三菱養和サッカークラブ巣鴨には、中村敬斗と望月ヘンリー海輝が育った記録が残っている。生まれ年は1年違いで、通ったのはジュニアユースとユースの2つの年代だ。
三菱養和サッカークラブ巣鴨で育った、1学年違いの2人
FC町田ゼルビアの公式サイトが望月選手の所属チーム歴を出している。
上福岡サンダース→大宮アルディージャU-12→三菱養和サッカークラブ巣鴨ジュニアユース→三菱養和SCユース→国士舘大
FC町田ゼルビア公式「望月 ヘンリー海輝」
日本サッカー協会が2019年に出したU-20日本代表の選手情報には、中村選手の当時の経歴がある。
柏イーグルスTOR’82→柏レイソル U-12→高野山サッカースポーツ少年団→三菱養和サッカークラブ巣鴨ジュニアユース→三菱養和サッカークラブユース→ガンバ大阪
日本サッカー協会 U-20日本代表「中村 敬斗」選手情報(2019年5月20日現在)
中学年代と高校年代、2つとも同じクラブを通っている。ただし分かれ方ははっきりしている。同じ選手情報が、中村選手のプロ入りをこう書いている。
高校3年生で三菱養和SC在籍時、ガンバ大阪とプロ契約を結んだストライカー。
日本サッカー協会 U-20日本代表「中村 敬斗」選手情報(2019年5月20日現在)
望月選手は国士舘大へ進み、4年後にプロになった。同じクラブで育った1学年違いの2人が、まったく違う入口からプロに入っている。
「絶対にそうだと思う」、大学を経てプロになった選択
2024年8月、中村選手と望月選手を交えた対談で、望月選手が大学を経てプロになった選択が話題になった。
では、望月選手が大学を経てプロになったのは良い選択だったんでしょうか?
絶対にそうだと思う。大学サッカーもレベルが高いし、社会的な経験も積める。特に望月みたいに、自分のペースで成長できる環境は大事だよ。
2024年8月1日公開の対談記事
確かに大学での経験は大きい。そこで学んだことが今のプロでのパフォーマンスに生きているのかもしれない。
2024年8月1日公開の対談記事
そのやりとりから2年が経った。中村選手と望月選手がそれぞれどうなったかを、公式記録から並べる。
中村敬斗は、ワールドカップで得点したランス史上5人目の選手になった
2026年5月、所属するスタッド・ドゥ・ランスがワールドカップ招集を伝えた。
International depuis 2023, le Rémois de 25 ans totalise 22 sélections pour 10 buts avec le Japon.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2026年5月15日)
2023年から代表に入り、当時22試合10得点という記述だ。6月、クラブは自分たちの歴史の話としてこう書いた。
Keito Nakamura est devenu le cinquième joueur du Stade de Reims à inscrire un but en Coupe du monde.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2026年6月15日)
ワールドカップで得点したランスの選手として5人目だという意味だ。同じリリースが、その4人の名前を挙げている。
rejoint un cercle très fermé composé de Raymond Kopa, puis de Just Fontaine, Roger Piantoni et Jean Vincent, tous buteurs lors du Mondial 1958 en Suède.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2026年6月15日)
レイモン・コパ、ジュスト・フォンテーヌ、ロジェ・ピアントーニ、ジャン・ヴァンサン。4人とも1958年スウェーデン大会の得点者だ。クラブは大会を通じての起用にも触れている。
Pour ce match contre la Suède, comme depuis le début du Mondial, Keito Nakamura était titulaire dans le couloir gauche nippon.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2026年6月26日)
