NEWDIHアクセス解析2015年12月

2016年1月、当時のこのメディアは「2018年ロシアワールドカップまでに100万PV」という目標を掲げ、その進み具合を毎月ひとつの記事にして公開していました。これはその2015年12月分の号です。

この号は2016年1月6日に公開しました。当時の筆者は、この月に3つのことを書きました。読者は長い記事を嫌うらしいという調査、URLを総入れ替えして検索流入が激減したという報告、そして翌月に何が起きるかという予想です。

10年たって、そのうちいくつかには答えが出ています。確かめられたことは確かめたと書き、確かめられなかったことは確かめられなかったと書きます。

他社の画像はやめて、調査の中身を文章にした

当時の筆者は、マーケティング専門メディアの記事から統計グラフを2枚、他社のサーバへ直リンクする形で貼り付け、そのすぐ後の地の文で「上記のような統計があるようです」と図を指していました。

この貼り方には2つの問題があります。ひとつは他社サーバの画像を10年にわたって自分の記事の中で表示し続けていたこと。もうひとつは、図を消すと論拠の実体が消えてしまい、数字を語っているのに根拠が無い文章だけが残ることです。画像を自分のサーバへ複製すれば著作権上はむしろ悪化します。

そこで、画像はやめて、調査の内容を文章として書き起こしました

引用した記事はいまも読めます。MarkeZine編集部「日本人の8割、短い記事を多く読みたい/ミレニアル世代の8割はネットの信頼性検証しない【アドビ調査】」(2015年12月21日)で、当時貼っていた図版はそこに載っていたものです。

さらにその記事がプレスリリースとして挙げていたのが、アドビ システムズ株式会社が2015年12月18日に発表した調査結果でした。以下はその発表からの引用です。

情報を得る時間が例えば1日に15分程度に限られている場合、日本人の約8割(79%)が「長めの記事を読むより、話題となっている短めの記事を数多く閲覧したい」と回答しており、世界平均の63%を上回る結果となりました。

アドビ システムズ株式会社「アドビ、消費者のコンテンツに関する意識調査の結果を発表」(2015年12月18日)

消費者が閲覧する情報が増加する中、ユーザーが1つのコンテンツ閲覧に対して割く時間はよりいっそう短くなっています。

アドビ システムズ株式会社「アドビ、消費者のコンテンツに関する意識調査の結果を発表」(2015年12月18日)

同じ調査は、読み手が情報の確からしさをどこまで疑うかについても数字を出しています。

特に、日本のミレニアル世代の82%は、オンライン上で投稿するコンテンツが正確もしくは適切かどうかを検証しないと回答しています。

アドビ システムズ株式会社「アドビ、消費者のコンテンツに関する意識調査の結果を発表」(2015年12月18日)

調査の規模と時期も押さえておきます。

日本の調査結果は、2,014人からの回答に基づいています。調査データは、Edelman Berlandにより2015年9月12日から9月29日にかけて回収されました。

アドビ システムズ株式会社「アドビ、消費者のコンテンツに関する意識調査の結果を発表」(2015年12月18日)

なお、アドビ側の原本URLはいまはもう開けません(404です)。上のリンクはインターネットアーカイブに保存された同じPDFです。図版を消して文章にしたのは、こうして出典をたどれる形にしておくためでもあります。

「長すぎるのが一番の原因」と当時は書いたが、比率までは確かめられない

当時の筆者は、離脱の理由を並べた図を指して「その中の最大数値をたたき出した『コンテンツが長すぎる』という要因」と書きました。この点は慎重に扱う必要があります。

プレスリリースが挙げている離脱の理由は、次の3つです。

コンテンツを閲覧している際に、他のデバイスに切り替えたり、途中でコンテンツを見ることをやめる理由として、「コンテンツが長すぎる」、「読み込みに時間がかかりすぎる」、「画像を読み込むことが出来ない」の3つが挙げられます。

アドビ システムズ株式会社「アドビ、消費者のコンテンツに関する意識調査の結果を発表」(2015年12月18日)

ここで書けるのは、プレスリリースが3つの筆頭に挙げているのが「コンテンツが長すぎる」だということまでです。各要因が何パーセントだったのかは、プレスリリースの文章にも、引用した記事の文章にも書かれていません。比率が載っているのは配布された図版の中だけで、図を目で読んで数字を書き写す方法しかありません。その方法は採らないので、比率は数値として引きません。

当時の筆者は、この調査を自分への批判として受け取っていました。書きたいことを詰め込むから長くなる、それが良くないのだろう、と。ただし内容がまとまっていないわけではない、とも書き添えています。読み返すと、反省と言い訳が同じ段落に同居しています。

