川上哲平選手に学ぶ!サッカーにおける「泥臭さ」の価値と成功への準備術

川上哲平(かわかみ てっぺい)は、横浜創英高校で主将を務めたフォワードです。横浜F・マリノスジュニアユース追浜の出身で、高校3年だった2024年に、チームを関東高校大会Bグループ優勝と全国高校サッカー選手権神奈川県予選の準優勝へ導きました。2026年8月現在は國學院大學の蹴球部に所属しています。

その選手権神奈川県予選の決勝は、2024年11月10日(日)13時05分キックオフ、会場はU等々力でした。神奈川県サッカー協会が公開している大会結果によれば、令和6年度 第103回全国高校サッカー選手権大会 神奈川県予選の決勝、結果は横浜創英 0-2 東海大相模。前半0-1、後半0-1でした。

会場の正式名称と試合の流れは、地元紙のタウンニュース神奈川区版が伝えています。前半は背後の動き出しから横浜創英がゴールを狙うも決定機につながらず、37分に先制点を許しました。追いつきたい横浜創英でしたが、後半7分にも追加点を奪われ、そのまま0-2で終わっています。

決勝進出そのものが、この学校にとっては初めてのことでした。総体ベスト8の第3シードとして2次予選トーナメントの2回戦から出場し、座間、横浜隼人、相模原弥栄を下して、準決勝では優勝候補で監督の母校でもある桐光学園に2対0で勝利。創部初の同大会決勝進出でした。

誰が、どう決勝まで来たか

協会の結果表と、学校公式がメディア掲載情報として並べている各試合の記事を突き合わせると、川上哲平がこの大会でどう関わっていたかまで追えます。

ラウンド(日付) スコア 川上哲平について確認できたこと
2回戦
9月15日
横浜創英 4-3 座間 負傷離脱中で不在
3回戦
10月19日
横浜創英 3-1 横浜隼人 後半開始から投入され、同点ゴール
準々決勝
10月26日
横浜創英 3-0 相模原弥栄 得点(後日の記事が言及)
準決勝
11月4日
桐光学園 0-2 横浜創英 先発復帰してフル出場、2得点
決勝
11月10日
横浜創英 0-2 東海大相模 試合後に主将としてコメント

3回戦は前半0-1で折り返した試合でした。学校公式が紹介している記事によれば、横浜創英は後半開始からFW11川上哲平(3年)を投入。あとひと押しが続くなか、後半29分、左サイドMF10小川秀太(3年)のクロスにゴール中央の川上が決めて同点にしています。

決勝の後、主将が残した言葉です。

いい流れに持っていけなかった責任感を感じています。準決勝も決勝も1、2年生で出ている選手がいるので、後輩たちにしっかりと選手権出場の目標を託していきたい

タウンニュース神奈川区版(2024年11月14日)

川上哲平とはどんな選手か

背番号は11、ポジションはフォワード、3年時にチームの主将です。出身は横浜F・マリノスジュニアユース追浜で、Jクラブの下部組織から高校の部活動へ進み、高校1年からトップチームで試合に出ていました。

1年生からトップチームで出してもらっていて、スタメンで1年生も、2年生も出ていて、そんな中で桐光に負けていたので、今年、自分の代でキャプテンということで、今日はほんとに誰よりも気持ちが入っちゃったんですけど、でもそれがちゃんと得点という形になって、ほんとに良かったと思っています

ゲキサカ(2024年11月5日)

生年月日や身長・体重は選手名鑑にも載っていますが、大学生の個人情報のため取り上げていません。学業や私生活も同様に、競技の記録だけを扱います。

「泥臭い」を、本人と監督の言葉で読み直す

川上哲平を検索すると、人物名の次によく並ぶ語は「サッカー 泥臭い選手」です。「泥臭い」は便利な言葉ですが、そのままでは真似のしようがありません。幸い、彼の得点は3つの試合で具体的に記録されています。

2024年4月28日 関東高校大会神奈川予選 準々決勝

日大高に2-1で勝った試合で、2得点。学校公式が紹介している記事の描写はこうです。0-0で迎えた50分、横浜創英が左サイドから仕掛けるとPA内の混戦からこぼれ球に反応したFW11川上哲平(3年)が体勢を崩しながらシュートを決めて先制。さらに直後の55分、またも川上がCKのボールをニアに走り込み頭で流し込みました。

1点目は選手たちの声や周りも見えていましたが、ここで自分が決めてやるという強い意思を持って感覚で打った。2点目はCKでいつも練習していて、ニアかファーなんですけどキックを信じて自分のところに来いと思ってました

高校サッカードットコム(2024年4月30日)

2024年5月27日 関東高校大会Bグループ決勝

成徳深谷高に3-0で勝った試合で、1-0で迎えた後半27分に追加点。同じく学校公式が紹介している記事によれば、相手DFの裏へ抜けたボールをGKがキャッチしようとするところへ、プレッシャーを掛けていた川上がブロックするDFの前に右足を出す形でシュートを決めています。

