チームとして共通理解と認識を与えるのは指導者の役割だと考えている選手は、少し考え方を改めたほうがいいかもしれません。
思考が停止している選手は、チームにとってはお荷物です。
チームの課題やビジョンを如何に自分化できるかは、大きく見れば今後のサッカー界を成長・進化させるために必要なことであり、個に落とし込んでも1人の選手として大事なスキルとなります。
クラブに信頼される力とは、言ってしまうと「考える力」と「動く力」に集約されますが、それではアホかと言われてしまいそうなので、もう少し具体的に必要な力を、7つピックアップしてみましょう。
チームからの信頼を得る
チームに必要な選手、スタメンで使いたい選手、必ずベンチに入れておきたい選手、クラブや指導者が描くサッカーは、それぞれの組織の中で定められているかと思います。
選手としては、チームに何を求められていて、自分はどうすればそれに応えることができるのかを考えなければなりません。
そして、同時に理解しておくべきこととして、チームにとって、あなたを必要な選手とみなすためには、あなたに対する信用や信頼があるかないかにつながります。
では選手として信頼を得るために、必要な力はどういうことかを考えてみましょう。
考える力
チームの信頼を得る一つ目の力として、「考える力」が必要な力となります。
考える力とは、その選手の学ぶ意欲と、計画性が重要となります。
思考することは、選手自身の習慣でしか身につけることができないファクターですが、近年の日本サッカーの指導方針のおかげで、今の育成年代でそれをできる選手が増えてきています。
時に思考停止に陥る選手もいますが、それは最悪の結果を引き起こしてしまう恐れがあります。
考える力を養うためには、チームに求められていることと自分ができることの乖離(ギャップ)を知ることから始まりまり、その後、自分の中で蓄積された経験や知識で、どのような思考方法ががあるかを引き出すことができるのです。
ライバルが数多く共存する中で、自分の位置付け、自分に足りない課題を発見することが必須となるのです。
ですので、現状あなたの能力で、
見えること
言えること
今できること
を改めて確認しなければならないことが言えます。
クラブや指導者が求めることを明確にし、仮説を立てて、今できることと照らし合わせ、思考する能力を磨いてください。
勿論、クラブや指導者の求めていることを理解する際に、指導者との会話で現状把握して思考に至るまでの間、お互いに何が課題かわからないままであると、それは不毛な会話となりますので、注意しなければなりません。
動く力
二つ目の力は「動く力」です。自分が動く、もしくは人を動かすためには、周囲の共感を得られるか、あなたが周囲を巻き込む力があるかがポイントとなります。
周囲を取り込むことは、クラブのチームや組織の力と変わり、個だけでなく全体の成長にもつながります。
それには組織への目配せが必要で、あなたがFWであれば点を取ることの役割をはたしましょう。そして、DFには無失点で抑える役割をキチンとこなしてもらうことを、お互いに理解してもらいましょう。
チーム全体を見渡す力、つまり、どんな特徴やスキルを持つ選手がいるかを把握すればいいのです。
仲間を知れば、共闘し合える仲間や得意な分野を理解している仲間を信じて同じ目的を目指せばいいのです。
仲間を把握し、課題を整理し、各々の得意分野を探し、共有してから同じ目的を果たすために動くのです。
説く力
時にチームメイトやクラブ、指導者と衝突することはあります。皆が理解してくれないという不満や話を聞いてくれないという思い込みはやめましょう。
自分だけが課題を抱えていても、意味がありませんし、理解されなければ前に進むことはできません。
どういう説き方をすればいいかと言うと、課題の共通言語を見つけて、認識を合わせることがポイントとなります。
サイドからの攻撃で中の人数が足りなければ、よっぽど中にクロスに対し強い選手がいないのであれば、せめてニアとファーに人数が足りるまでクロスをあげないなど、共通認識を持つことが大事です。
そうすることで得点機会を失うと考えるより、より得点につながる確度を高めると思考の基準を設定するのです。
