日本人から見た日本の選手の評価として「個」が弱いと言われているのは、個人の身体的な能力や技術的な能力が低いからでしょうか。
現実を見ると、世界のトップクラスの選手と日本の選手を比較した時、まだどちらも「その通り」かもしれないと言わざるを得ません。
ただ一方で、中には日本の選手で技術も身体も世界のトップクラスに近い選手がいることも確かです。特に技術的な能力で言うと、試合で使える技術力は別として、日本人のほうが足技がうまいことも言われていたりします。
中田英寿(旅人)と本田圭佑(ACミラン)。
彼らは身体的な(特に当たり負けしない)能力で、世界のトップクラスの選手に引けを取らないと言う共通点があります。
本日はフィジカルの強さをレベルアップするために必要なトレーニングについて考えてみます。
日本で最強のフィジカル
生まれ持った体質(他にも骨の太さや大きさなど)が影響するかもしれませんが、彼らは自分の身体を知り、緻密に計算されたフィジカルトレーニングで、世界と十分闘える強固な能力を手に入れたのです。
元々の身体と、鍛え上げた身体を比較してみましょう。
中田英寿
出典:http://s.ameblo.jp/
出典:http://laughy.jp/
本田圭佑
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出典:http://sp.logsoku.com/
トレーニング次第では、見せかけの身体を作ることは誰にでも出来ることが言えますが、日本人選手は見せかけの身体を中途半端に作り上げて、試合で使える身体作りを意識していない選手が多いかもしれません。
日本人でフィジカル最強と考えられる中田英寿や本田圭佑のように、使えるフィジカルを身につけることが重要で、ただ見た目のフィジカルを鍛え上げるだけではナンセンスです。
今後はフィジカルセンスを磨くことが、サッカーで必要な能力を高めるキーファクターとなるでしょう。
フィジカル能力を身につけることの目的は、ゴールを奪う(ボールを奪う)ことです。ただ単にデカイ・強い・パワフルでは淘汰されてしまいます。
身体的な能力が劣るとされている日本人でも、中田英寿や本田圭佑のように実はフィジカル能力を世界のトップレベルまで到達させることが可能なのです。
また、フィジカルセンスを磨くのは、マシーンを使うトレーニングでは習得できず、やはり普段の練習で意識することから始まり、俗に言うフィジカルトレーニングとは全く別のトレーニングが必要となるのです。
フィジカルセンスを身につけるには
フィジカルセンスとはどういうことかと言うと、ここでは身体の入れ方や手の使い方、相手の力を利用して前に進む力などを指します。
普段のサッカー観戦で、空中戦に競り勝つ選手や、タッチライン際で当たり負けしない選手のことを言っているのではありません。
そう言ったことももちろん必要な能力ではありますが、相手のフィジカルコンタクトに対し、なぜかバランスを崩しても倒れない選手や、なぜかボールを取られず相手を置き去りにする選手を見たことがあるかもしれません。ここではそういう選手のことを指しています。
そんなフィジカルセンス満載のプレーを見たときは、ただ単に「強っ!!」と感じるだけでなく、「うまっ!!」と言う感情を感じることができるでしょう。
最近の日本人選手でフィジカルセンスが高い選手と言えば、武藤嘉紀がその部類に振り分けられるのではないでしょうか。
では、そのフィジカルセンスは、当たり負けしない一般的に考えられるフィジカルの強さと、何が違い、どんなことをすれば身につくのでしょうか。
まずは想像してください。
なんとなくイメージできるかもしれませんが、一方は岩のようにとてつもなく硬い身体であり、もう一方はそんな身体にオレフィン系のエラストマーを注入したようなイメージです。
後者のフィジカル能力を身につけることができたとしても、その先のフィジカルセンスを身につけるために絶対的に必要なこととして、フィジカルコンタクトを受ける場面に遭遇する数を増やすことが大事になってきます。
要するに、練習からフィジカルコンタクトを受ける回数を意図的に増やして、どのように身体を使えば上手くいくかをトライ&エラーで体得するのです。
なぜそのようなことをする必要があるかと言うと、日本のサッカーでは攻守において数的優位の状況を作ろうという意識を育成年代から埋め込まされています。おそらくほとんどの監督や指導者はそう言った戦い方を選手に要求したことがあると思います。
しかし、その意識があるが故に、普段の練習中からフィジカルコンタクトを避けることができる状況が整っており、敵が来るとフィジカルコンタクトを避け、数的優位の状況をフルに活かして突破(または奪取)してしまうことが多いのです。
自然と数的優位を作ろうとするため、フィジカルコンタクトを受ける回数が少なくなることが考えられるのです。
要はフィジカルセンスを高めるための、フィジカルコンタクトの数が圧倒的に少なく、フィジカルセンスを高める機会が無いのです。
数的同数、数的不利をあえて作る
世界でも数的同数や数的不利の状況は攻守にわたって極力作らないよう皆がポジショニングを整えています。
その中でもブラジル代表のディフェンスは、よく見ると数的同数や数的不利の状況でも攻撃に人数をかける時が多々見受けられます。
ブラジル代表のディフェンスが世界一かと言えばそうでもありませんが、数的同数または不利で守ることで攻撃の人数を増やすことができ、まさに攻撃は最大の防御と化しているのです。
最近のブラジル代表はネイマールの個人技で数的不利の状況でも突破している感は否めませんが、それでもサポートにかける人数が他国を上回っているように見受けられます。
攻守にわたり、数的同数や不利の状況でも突破できるのは単に技術的な能力が高いだけでなく、個の能力としてフィジカルセンスが高いことで、そのような状況を打開することができていることが言えます。
一対一であればその殆どはシュートで終わり、数的不利でも一人交わして一対一の状況を作ることができるのです。
特に抜き去る、抜ききるといった華麗なプレーに注目しがちですが、その殆どはフィジカルコンタクトで倒れない、相手と自分の間のスペースをうまく作る、相手より半歩だけ身体を前に入れるなど、シュートをするために繰り広げられている駆け引きで、必ずと言っていいほどフィジカルコンタクトで相手より勝っていることが言えます。
日本ではより確実性を求めて、相手を完全に交わすことが美学とされているかもしれませんが、その前にシュートを打てなくては意味がありません。
むしろ、相手を完全に交わさずにシュートをした方が、ゴールキーパーのタイミングをズラしてゴールすることも多く、完全に交わすことで一歩遅れてしまうこともあるのです。
まずは練習から意識をつけるためにも数的同数または数的不利の状況をあえて作り、フィジカルコンタクトが生まれるような状況で練習をするべきです。
ディフェンスでも同じことが言えます。
数的同数の状況で守ることで、より厳密にポジショニングを意識すること、相手に前を向かせないようにすること、そしてフィジカルコンタクトを増やすことが、選手のディフェンスにおけるフィジカル能力を高めることができるかもしれません。
選手もフィジカルコンタクトを避けるようなことはせず、自らコンタクトするよう意識して、球際の強さや身体の使い方を体得し、フィジカルセンスを身につけることが世界と戦う上で必要な「個」の能力であることを知る必要があるのです。