FWとしてはああいうところは逃したらいけないところだから、しっかりボールを追って押し込むことができた。GKがちょっと出るの迷ってるなっていうのがあったんで、自分の中では『ここ、いける』と思っていました。最後まで諦めないようなプレーでやってるんで、しっかりそれが結果に結びついてよかったです

ゲキサカ(2024年5月30日)

このとき本人は、自分をこう位置づけていました。

点のところもそうですけど、絶対タフにやるだったり、諦めなかったり、盛り上げたり、泥臭いところやったりっていうところでチーム引っ張って、こうやるんだよっていうのを背中で、声で見せていけたら

ゲキサカ(2024年5月30日)

技巧派の多いチームの中で、自分は「みんなみたいに上手くない」とも言っています。ただ、それを弱点として置いたのではなく、チームに足りないものとして引き受けていました。

確かにそれ(横浜創英)らしくないっていうところもあるんですけど、 そういうところももっとできるようになったら、もっともっと強いチームになると思うんで、そういう泥臭いプレーのところをインターハイに向けてしっかりと1人1人ができるように頑張っていきたいと思ってます

ゲキサカ(2024年5月30日)

2024年11月4日 選手権神奈川県予選 準決勝

桐光学園に2-0で勝った試合では、前半33分とその2分後に得点しています。横浜創英高はMF岡村琉生(3年)のインターセプトからFW川上哲平主将(3年)が右足シュート。これは右ポストを叩きましたが、その後の混戦からこぼれ球を左足でゴールへ蹴り込みました。

シュート打った後も足を止めないっていうことはFWとして意識してるので、それがしっかりと準決勝という舞台で点に繋がって良かったと思っています

ゲキサカ(2024年11月5日)

2点目は、クロスバーを叩いたクロスのこぼれに反応してのヘディングでした。3試合とも、決めているのはこぼれ球かニアへの走り込みです。ここまでを並べると、「泥臭い」の中身が行動として取り出せます。

抽象語 実際にやっていること 練習で決めておけること
こぼれ球に強い 自分が打った後も足を止めず、混戦のゴール前に居続ける シュート後に詰める動作を反復する
ニアに強い CKでニアかファーかをあらかじめ決めて走り込む キッカーと入る位置を約束しておく
最後まで諦めない GKが処理を迷った一瞬に足を出せる距離まで走っている 相手の処理が終わるまで追うと決めておく
体を張る 体勢を崩しながらでも枠に飛ばす 崩れた体勢からのシュートを練習に入れる

「勘」でも「準備」でもなく、その両方

準決勝の2得点について、監督はこう説明しています。

彼の持ち味っていうのは、ほんとにペナルティエリア内での泥臭いボールへの反応。2点とも彼のその泥臭さというか、体張るというか、反応スピードというか、一瞬の気持ちでこうボールに突っ込めるというか。本当に今少なくなってきているタイプの選手

ゲキサカ(2024年11月5日)

そして本人が、同じ試合について使っている言葉がこれです。

ゴール前のところで嗅覚っていうところだったりとか、やっぱりゴールを泥臭く決めるのは意識してるので、それもまた形になって良かった

ゲキサカ(2024年11月5日)

「嗅覚」という語は、本人が自分で使っています。準々決勝の1点目も「強い意思を持って感覚で打った」ものでした。「反応スピード」「一瞬の気持ち」「嗅覚」「感覚」は、どれも事前に決めておける種類のものではありません。

同時に、同じ本人が「シュート打った後も足を止めないっていうことはFWとして意識してる」「CKでいつも練習していて、ニアかファーなんですけど」とも言っています。「泥臭い」は勘だけでも準備だけでもなく、決めておいた行動を、期待値の低い場面でも省略しないことと、その先の一瞬の反応の組み合わせです。片側だけを見ると、もう半分が消えます。

8月の負傷、1か月の準備、そして準決勝の2発

学校公式が紹介している準決勝の記事によれば、川上は8月に競り合いで大腿部を負傷し、約2か月の離脱を強いられています。1か月前に練習復帰し、この大会では途中出場が続いていました。チームは川上が不在だった9月の座間高戦を4-3の辛勝で乗り切っています。負傷から復帰した準決勝では2得点。地元紙のタウンニュース神奈川区版もこの結果を伝えています。

復帰したからには自分の得点でもっともっとみんなとサッカーをしたいなっていう強い思いでプレーしていました

ゲキサカ(2024年11月5日)

横浜隼人高戦、相模原弥栄高戦に続いて桐光学園高戦でも貴重なゴールを決めています。

監督は宮澤崇史

本人の口からも名前が出ています。

泥臭いところでやっていかないといけないなと。そこを(宮澤崇史)監督も買ってくれるので

ゲキサカ(2024年5月30日)

監督のコメントとして原文で確認できるのは、準々決勝の直後と決勝の後の2つです。

前半からボールを握れていたので、そんなに(見ていて)心配していなかった。試合内容は及第点。失点がなければ合格点だった

高校サッカードットコム(2024年4月30日)