日本の4試合は、日本サッカー協会の2026年の日程表で確認できる。オランダと2-2、チュニジアに4-0、スウェーデンと1-1、続くブラジル戦が1-2。日本代表での通算は29試合11得点で、こちらも注意書きが付く数字だ。
日付を写すときは、どちらの資料を見ているかに注意したい。協会の日程表は日本時間で、同じ協会の選手ページは現地の日付だ。オランダ戦は日程表では6月15日、選手ページでは6月14日と書かれている。1日ずれているのではなく、時差の扱いが違うだけだ。
望月ヘンリー海輝は、J1優秀選手賞を受け、代表でも出場を重ねた
Jリーグ公式・FC町田ゼルビア公式・日本サッカー協会の3つから望月選手のプロフィールを引く。初出場と初得点はJリーグでの記録だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | 望月 ヘンリー海輝(MOCHIZUKI Henry Heroki) |
| クラブ | FC町田ゼルビア・背番号6 |
| 登録区分 | Jリーグ公式は「DF」/日本サッカー協会は「MF/FW」(後述) |
| 生年月日 | 2001年9月20日 |
| 出身地 | 栃木県 |
| 身長/体重 | 192cm/81kg |
| 初出場 | 2024年2月24日 |
| 初得点 | 2025年5月7日 |
| 受賞 | 明治安田J1 優秀選手賞 2025 |
| 代表通算 | 5試合・1得点 |
| 出典 | Jリーグ公式の選手ページ(更新日2026年8月14日)/FC町田ゼルビア公式/日本サッカー協会の選手ページ |
| 確認日 | 2026年8月18日 |
2024年8月の対談で名前が挙がった選手が、その2年後にはリーグの優秀選手賞を受け、日本代表として5試合に出て1点を取っている。
代表の数字には注意書きが付く。協会の選手ページに並ぶ試合の一覧は、出場した試合だけの一覧ではない。
※下記には登録された(招集された)試合も含まれますので、出場した試合のみではございません。
日本サッカー協会 SAMURAI BLUE「望月 ヘンリー海輝」選手ページ
望月選手のページに並ぶ試合は8件だが、出場試合数の欄は5だ。行の数と出場試合数は一致しない。
2026年8月、2人ともサブに回っている
ワールドカップで得点した選手も、J1の優秀選手賞を受けた選手も、2026年8月にはピッチの外にいる時間のほうが長い。
中村選手のランスは、2026/27シーズンをリーグ・ドゥ(フランス2部)で戦っている。クラブが公表している第2節の招集リストで、中村選手は非招集者の中の「監督の選択」に分類されている。
Choix : Sergio AKIEME, Keito NAKAMURA, Jordy SIEBATCHEU, Reda KHADRA, Amine SALAMA, Oumar DIAKITE, Yohan DEMONCY.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2026年8月13日)
8月8日の第1節も同じ分類だった。けが人の欄ではないので、体の問題ではない。クラブの2026/27シーズンの選手一覧には、いまも攻撃の選手として名前が載っている。前年に休養から復帰したときのリリースでは、背番号も添えられていた。
Le Stade de Reims se satisfait de pouvoir compter sur le talent de son numéro 17 pour la suite de la saison.
スタッド・ドゥ・ランス公式(2025年9月11日)
望月選手のほうは、2026/27シーズンの出場が2試合、いずれも途中出場だ。
2026/27シーズンのここまで
Jリーグ公式の選手ページの2026年8月14日更新時点で、望月選手の2026/27シーズンの記録はこうだ。大会はどちらも明治安田J1で、日付はすべて2026年。
| 日付 | 試合 | 出場時間 |
|---|---|---|
| 8月8日 | FC東京に5-1で勝利 | 11分 |
| 8月15日 | 千葉に4-0で勝利 | 2分 |
どちらも途中出場。累計は出場2試合・0ゴール・0アシスト、出場時間は11分と2分だ。同じページの詳細スタッツでは、総スプリント回数12、デュエル勝利総数1、総走行距離3.2km、空中戦勝利数1となっている。シーズンが始まったばかりの数字だ。
このスタッツの範囲にも但し書きが付く。
※本スタッツは、リーグ戦における当該シーズンの成績を表示しています。
Jリーグ公式「望月 ヘンリー海輝」選手ページ
