朝6時起床、朝活・朝練でサッカーをするかサッカーを観るか

朝6時にサッカー観戦をするとサッカー人生が変わります。

そんな広告を見たらサッカー選手は朝活でサッカー観戦をし始めるのでしょうか。

早起きは三文の徳とはよく言いますが、朝6時に起きることが早起きかどうかはその人によります。なぜなら朝が早い人はもっと早い時間に起きて6時からは既に働いている人もいるからです。そして、中学生や高校生でも6時に起きて6時半から朝練をしている選手も少なくはありません。

朝に運動することは気持ちがよく、1日が充実したものであるような気にさせてくれます。では、サッカー選手として朝早く起きてサッカーをするのがいいのか、観るのがいいのか。以下では、公的な指針とJリーグの実データをもとに考えます(2026年8月20日更新)。

サッカーの朝練は効果があるのか

結論から言うと、朝練そのものに良し悪しはありません。判断を分けるのは「睡眠時間が削られるかどうか」の一点です。

厚生労働省の健康づくりのための睡眠ガイド2023は、こどもの睡眠について次のように示しています。

  • 小学生は9〜12時間を参考に睡眠時間を確保する
  • 中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する
  • 成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する

ここに朝練を当てはめてみます。6時起床・6時半から朝練という生活で、中高生が8〜10時間の睡眠を確保しようとすると、就寝は20時から22時でなければ届きません。部活動や塾、宿題を考えると、現実にはかなり厳しい数字です。

つまり朝練の是非は、「早起きが良いか悪いか」ではなく「その分だけ早く寝られているか」で判断すべきということです。早く寝られているなら朝練は問題ありません。夜の時間が変わらないまま朝だけ早くなっているのであれば、それは練習量が増えているのではなく、睡眠を練習に置き換えているだけです。

そのうえで、ここでの主張は次のとおりです。朝の時間に練習を足すより、朝は「観て、考える」時間に使ったほうが伸びる。以下、その理由をデータで説明していきます。

1日2時間練習は多いのか少ないのか

サッカー選手は大体2時間前後が通常のトレーニングに費やす時間だと思います。チームで練習する時間です。

2時間の練習ではサッカーをした感が足りない人は、チームの練習前後に自主トレや筋トレ、クールダウンやストレッチといった自分が欲するトレーニングを取り入れると思います。

朝練や2部練、3部練を取り入れているクラブの選手にとっては、1日の練習時間が2時間をはるかに超えて、3時間〜4時間をトレーニングに費やしており、通常の2倍〜3倍のトレーニング量をこなすことになります。

トレーニングに費やす時間やボールに触れる時間が長ければ長いほど、その時間と比例して右肩上がりにサッカースキルも成長すると考えています。

しかし、過度なトレーニングはメンタルを鍛えることは出来そうですが、そもそもサッカーのスキル向上などに逆効果の作用が働くような気もします。

一定量のトレーニングを続けていると、疲れているはずなのに気分が高揚して、練習そのものが楽しくなってくる状態があります。この状態にあるとき、自分が思っているより実際は疲れています。「まだやれる」という感覚は、体の状態を正確に表していないということです。

過度なトレーニングを行うことが自分の身体を必要以上に戒めているようにも思いますが、それがアディッショナルタイムに活きるから必要だと言われればそれもまた納得せざるを得ません。

サッカーの練習は1日2時間では不十分でしょうか、それとも十分でしょうか、あなたは1日どれくらい練習していますか?

90分で何km走れるのか:マラソン世界記録とJリーグの実データ

最近のトレーニングは「素走り」という言葉が少なくなってきているのではないでしょうか。なぜなら、近年Jリーグクラブのアカデミーを中心に、サッカーのトレーニング方法がより理論的かつ効率的に変化してきているからです。

そもそもサッカーは交代を考えない場合、前後半合わせて90分間を闘わなければなりません。選手は与えられた90分間でどれだけ走ることができるのでしょうか。

まず「人間が90分で走れる限界」を見る

比較の基準として、マラソンの世界記録を使います。

2026年4月26日のロンドンマラソンで、ケニアのサバスティアン・サウェ(Sabastian Sawe)が1時間59分30秒を記録し、公認レースで初めて2時間の壁を破りました。この記録はワールドアスレティックスによって世界記録として公認されています(World Athletics公式)。従来の世界記録は2023年10月8日のシカゴマラソンでケルビン・キプタムが出した2時間00分35秒でした。

この記録のペースで90分間走り続けたとすると、約31.78kmという計算になります。ちなみに、初出時点での世界記録はデニス・キメットの2時間02分57秒(2014年ベルリン)で、そのときの換算は約30.89kmでした。12年で90分あたり約0.9km、人類は速くなったことになります。

次に「サッカー選手が実際に走る距離」を見る

90分間闘う必要があると言いましたが、90分間走り続ける必要があるかと言うとそうではありません。サッカー自体が無酸素運動と有酸素運動の連続で、ピッチを歩くことも珍しくないからです。