共感しやすいことを共有し、同じ課題意識を持つことで、自ずと理解が深まってくるので、後は精度やスピードを上げることに注力するだけとなります。
示す力
試合前と試合後の動かぬ数値を軸にすることはとても大事です。
どういうことかと言うと、最近では今シーズンからJリーグでも導入された、得点、ボール支配率、走行距離やスプリント数などを計測するトラッキングシステムなんかがある時代。
勿論育成年代の試合でそれが導入されるのはまだ先の話ですが、実はヨーロッパ市場のアマチュアクラブに対し、トラッキングシステムと同等のシステムサービスを展開している会社が日本にあります。
そのうち日本でも展開されるでしょうが、サービスを展開する会社はあくまでも営利目的なので、市場の大きいところを先行してターゲットにしています。
どのみちそのようなシステム(人力で測るのもいいかもしれない)で、揺るがない事実を元に目論む数字という判断基準を明確化することで、目的自体が明確になります。
良し悪しを判断する闘値が見えるだけでなく、チームのベクトルを合わせやすい状況にすることが可能です。
数字の見方によっては勝ち負けだけを判定する流れになってしまいますが、定性的な評価(判断は定量的評価となるが)、達成感、成功体験を味わえる自信を養える目標設計が必要となります。
まずは数字の論拠と裏付けを武装し、果たすべき目的と役割を明確にすることで、道筋を示すことが可能になるのです。
※少し内容が理解し難いかもしれませんが、要するに言葉よりも数値に語らせることは誰もが納得いくから示せということです。
共有共感させる力
クラブや指導者の言葉を聞いて、課題に対する考え方や、試合展開を共有共感することは、方向性の一致やモチベーションアップにつながります。
チーム全体であるべき姿(理想)を共有するには、あなた自身の夢とロマンが大事です。そして、チームで何かできるか、明確な目標や目的を設定し、共有するのです。
例えばそれは、練習中やクールダウンの時、またはシャワー中や練習帰りでチャリに乗っている時でもいいのです。
夢でもロマンでもいいから語り合う、時にぶつかり合う、そして課題や夢や目標の共有化をして判断基準を明確にし、「なぜ」「なんのため」を理解し合うのです。
決断する、させる力
要するに、覚悟を持てるかでしょう。
それには不安要素の整理ができているかがキーとなります。ちなみに整理とは「いるものいらないものを分け、捨てること」です。
サッカーで言うと、サイドのペナ外付近でドリブルしている時、相手との攻防で前に行くとタッチラインを割るかもしれない、後ろを向くと寄せられるかもしれない、股抜きする
とカバーが来るかもしれないといった不安要素を整理し、でも抜いたれ!ということでしょうか。
「考える力」でも述べましたが、見えていること、言えること、今できることが明確な人であれば、信念や覚悟(やったれ精神)があれば相手を絶対ドリブルで抜こうと考えるでしょう。
試合でこのような場面に遭遇することをイメージして、練習で自分の不安材料をできる限り細かく分解し、「抜けない」明確なポイントを整理することで、試合中でも「抜く」という決断ができるのです。
例えばそれがペナルティエリア内であれば考えている暇はないので、だからこそ不安要素を整理するのです。
とにかく、自信と確信を持って「ぬく」選択をしてみてください。練習で何回抜けたか分析することが望ましく、そうした数字の裏打ちと意志の強さが決断力につながるのではないでしょうか。
勿論、自分の実力を分かった上で闇雲に「抜く」のではありません。
響く力
以上のような感覚でプレーしていると、クラブや指導者はあなたに期待するでしょう。
期待するとは、力を発揮してもらえるかもしれない「効果」を期待しているのです。
チームの課題は尽きることはありません。あなたができることをリンクさせ、これまでの経験、体験したことを反映し成功させるのです。そのために練習があるのです。
成功体験が増えると、自信を持てるようになり、プラスの循環が働きます。そして、チームに影響力を持ち、その影響力は全体の成長(ボトムアップ)と利益(強み)をもたらし、あなたは頼られる存在となるでしょう。
持てる力を発揮して前に進む。持てる力を一つ一つ向上するために練習をする。
きっと、その先には対価とキャリアが待っているでしょう。