毎年ゴールデンウィークの時期に、2015東京国際ユース(U-14)サッカー大会が東京の駒沢陸上競技場他で開催されています。
2015年の大会も過去2連覇を果たしているアルゼンチンの強豪ボカ・ジュニオールやブラジルの名門コリンチャンスのアカデミーが参加していました。
大会は大会名に応じてU-14の大会となっており、世界各国のサッカー強豪国の育成年代に属する選手が、どのようなプレーやサッカーをするのか自分の目で確かめる為、早起きして観に行くことにしました。
本日は、海外クラブの育成年代と日本の育成年代の試合を観戦し、実際に日本の選手が海外の選手と比較した時、日本の選手には何が足りないのか、3つ感じたことを記事にしたいと思います。
サッカーにおける本質的な目的の違い
サッカーの目的とはなんでしょうか。これはその試合におけるクラブの状況によっては異なる場合もありますが、基本的にはゴールを取ること、ボールを奪うことがサッカーの目的であります。
何かの大会で、グループリーグの最終戦で勝利をすることでトーナメントの初戦の相手が強豪となる場合、あえて勝利を追求せず(グループリーグ2位通過など)、逆に引分けや敗戦に持ち込むようゲームをコントロールする場合もないことはありません。
ですが、やはり本来の目的はゴールを取ることに違いはありません。
一試合目に観戦したカードは、ボカ・ジュニオールvs東京都トレセン選抜でした。
14歳といえど全体的に身体が一回り違う(ここでは背丈よりも体つきを指す)ことは一目瞭然でした。
しかし、体つきが違うことは多少なりとも血や遺伝、食生活やトレーニングが影響しており、それは体つきを鍛えるトレーニングで、後々ある程度は補うことが可能となります。
ですので、今回はそのような体つきの差を除外したとして、日本の選手と海外の選手、もしくは日本のクラブと海外のクラブと言う視点でサッカー観戦をして、私が純粋に感じたのはサッカー本来の目的の違いがあるように思えました。
サッカー本来の目的とは冒頭でも述べたように、絶対的にゴールを奪うことです。
一試合目のボカもそうでしたが、二試合目に観戦したコリンチャンスvs東京ヴェルディでも同様に、海外クラブはとにかくゴールに直結するようなプレー(ダイレクトプレー)をしていたように感じました。
一方、東京都トレセン選抜も東京ヴェルディも、相手のプレーに圧倒されている訳でもなく、ボール支配率で負けている訳でもなく、そしてチャンスが全くない訳でもありませんでした。
しかし、歴然と感じた世界との差を言葉で表現するのであれば、「ゴールに直結するプレー」の数に大きな差があることは誰が見ても感じていたことでしょう。
とにかく、日本のクラブはボールを取られないようにすることがサッカーの目的とし、世界のクラブはゴールを奪うことを目的としていて、同じ土俵に立てていなかったのかもしれません。
ちなみに結果は、
ボカ・ジュニオール2-0東京都トレセン選抜
コリンチャンス3-0東京ヴェルディ
となりました。
前を向く力
ゴールに直結するプレーにつながりますが、前を向く力、前を向ける能力にも大きな差があつたように思います。
育成年代では特に「ボールをもらう前の身体の向き」や「turn and man on」を指導されてますが、実際練習や頭の中でイメージできていても、試合でできる選手が日本には少ないです。
今回の観戦でも、前を向くことができる選手が日本のクラブにはいなかったように思います。
※観戦は二試合目のみ
自分の後ろにスペースがあるのに前を向けない選手。
これはボールをもらう前に状況確認ができていない、身体の向きが悪い、そこから練習する必要があるでしょう。
ここではもう一つ上のレベルで言う「前を向く」ことに、論点を当てたいと思います。どういうことかと言うと、相手が後ろにいる状況でしっかりと前を向くことができる、と言うことです。
自分の後ろにガチガチのマークがついている状況で、如何にしてドリブル、パス、シュートを選択することが可能で、ゴールに向かうプレーをすることができるか。それは単純にゴールに向かってプレーすること、すなわち前を向けるか否かです。
どうしても相手が後ろにいる状況で前を向くのには抵抗があります。だからこそ、ワンタッチで折り返したり、ゴールに背中を向けてプレーすることが多くなるのです。
ただ、今大会では海外クラブの選手はボールをキープして味方の上がりを待つことを選択する以外は、後ろに相手がいる状況でも、ほとんど前を向いて次のプレーにつなげていたように思います。
前を向く能力がある選手の特徴として挙げられるのは、以下の通り。
①相手と自分の間に、前を向くためのスペースを作ることがうまい。
②ファーストタッチでボールを足元に止めていない。
③先手を取る。(先に仕掛ける)
個の能力で言うと、前を向く力は育成年代で既に差があるように感じました。
あからさまな違いがあった自己表現力
コリンチャンスvs東京ヴェルディの試合では、なぜかコリンチャンスサポーターが観客席に多数(30名ぐらい?)存在していました。
2012年12月16日、クラブワールドカップの日産スタジアムで生で見た以来でしたが、相変わらずの熱狂振りでした。
東京ヴェルディはと言うと、同年代の中学生が数名タオルを広げ応援していたのが非常に好印象でしたが、コリンチャンスサポーターの太鼓のリズムと太い声にもみ消されていたので、若干寂しさを感じました。
応援一つをとってみても、文化の違いか自己表現力の違いか分かりませんが、ブラジル人はかなり陽気だなと。一緒に応援したくなるほどの陽気振りでした。
表面的ではない応援に関して、今後世界との差を埋めるためには、教育論や血統をいじる必要があるかもしれませんが、今回取り上げたい自己主張は応援の違いではなく、選手の表現力そのものです。
その場面はコリンチャンスvs東京ヴェルディの試合で目の当たりにしました。
コリンチャンス5番の選手が、ラフプレーで2枚目のイエローカードをもらいレッドカードを審判に出され、退場を宣告されました。
しかし、コリンチャンス5番の選手は、「なんで今のがイエローカードやねん!どこみとんねん!俺は退場なんかするかいな!」と遠く観客席から見ていても、明らかに審判に駆け寄って抗議を猛アピールしていたのでした。
そして、仲間になだめられ退場した彼は、泣き喚いているようにも見えたのです。
周りの選手、観客、指導者の目を全く気にせず、自分の納得のいかないことには、どこまでも自己主張を体全体で表現していたのでした。14歳でその表現力は、海外選手の特徴の一つとも言えるでしょう。
その自己表現力が、自然とパスを要求する力、守備でのコーチング力、ゴールに対する貪欲さにつながるのは言うまでもありません。
そして、あくる日、大阪の某施設で開催された小学校3年生の大会を観戦しました。
そこで見た自己主張、自己表現力では、はっきり言って14歳まで成長しても、コリンチャンス5番の選手のようになることはないでしょう。
なぜかゴールを決めても恥ずかしそうにしている選手が多かったのです。
バックネットには少なからず親御さんサポーターがいて、選手よりも(大阪人)サポーターの方が自己主張が強かったように思います。
もしその小学校3年生の大会でゴールを決めた選手が、両手を大きく広げてバックネット側やベンチに向かってゴールの喜びを体全体で表現し、「みたか今の俺のゴールを!!」と主張するならば、今後のサッカー人生がより良い方向へと向かうことは間違いありません。
選手も指導者も羞恥心を黙々と養うのではなく、ゴールを決める喜びを体全体で表現することから始めてみてはいかがでしょうか。
なので、練習メニューにゴールパフォーマンスを取り入れるのは、かなり良いと思いますが、いかがでしょうか。