週に三回グラウンドで子どもと向き合っているあの大人は、誰と契約してそこに立っているのか。すぐに答えられる保護者は、たぶんそんなに多くない。
南アフリカサッカー協会が10月15日、全国のアカデミーに共通の基準を置く取り組みを始めると出しました。FIFAのタレント・ディベロップメント・スキームの支援を受けていて、アカデミーの運営をどう評価して認めるかを決めていく。基準として並んでいるのはガバナンス、セーフガーディング、指導者の水準、施設、選手の福祉、長期的な育成。あわせて作業部会を置き、技術の専門家、アカデミーの代表、そしてセーフガーディングの専門家を入れると説明しています。ダーバンが10月16日、ポートエリザベスが18日、ケープタウンが20日と、州ごとに集まる日まで先に出ている。
引っかかったのは、作業部会の顔ぶれにセーフガーディングの専門家が一つの職として並んでいるところ。指導の専門家と同じ行に、子どもの安全を見る人の席がある。アカデミーを認めるかどうかを決める話の、いちばん最初の段階で。
日本でこの語にあたるものを、まとまった形で読んだのはどこだったかと思い返すと、出てくるのは平時の案内ではなく、一件の公表文でした。
八月四日の一枚
ロアッソ熊本が2026年8月4日に出した文章。アカデミーに所属していた元業務委託契約スタッフ1名が、在籍中の事案により逮捕されたことを公表したもの。事実確認と精査の結果、重大なコンプライアンス違反と判断し、2026年6月24日付で契約を解除した、と書かれている。関係者のプライバシー保護と二次被害の防止を最優先する観点から詳細は差し控え、憶測や関係者の特定につながる発信、誹謗中傷を控えるよう求めている。
そして、ここからが長い。当該スタッフ個人のみの問題として捉えることなく、組織としての管理・教育体制についても検証する。外部専門機関の協力を受けた役職員・スタッフ対象のコンプライアンス教育。服務規律・行動規範の再確認。相談・報告体制の見直し。管理監督体制の強化。
個人に閉じない、二次被害を止める、組織の側を点検する。この三つで書かれている文面は、子どもを預かる組織が何かを外に出すときの国内の基準線になっていると思う。
「業務委託契約スタッフ」という六文字
ただ、この一枚を読んで一番あとに残ったのは、対応の四項目ではなく、肩書きのほうでした。業務委託契約スタッフ。
アカデミーの現場が、クラブの社員だけで回っているわけではない。正社員と業務委託。少なくとも二つの契約の形がグラウンドに混ざっている。それが文字になって外に出てくる場面は、いまのところ、こういう一枚しかない。
日本の育成年代は、指導する人の資格については相当こまかい。JFAのライセンスには級があり、ゴールキーパーのライセンスは別建てで、アカデミーダイレクターにProライセンス保持者が就く例も公表されている。県協会がJクラブのアカデミーと組んで、U-12とU-15に分けて指導者の研修を開く。ナショナルトレセンU-15は年度内で四回目、五回目と回次が振られ、高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグは県の1部からプリンス、プレミアまで階層で並ぶ。誰がどの資格で、どの年代の、どの段に立つのか。そこは本当によく整えられている。
その人がクラブと結んでいる契約がどちらなのかは、資格の級とは別の話。そして子どもから見れば、どちらであっても目の前に立っている大人は同じ一人。
順番が逆になっている
南アフリカは、アカデミーを認めるかどうかの話を始める段階で、安全を見る専門家を部会に座らせた。何かが起きる前の席。日本は、起きたあとに出す文章の型のほうが先に整った。外部専門機関を入れる、相談と報告の経路を見直す、個人の問題にしない。このあたりは、もう複数のクラブが同じ骨格で書けるところまで来ている。
どちらが優れているという話ではなく、日本に残っている仕事がどこかという話。あの三点を、事案が起きたあとではなく、年度のはじめに出す平時の文書のほうへ移せるかどうか。新しいコーチが着任しましたという人事の案内に、氏名と担当カテゴリと保有ライセンスが並ぶのと同じ高さで、困ったときに誰にどう言えばいいのかが一行あるかどうか。
2種登録や特別指定のような手続きの文書を読むと、日本の制度は同意と費用と責任の所在を分けて書くのがうまい。同じ書き方で、子どもの安全も書けるはずだと思っている。
次にアカデミーのスタッフの人事が流れてきたら、名前と担当年代の下まで目を落として、相談の宛先がどこに置かれているかを先に探す。
出典: www.safa.net(2026-10-15)