「短くする」という宣言は、実際に守られていた

当時の結論は、読者層によって長さを変えるというものでした。若い読者に向けた記事は簡潔にまとめ、短い版と長い版を作り分けて配信する。読み手の求めるものに合わせるという意味で、当時の筆者はこれをユーザーファーストと呼んでいました。

宣言は守られたのでしょうか。これは自分たちのアーカイブを数えれば確かめられます。いま公開されている全650本の本文からタグを取り除いて文字数を数え、公開月で区切ると次のようになりました。

宣言の前にあたる2015年7月から12月に公開された記事は40本で、本文の長さの中央値は2,703字。宣言の後にあたる2016年1月から6月に公開された記事は52本で、中央値は1,967字です。本数は増え、1本あたりは短くなっています

ただしこの数え方には注意が必要です。ここで数えているのは、いま残っている本文であって、当時の本文そのものではありません。このメディアはいまリブランドにともなう記事の手直しを進めており、この2つの期間にも手を入れた記事が含まれています。そこで手を入れていない記事だけで数え直すと、2015年下半期は23本で中央値2,707字、2016年上半期は39本で中央値1,899字となり、傾向は変わりませんでした。

「来月は落ちる」という予想の答えは、翌月の号にあった

当時のもうひとつの報告は、アクセス数についてでした。配信してきた記事のURLを全て変更したため検索から来る読者が激減し、検索結果から消されたのではないかと不安になるほど落ち込んだ、それでも少しずつ戻り始めている、という内容です。そのうえで、翌月はさらに大きく落ちるだろうと予想していました。

その答えは、翌月の号にそのまま書かれています。

対前月の約50%で踏みとどまってくれました。

NEWDIHアクセス解析2016年1月(2016年2月1日公開)

落ちることは落ちたが、予想したほどではなかった、ということです。そして翌月の号は、落ち込みの原因についても答えを出しています。

やっぱり、301リダイレクトで示す必要があったようですが、今さら後の祭り。

NEWDIHアクセス解析2016年1月(2016年2月1日公開)

URLを変えるときに、旧いURLから新しいURLへの転送を設定していなかった。検索エンジンから見れば、変更前のページと変更後のページが同じものだと分からない。10年後の目で見ても、これは技術的に明快な原因です。当時の筆者はこの月、まだ原因を特定できていませんでした。

もうひとつ、当時の筆者は「配信数を前の月より増やすには14本以上が必要だ」と自分に課していました。これも翌月の号に答えがあります。

思い切って公言していたコンテンツ数を対前月比100%越えをあえてストップし、どこまで純粋に落ちるかを効果測定していました。

NEWDIHアクセス解析2016年1月(2016年2月1日公開)

課した目標は、翌月に自分で取り下げられています。効果測定のためという理由が添えられてはいますが、宣言が1か月しか持たなかったことは記録のとおりです。

ここで指摘しておきたいことがあります。翌月の号はこの号へリンクを張っていましたが、この号から翌月の号へのリンクは10年間ありませんでした。予想を書いた記事と、その答えが書かれた記事が、片方向にしかつながっていなかったわけです。今回そのリンクを張りました。

「100万PV」がどうなったかは、この連載からは分からない

冒頭の目標はどうなったのでしょうか。ここは慎重に書きます。

この月次連載は、2014年11月分から始まり、2016年5月分(2016年6月4日公開)で終わっています。いまサイトに残っているのは17本で、2015年4月分と6月分は欠番です。最後の号にいたっては、アクセス数の報告ですらなく、体育会のマナーについての読み物になっています。ロシアワールドカップまで2年を残した時点で、記録は途切れました。

したがって、100万PVを達成したとも達成しなかったとも書きません。連載が途切れていることは自分たちのアーカイブで確かめられますが、目標そのものの結末を示す記録にはたどり着けないからです。分かるのは、毎月数字を公開すると決めた習慣が1年半で終わった、ということだけです。

NEWDIHアクセス解析2016年5月(2016年6月4日公開)が、その最後の号です。

なお、当時の記事に載せていた読者数の推移グラフは自分たちのサーバにある自分たちのデータなので、当時の掲載のまま残します。

NEWJI USER推移(2016年1月当時の掲載画像)
2016年1月の記事に掲載した当時のグラフ

10年後に読み返して残るもの

この月の原稿で当たっていたのは、読者は長い記事を嫌うという調査を自分への指摘として受け取り、短くすると宣言した部分でした。その宣言は、アーカイブを数えるかぎり実際に守られています。

外していたのは、翌月の落ち込みの見積もりと、その原因の見立てです。原因は転送設定の欠落という単純なもので、答えは翌月に出ていました。

そして残ったのは、毎月数字を公開すると決めた習慣が1年半で終わったことです。予告した先が実在するかどうかを、10年後に誰かが確かめられる形にしておくこと。この号を読み返していちばんはっきりしたのは、そのことでした。

評価 :5/5。