あなたが所属(指導)しているクラブのボランチには右利きの選手が起用されていますか?それとも左利きの選手が起用されていますか?

出典:http://news.livedoor.com/
「ボランチにレフティを起用することで、ゴールが生まれる確率が高くなる」。この記事は、2015年にそんな説を立てたコラムです。疑問や異論を抱く人も多いと思いますが、最後まで読んで頂ければ納得・共感してくれる人もいるかもしれません。初出から10年以上が経ったいま、説の「その後の答え合わせ」も追記しました(2026年8月15日更新)。
レフティの割合と日本で活躍したボランチの選手
日本人のサッカー選手で右利きが多いことに何の異論もありません。これは日本だけでなく世界共通であることにも異論はありません。
Coren(1993)は、利き手同様、男性 83.9%、女性 88.9%に右足利きの傾向がみられたことを報告して おり、足においても右使用の傾向があることがいえ る。
出典:http://atlantic2.gssc.nihon-u.ac.jp/
日本大学大学院総合社会情報研究科紀要によると、物を操作するときに用いる足(ボールを蹴るなど)の割合(比率)は、男性の83.9%が右足利きと言うことです。ということは、残りの16.1%が左足利き(ボールを蹴る足が左)のレフティと言うことです。
※両利きは分からない
この情報を頭に入れた状態で、日本代表の歴史を彩ってきたボランチの選手と、その利き足を見てみましょう。肩書はこの記事の初出(2015年)当時のものです。
エントリーNo.1 森保一
当時サンフレッチェ広島監督(のちに日本代表監督としてワールドカップを2大会指揮) 【右足】
オフトジャパンのダイナモ。この時代、ボランチという言葉よりも守備的MF(ディフェンシブハーフ)という言い方が一般的であった。
エントリーNo.2 本田泰人
元鹿島アントラーズ・当時サッカー解説者など
【右足】
子どもに人気の必殺仕事人。ファウルすれすれのプレーでファンを魅了した。
エントリーNo.3 山口素弘
元横浜フリューゲルス
【右足】
ここまでの中盤の底の役割は守備がメインであったが、ゲームを作る役割を加えた選手。選手と指導者の違いを身に染みて感じているかもしれない。
エントリーNo.4 名波浩
当時ジュビロ磐田監督
【左足】

出典:http://faro-npo.jp/
長期に渡って日本代表の10番を背負ったレフティ。元々7番がマイナンバーで、順天堂大学在学時は出場5分で結果を出す男として、トップ下をメインとしていた。展開力とゲームコントロールが魅力のボランチ。
エントリーNo.5 稲本潤一
当時コンサドーレ札幌
【右足】

出典:http://www.sankei.com/
スーパーなボランチ。イングランド、トルコ、ドイツ、フランスを経験しているレジェンドボランチ。最初に呼ばれたアンダーの試合では右サイドバックをつとめ、センターバックもつとめた。誰がどうみてもスーパー。
エントリーNo.6 福西崇史
当時サッカー解説者、タレント
【右足】
中田英寿と宮本恒靖に自分のサッカー観を言える男。男らしい生き様と激しいプレースタイルの反面、やさしい笑顔が大沢たかおに似ている一面がある。
エントリーNo.7 鈴木啓太
元浦和レッズ
【右足】
サッカー選手になっていなければEXILEに入っていたかもしれないナイスガイ。ここぞという場面でピンチを防ぐ守備重視型だった。引退のセレモニーがどうしてもアイドルの「卒業」会見のような気がしてならなかった。
エントリーNo.8 長谷部誠
当時アイントラハト・フランクフルト(2024年に現役引退)
【右足】

