセンスを継続した場合の総額を比較する余地があります。共有の基盤だけを強化したい場合はNacsport Hubのように容量とユーザー数で選ぶ形になり、フィジカル面の定量化まで踏み込むならCatapultのようなウェアラブル連携型が候補になります。
データの出どころを押さえる
公式データを参照する場合、Jリーグの「J STATS」はメンバー表や得点者などの試合記録から、パス・ドリブル・ボール支配率、走行距離やトラッキングデータまでを含む競技データの総称です。自チームで計測した数値と公式データを突き合わせるときは、同じ名称の指標でも集計元や定義が異なる可能性があるため、確認を先に行ってください。
分析の運用は、指標の定義を決める、計測手段を固定する、試合ごとに同じ形式で記録する、という3点がそろって初めて比較可能なデータになります。映像とタグ、数値を同じ場所に蓄積して振り返る体制づくりには、NEWDIH の映像分析機能も活用できます。詳細はhttps://newji.jp/features/video-analysis/で確認できます。