Jリーグ公式が公開している2026シーズンJ1のトラッキングデータを見ます。1試合平均走行距離が最も多いクラブで119km(チーム合計・2026/27シーズン・2026年8月10日更新時点)。これを出場11人で割ると、1人あたりおよそ11kmです。

あわせて1試合平均スプリント回数を見ると、最も多いクラブで146回(チーム合計)。1人あたりでは1試合13回前後で、1回あたり数秒ですから、全力疾走している時間の合計は1試合で1〜2分程度にすぎません。

シーズンを通した個人の積み上げも公開されています。2026シーズンJ1の総走行距離では、柏の中川敦瑛が231.5kmで首位、横浜FMの山根陸が225.6km、浦和の渡邊凌磨が224kmと続いています。

「1試合15km走れば十分」は正しいのか

もともとは「サッカー選手は1試合15kmを走れば十分」と書いていました。しかし実データと突き合わせると、この数字は事実と合っていません

前章のとおり、J1で最も走るクラブでも1人あたり約11km。トップクラスの選手が13km前後です。つまり「15km走れば十分」なのではなく、そもそもプロでも15kmは走っていないのです。

ここから導かれる結論は、もとの主張よりむしろ強くなります。

  • マラソン世界記録のペースなら90分で約31.8km走れる。サッカーの走行距離はその3分の1程度である
  • つまりサッカーは、走力の限界を競う競技ではない
  • 90分の中身は歩く・ジョグ・スプリントの断続であり、全力疾走の合計はわずか1〜2分
  • ならば「素走り」で総距離を積むトレーニングの優先度は高くない。いつ走るかを判断する力のほうが効く

1日2時間弱の練習で11kmを走ることも、現実には簡単ではありません。練習では試合よりも止まった状態や休憩が多いからです。だからといって朝練や夜練を追加して1日の走行距離をミッションにするのは、目的を見失っています。

そこで、1日2時間のトレーニングをより効果的にするためにも、朝早く起きてサッカー観戦をすることをオススメします。

朝練で必要なことはいいイメージをたくさん持つこと

最近は「考えるサッカー」が育成年代の練習で重要視されるようになりました。自分で考える能力をつける、そういった指導をしているサッカーコーチや監督は多いことでしょう。

そもそも考えるとはどういうことでしょうか。

メッシのドリブルはどうしているのかについて考えること、将来サッカー選手になりたいと考えること、今日は身体のために何を食べようかと考えること、皆さんは1日で色んなことを考えています。

しかし、それは考えるというよりも「思う」「感じる」と言ったほうが適当でしょうか。

そもそも「考える」とは、メッシのドリブルをみて真似をすることではなく、メッシのドリブルを自分流に変えた場合、どういうドリブルが出来るかと言うことです。

もう一つレベルを上げた思考をするならば、メッシとクリスティアーノ・ロナウドのドリブルを組み合わせ、自分流にするとどうなるかと言うことです。それが自分の好きな選手同士の組み合わせでも構いません(初出当時は、武藤嘉紀と宇佐美貴史を例に挙げていました)。

答えがでるかは別として、メッシのドリブルは見たことはあるが、他の選手のドリブルを見たことがなければ、そもそも自分で考えられるドリブルが何かすら思い浮かびません。

サッカー素人にクライフターンをしてみてと言ってもできないこととおなじです。そもそも「クライフターン」が何かを知らないからです。ちなみにこの技に名を残すヨハン・クライフがどういう人物かは、サッカーの偉人を扱った記事で解説しています。

大事なポイントとしては、自分が知っていることについては「考える」ことができるわけですが、自分が知らないことについては「考える」ことがほとんどできないのです。

サッカーのプレーに関する情報が揃ったところで、ようやく自分で「考える」ことができるということです。

まずは知ることが大事で、知らなければ調べること。「考える」ことの第一歩は知ることから始まるのです。

結論:朝の時間は「観て、考える」に使う

ここまでを整理します。

  1. 朝練の是非は睡眠で決まる。中学・高校生は8〜10時間が目安であり、夜が変わらないまま朝だけ早くするのは睡眠を練習に置き換えているだけ
  2. サッカーの1試合の走行距離は1人あたり約11km。マラソン世界記録ペース(90分で約31.8km)の3分の1程度で、全力疾走の合計は1〜2分
  3. ゆえに走行距離を積むことの優先度は高くない。効くのは「いつ、どこへ走るか」の判断であり、判断は知っている引き出しの数で決まる

だから、朝練にかけていた時間をサッカー観戦に変えてみてはいかがでしょうか。朝にサッカーを観戦していいイメージを持ち、自分で考えたことを通常2時間のトレーニングの中でトライする。あるいは走るペースは自分で調整し、ボールを持った状態で走るトレーニングに変える。

毎日の積み重ねでしょうが、どちらが成長するでしょうか。

サッカーが身体と心に与える影響についてはサッカーと健康の記事、プレッシャー下で判断を落とさない方法についてはサッカーで冷静さを保つ方法の記事もあわせてお読みください。

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