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代表主将を務めたミスターボランチだが、浦和レッズ時代にトップ下で相手を置き去りにした高速ドリブルは衝撃的であった。
エントリーNo.9 遠藤保仁
当時ガンバ大阪(2024年に現役引退)
【右足】
説明不要のマイペース男。全盛期はバルセロナに一番近い日本人だったかもしれない。シャビとは誕生日が3日違いの同い年。ダブルボランチに夢の共演をみてみたかった。
ここまでを振り返ってみても、名波浩以外は全員が右利きでした。この他、阿部勇樹や中村憲剛などがいますが、レフティのボランチは数多くないことがわかります。
ボランチにはレフティを起用する理由
なぜボランチにレフティを起用した方がいいのか。その理由はいくつか例をあげられますが、2つの理由を取り上げてみたいと思います。
ボランチレフティ論 其の壱
【チームの核となるポジションだからこそ】
競合選手は圧倒的に右利きが多いのが現状です。もちろんボランチ以外のポジションでも基本的に右利きが多く、レフティは貴重な存在として優遇されることがありますが、トップ下やサイド、またはFWの選手と比較すると、ボランチのレフティ数は圧倒的に少ない気がします。
単にレフティ同士で競合する選手が少ないからという理由ではありません。ボランチは最大トリプルボランチ(3人)を置くことも可能です。ボランチに1人でもレフティがいたならば、右利きとは違ったアクセントやリズムをチームにもたらすことが可能です。
ゲームをコントロールできるポジションであるから、贅沢ですが優秀な右利きのボランチが既にいても、左利きを同時につかいたくなるポジションでもあります。
ボランチレフティ論 其の弐
【右利きが多いが故にデルピエロゾーンを狙えるから】
ボール支配率の高いチームは、ボランチを経由しながらボールを右へ左へ縦へ後ろへ運びます。ただ、ボランチが右利きだとどうしても右サイドから左サイドへのサイドチェンジが、左サイドから右サイドへのサイドチェンジと比べて、ワンテンポもツーテンポも遅くなってしまうのです。
どういうことかというと、右利きのボランチは右サイドから自分の位置する真ん中へきたボールを処理するのに、どうしても利き足ではない左足でトラップすることを躊躇してしまうのです。左足でトラップするということは、一回のターンで逆サイドを向けます。しかし、右足でトラップしようとすると、一回のターンで逆サイドを向くことが非常に困難です。
こちらは全盛期のバルセロナで中盤を支配したシャビのプレー集です。世界でもトップクラスのボランチですが、彼は右利きです。右サイドからきたボールの処理の仕方、体の向き、ボールの持ち直しに注目してください。そして、逆に左サイドからきたボールの同じような処理の仕方に注目してください。
http://youtu.be/IW3LomJWFSQ
言いたいことが伝わるでしょうか。ハッキリ言って上手すぎてすべてがうまくいっているように思えるかもしれませんが、シャビでも右サイドから左サイドへの展開はワンテンポ遅くなっていることがわかります。
これは逆もしかりで、左利きのボランチは左サイドから右サイドへの展開は難しいことが言えます。しかし、右サイドから左サイドへの展開は、トラップだけで素早く逆サイドにターンすることができ、次のプレーではサイドチェンジをすることが可能となります。
そこで、左利きのボランチを置くことが可能であれば、左サイドからの攻撃を多くするのです。実は日本代表も相馬直樹の時代から長友佑都の時代まで、なぜか左サイドからの攻撃や得点が多いのです。
右利きが圧倒的に多い状況で、チームの一番点取り屋(ここでは右利きを想定)を左サイドや、もしくは少し中へ位置させることで、ゴールに向かって右斜め45度・ペナルティエリア角付近の「デルピエロゾーン」からのシュートチャンスを生まれやすくするということです。
世界でもまだまだレフティボランチが少ない中で、もし自分(指導している選手)がレフティであるならば、ボランチがどうあるべきかを研究し、本格的に勝負を仕掛けてみるのもいいかもしれません。
ただ、一つアドバイスをするとすれば、どうせ学ぶなら世界最高峰のボランチから学ぶべきで、「何を学んだか」よりも「誰に学んだか」を重視すべきです。
10年後の答え合わせ──現代のレフティボランチ
この説を立ててから10年以上が経ちました。世界に目を向けると、レフティボランチの価値はむしろ高まっています。
代表格が、スイス代表の主将グラニト・ジャカです。アーセナルではキャプテンを務め、レバークーゼンでは2023-24シーズンの無敗優勝の中心となり、左足から繰り出す正確な展開でゲームを支配する「左利きの司令塔型ボランチ」の完成形を見せました(スポーツナビ選手名鑑)。また、2024-25シーズンに欧州チャンピオンズリーグを制したパリ・サンジェルマンでは、左利きのファビアン・ルイスが中盤の主力として君臨。ビルドアップの出口を左足で作る選手の価値は、ポゼッション志向が強まる現代サッカーでますます大きくなっています。
日本では、FC町田ゼルビアの中山雄太が貴重な存在です。左利きでセンターバックもボランチもこなし、日本代表でも22試合に出場(Jリーグ公式選手プロフィール)。2026年8月には「次の代表に入っていきたい」と左利きを武器にした再挑戦を宣言しています(サッカーキングの報道)。それでも、日本代表のボランチの主流は依然として右利き。この説の答え合わせは、まだ道半ばです。
なお、ボランチというポジション自体の変遷(アンカー、ゲーゲンプレス、ポジショナルプレー)は、サッカー戦術の歴史と変遷の記事で詳しく解説しています。
理想はレフティの1ボランチか
真ん中のスペースを1ボランチで賄うには、相当能力の高い選手を配置することが求められます。2015年の初出時には「今の日本では希望の光があまり見えない。強いて言うならセレッソ大阪の扇原貴宏か」と書いていました。
なぜ1ボランチか。1ボランチにすることで、攻撃や守備のストロングポイント、ウィークポイントに選手を増やすことが可能だからです。
理想の1ボランチ像として以下のように設定します。
1、レフティ
2、背が高い(180cm以上は欲しい)
3、守備より攻撃センスがある
該当する選手がいましたら、是非日本代表のレフティボランチを目指してください。日本サッカーの中盤に、左足で時計の針を進める選手が現れることを、この記事は10年越しで待ち続けています。

