もし日本の19歳が、春から秋にかけて10試合の予選を戦い、そのうち9つ勝って、そこでようやく次の大会への切符が確定する、という一年を過ごしていたらどうだろう。一本の線が最初から最後まで見えている一年。そういう一年を、日本の同年代は持っているだろうか。
スペインの協会が、U-21の欧州選手権の出場決定を伝えている。予選10試合で9勝、勝ち点27、47得点5失点。最後の3点はイビサのカン・ミセスでルーマニア相手に7得点を挙げた試合で取ったと書かれている。
引っかかったのは、10試合という数のほうです。優勝でも得点王でもなく、「10試合やって9つ勝った」という形で一年が要約されている。10という分母があるから、9という分子が意味を持つ。日本の19歳の一年を、同じように分母つきで言えるだろうか。
予選という言葉が、何段目を指しているか
日本の同年代が戦っているAFC U20アジアカップの予選は、翌年のU-20ワールドカップの一次予選を兼ねている。8グループに分かれ、各組1位と、各組2位のうち上位7チームが本戦に進む。そしてその本戦が、今度はワールドカップのアジア最終予選を兼ねる。予選を勝つと、次に待っているのは「本戦」という名前の予選。
この入れ子は、外から見ると数えにくい。U-19日本代表が8月の終わりにカンボジアで調整していた、という記事を読んだとき、それが世界大会への何段目なのかは、大会名からは出てこない。アジアカップの予選なのか、ワールドカップの予選なのか。答えは両方で、だからこそ一本の線として数えづらい。スペインの10試合9勝のような、分母と分子で言い切れる形になっていない。
もうひとつ、この大会は2007年生まれ以降という誕生年で出場資格を切っている。日本の国内大会はほぼ全部が学年で切られている。高校総体も選手権もクラブユース選手権も、4月2日からの一年で区切られた集団で組まれる。だから代表に呼ばれた瞬間、その子の所属する集団の切り口が変わる。学年の列から、生まれ年の列へ移る。本人の一年は連続しているのに、数え方の物差しが途中で差し替わっている。
10という分母を、国内のどこで持つか
では、日本の19歳が10試合まとまった単位を持つ場所はどこか。大学のリーグ戦があり、Jのリーグがあり、U-21 Jリーグができた。ただ代表の活動として積む10試合、つまり同じ28人くらいの集団で一年かけて積む10試合は、この年代にはあまり置かれていない。
国内合宿の最終日に大学とトレーニングマッチを1本。カンボジアへ行って予選を数試合。帰ってきて所属チームのリーグ戦に戻る。一回ごとの活動が、独立した点として並んでいく。U-19日本代表の直前マッチの相手が毎回大学になる話を数えたときも、その一行は日程を埋める材料に見えて、実は大学が高体連とクラブユースの合流点だという構造のほうに意味があった。今回も似たことが起きている。点が並んでいるのではなく、点の並び方に意味があるのに、数える単位がないから読み取れない。
代表の活動を終えた選手が所属へ戻るとき、その所属のほうは日程を止めてくれない。年代別の国際大会の期間中もJのリーグ戦は進む。準決勝で延長とPK戦までフル出場した翌々日、クラブの公式戦にフル出場する。そういう戻り方になる。クラブと代表のどちらが日程を譲るかという調整は、年代別には働いていない。
誕生年で切られた集団は、年度のどこに帰るか
2007年生まれ以降という切り方は、日本の高校3年生と大学1年生をまたぐ。同じ代表チームの中で、片方は学校の卒業式を控え、片方は大学のリーグを戦っている。片方はもう1月付けでトップ昇格が決まっていて、片方は大学の4年間の1年目にいる。
しかもシーズン移行のあとは、昇格や加入の発令が1月に来る。高校3年の3学期にプロになり、大学4年の最終学年の途中で所属が切り替わる。誕生年で呼ばれ、学年で学校に通い、シーズンでクラブに登録される。一人の19歳に、三つの暦が同時にかかっている。
10試合9勝という要約が成り立つのは、その10試合が一つの暦の上に並んでいるからです。日本の19歳の一年は、暦が三本走っているぶん、どの一本で数えても「一年ぶん」にならない。だから彼らの一年は、大会名の羅列になりやすい。
数えられる形にするのは、誰か
これは制度の欠陥だという話ではないと思っています。学年で区切る国内大会には学校という器があり、誕生年で区切る国際大会にはFIFAやAFCの暦がある。どちらも動かしようがない。
動かせるのは、選手本人と、その周りにいる大人が、一年をどの単位で記録するか、のほうではないかと。代表に何回呼ばれたかではなく、その年に公式戦で何分出たのか。何チームの名簿に名前が載り、そのうち何試合に実際に立ったのか。所属のリーグで何試合、代表で何試合、カップ戦で何試合。足して一年ぶんの分母を自分で作る。
そこまで降りると、代表に呼ばれなかった子も同じ物差しに乗る。県のリーグで20試合出た高校3年生と、代表で2試合出て所属では控えだった高校3年生を、同じ一年として並べられる。優勝したかどうかではなく、出た分数で一年を書く。こういう記録を選手の手元に残すために、いま動画とノートとチーム運営をひとまとめにしたものを作っています。
一年を要約する数字を、大会の主催者が用意してくれるとは限らない。だったら、分母は自分で決めるしかない。19歳の一年を、大会名を並べずに数字3つで言えるかどうか、来年の1月にもう一度試してみる。
出典: rfef.es(2026-10-06)