やっていることは17年前と同じだが、少しずつ結果が出ることによって、創英を第一志望にして来てくれる子たちが増えてきた。やっぱりそこは強みです

タウンニュース神奈川区版(2024年11月14日)

大学へ―國學院大學、関東大学リーグ3部

高校卒業後、川上哲平は大学サッカーへ進みました。國學院大の選手一覧にフォワードとして掲載されていて、選手名鑑のページには所属と学年が出ています。

■所属:國學院大

■ポジション:FW

ゲキサカ 選手名鑑「川上哲平」(2026年8月18日閲覧)

学年は2年。この選手名鑑のページは、2024年の高校時代の記事と同じ選手ページに紐づいているので、同姓同名ではなく本人です。

所属先は関東大学サッカー連盟の3部です。3部に並ぶ12チームのうち、チーム名にウェブサイトのリンクが張られていないのは國學院大學体育連合会蹴球部だけで、載っているのはSNSのアイコン5つだけです。部としてのウェブサイトが公開されていないため、個人の出場記録を確かめる手段は今のところありません。

チームの成績は連盟のマッチレポートが公開しています。JR東日本カップ2026 第100回関東大学サッカーリーグ戦の3部は、2026年7月11日の第7節延期分で前半戦の全日程を終えました。連盟が出した順位表では、國學院大學は11試合で勝点21、18得点12失点の3位。首位の山梨学院大学が勝点31、2位の順天堂大学が勝点21で、得失点差だけの差です。

2位の國學院大學は5位の順天堂大学に0-1で敗戦。

関東大学サッカー連盟 3部リーグ第11節

連盟が全11節で公開しているのは得点者だけで、出場した選手の一覧は公開されていません。公開されている得点者の人数を足すとちょうど18で、チームの総得点と一致するのでこの一覧に漏れはなく、その18人の中に川上哲平の名前はありません。ここから言えるのは「2026年の前半戦、リーグ戦では得点していない」ということだけで、出場していたかどうかは連盟の公開範囲では分かりません。もっとも、高校時代に評価されていた仕事の大半は、こぼれ球への反応や、GKに寄せ続けることや、前線から追い回すことでした。得点者の一覧に最も出にくい種類の仕事です。

大学経由でプロになる道

高校卒業と同時にプロ契約を結ぶルートと、大学を経由するルートは、どちらが有利かではなく時間の使い方が違います。大学経由がどれくらい現実的なのかは、連盟の該当ページで数えられます。ページには表が2つ並んでいて、上が今年出ていく卒業生、下がまだ在学中で来年出ていく予定の選手です。2026年8月18日に数えると、こうなります。

連盟が同じページに載せている一覧 2026年8月18日に数えた人数
2025年度卒業生(または2026年加入選手)・進路先(クラブ)一覧 85人(J1 21/J2 28/J3 35/デンマーク1)・23大学
2026年度卒業予定選手 プロクラブ加入内定一覧 14人(J1 8/J2 6)・9大学
上の2つを足した数 99人・24大学

直近の卒業生でプロに入るのは関東の連盟で85人、そのうちJクラブが84人です。卒業年の違う2つの表を1つに数えると99人になりますが、性格の違う表なので分けて読む必要があります。同じ連盟の一覧は、サッカー推薦で大学へ行く前に考えることをまとめた記事や、望月ヘンリー海輝選手と中村敬斗選手の記事でも参照しています。この一覧はリリース日が2026年4月16日まで散らばっていて、発表のたびに行が増えるので、人数を書くなら数えた日を一緒に書かないと意味を持ちません。

対になるルートも見ておくと比較しやすくなります。高校在学中にプロ契約を結んだ西原源樹選手高卒でトップ昇格しスペインへ渡った杉浦誠黎(スギウラ ミレイ)選手。同じ年代でも、通る道はこれだけ違います。プレースタイルの対比なら、家長昭博のようにボールを持って局面を壊すタイプと並べると分かりやすくなります。どちらが上ということではなく、チームの中で自分がどちらで数字を出すかの問題です。

まとめ

横浜創英は選手権神奈川県予選で準優勝、決勝は0-2で全国には届きませんでした。ただ、その決勝までの道のりのほうが中身があります。8月に大腿部を痛めて約2か月離脱し、9月の試合は不在。10月に後半から入って同点弾、準々決勝でも得点し、11月の準決勝で先発に戻って2点。「みんなみたいに上手くない」と言った主将が、こぼれ球に反応し、ニアに走り込み、GKが迷った一瞬に足を出して点を取りました。

そのプレーを、本人は「意識している」とも「嗅覚」とも言っています。監督は「反応スピード」「一瞬の気持ち」と言い、同時に「今少なくなってきているタイプの選手」と言いました。どちらか一方に寄せて説明すると、必ずもう半分が消えます。

「泥臭い選手」で検索してここへたどり着いた人へ。真似できるのは気迫ではなく、上の表の右列です。期待値の低い場面で走るかどうかを、走る前に決めておくこと。そのうえで、決めておいた場所にボールが来た一瞬に体が動くかどうかは、繰り返した回数がつくります。

評価 :5/5。