カップ戦は入らない。加えて、同じ「2026」でも「2026特別シーズン」と「2026/27シーズン」で別のデータが返ってくることがある。シーズン名と更新日を必ず確認したい。
ポジションの表記は、団体ごとに粒度が違う
Jリーグ公式の選手ページは、望月選手を「DF 6」と表示する。同じサイトのFC町田ゼルビアの選手一覧を見ると、選手はGK4人、DF9人、MF10人、FW7人に分かれていて、2つをまたぐ表記は1つもない。つまりJリーグは4つの箱を使っている。日本サッカー協会の選手ページの見出しは違う。
MF/FW 望月 ヘンリー海輝
日本サッカー協会 SAMURAI BLUE「望月 ヘンリー海輝」選手ページ
協会の選手ページを28人分開いて区分を数えると、こうなる。
| 区分 | 人数 | 確認できた選手の例 |
|---|---|---|
| GK | 3 | 鈴木 彩艶、権田 修一、川島 永嗣 |
| DF | 9 | 冨安 健洋、谷口 彰悟、長友 佑都 |
| MF/FW | 16 | 遠藤 航、上田 綺世、久保 建英 |
「MF」だけの選手も「FW」だけの選手も0人だった。前線の選手も中盤の底の選手も、まとめて「MF/FW」に入る。協会は、GKか、DFか、それ以外か、の3つでしか分けていない。同じ協会の中村選手のページを見ても、見出しは変わらない。
MF/FW 中村 敬斗
日本サッカー協会 SAMURAI BLUE「中村 敬斗」選手ページ
左サイドを主戦場にしてきた選手も「MF/FW」だ。「MF/FW」は使い方を表す言葉ではなく、MFとFWをひとまとめにした箱の名前にすぎない。
そのうえで、この食い違い自体は残る。協会には「DF」の箱があり、望月選手はそこに入っていない。192cmの選手をJリーグは最終ラインの区分に置き、協会は最終ラインの区分に置いていない。読み取れるのはここまでだ。どちらが正しいという話ではない。
そもそもサッカーの競技規則には、ゴールキーパー以外のポジションという概念がない。「センターバック」も「ボランチ」も規則の言葉ではなく、チームの約束事の呼び名だ。だから団体ごとに箱の数が違っても、どちらも間違いにならない。この話はポジション転向の記事とプレースタイルの記事で詳しく扱っている。
192cmの選手を、2つの団体が別々の箱に入れている。それが実際に起きていることだ。
大学からプロになる道は、例外的な迂回路ではない
関東大学サッカー連盟が公表している「2025年度卒業生(または2026年加入選手)・進路先(クラブ)一覧」には85人の名前がある。内訳はJ1が21人、J2が28人、J3が35人、デンマークのクラブが1人で、23の大学から名前が挙がっている。Jクラブに限れば84人だ。集計の方法は大学サッカーからJリーグへの進路の記事にまとめている。
同じページには、この一覧の下にもう1つ別の表がある。「2026年度卒業予定選手 プロクラブ加入内定一覧」で、こちらはまだ在学中の14人(J1が8人、J2が6人、9の大学)だ。2つの表は卒業する年が違う集団で、まとめて数えると別々の集団を1つにしてしまう。
この一覧には内定のリリース日も入っていて、いちばん新しいものは2026年4月だ。クラブが発表するたびに行が増えるので、数える日によって答えが変わる。
関東の連盟だけの集計で、関西や東海などは含まれていない。それでも1つの地域だけで毎年これだけの人数がJクラブへ進んでいる。大学経由は例外的な迂回路ではなく、標準的な入口のひとつだ。
一方で、高校からそのままプロ契約を結ぶ道も制度として整備されている。そちらは高校生プロ契約の記事に書いた。ユースからそのままトップチームに上がる道もある(川井大地/杉浦誠黎)。どれが良いかは、比べる話ではない。入口が複数あって、入った後にもう一度競争がある、というだけだ。
「お互いに成長して再会できるのは特別なことだ」
2024年8月の対談は、こんな言葉で結ばれていた。
お互いに成長して再会できるのは特別なことだ。これからの二人の活躍にも期待したい。
2024年8月1日公開の対談記事
私も応援します!彼らのプレーを見るのがますます楽しみになりました。
2024年8月1日公開の対談記事
次回も3人がどんな話をしてくれるか楽しみですね!ぜひご期待ください!
2024年8月1日公開の対談記事
その「これから」は、もう2年分進んだ。中村選手はワールドカップで得点し、望月選手はJ1の優秀選手賞を受けた。そしていま、2人ともクラブでは出番を減らしている。三菱養和サッカークラブ巣鴨で育った1学年違いの2人の歩みは、まだ途中だ。
