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JリーグチケットはW杯相当の気合を出せば売り切れる


ワールドカップ、4年に一度の世界を取り巻く大イベントであり、世界一のイベントと言っても過言ではないでしょう。

普段からサッカーを観ているサッカーファンも、年間1試合見るか見ないかのライト層も、そして全くサッカーに興味のないサッカー素人からしても、この4年に一度のイベント期間は特別な時間を過ごすこととなります。

ワールドカップを観る側の立場の人が圧倒的に多いですが、Jリーグクラブのスタッフやサッカーの仕事に興味を持っている学生などは、ワールドカップを運営する側の立場は、どういう気持ちなのかについても考えるかもしれません。

そういう思考があれば、その大会の全貌が何となく見えるだけでなく、1試合1試合の大事さ、キックオフまでの会場の準備、当日の観客の入り、グッズの売上、テレビの視聴率、後半アディッショナルタイムの1分間、そしてチケットの売上状況など、どれもミクロ単位まで結果を問われる戦場だと言うことも十分理解できるかもしれません。

本日は、そんな4年に一度のワールドカップで闘う1試合90分と毎週開催されているJリーグ1試合90分の違い、特にチケットの販売状況やスタジアムの満席具合について考えてみたいと思います。


希少性価値について



一消費者としてはなんとしても手に入れたいワールドカップチケット。強豪国同士の戦いではプレミアがつくチケットは当たり前。それでも観に行きたい、強豪国同士の戦いでなくとも観に行きたい。こんな思いを抱く人は多いのではないでしょうか。

ワールドカップには観る人にとって特別な気持ちが自然と生まれるイベントとなっています。

なぜなら、4年に一度と言う希少価値があり、W杯!4年に1度では長すぎるが絶妙でもあるでも述べたように、その絶妙な待ち時間が観に行きたいという意欲や全力で応援したいと言った気持ちにさせてくれるのです。

私の知り合い(今年60歳)は、例え会社で大事な仕事があろうが、歳をとり重役を担おうが、ワールドカップ期間中は会社へ長期休暇(有給をフルに使う)の申請を出し、1982年スペイン大会から今まで、一大会も欠かさず現地に足を運んでいるようです。

彼は元々サッカーを好きではなかったようですが、海外との取引が多い仕事に就き毎日のように外国人を相手にしている中で、サッカーは商談の席で使えるナイスツールでもあるのように、「サッカー」が海外ビジネス取引の糸口となり、サッカーの中で一番のイベントであるワールドカップの虜になってしまったのです。

4年に一度のワールドカップには、サッカーに興味がなかった人の人生を180度変えてしまうような魅力とパワーが秘められています。

Jリーグの試合でも、至るところで希少性価値を取ってつけたように「○○ダービー」などを謳っていますが、実際のダービーに希少性価値の有無を少し見てみたいと思います。

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参考:Wikipedia

多すぎてよく分かりません。もはや、希少性価値という概念はないのかもしれません。
ちなみに過去のJリーグ観客動員記録で上位を見てみると以下のようになります。

2013Jリーグ ディビジョン1 第33節
横浜F・マリノスvsアルビレックス新潟
日産スタジアム
62,632人

2006Jリーグ ディビジョン1 第34節
浦和レッズvsガンバ大阪
埼玉スタジアム
62,241人

2007Jリーグ ディビジョン1 第33節
浦和レッズvs鹿島アントラーズ
埼玉スタジアム
62,123人

2008Jリーグ ディビジョン1 第1節
横浜F・マリノスvs浦和レッズ
日産スタジアム
61,246人

2001Jリーグ ディビジョン1 2ndステージ 第8節
浦和レッズvs 横浜F・マリノス
埼玉スタジアム
60,553人

残念なことに、上位5には「ダービー」という試合は記録されておらず、浦和レッズもしくは横浜マリノスvs強豪クラブ(その年の上位クラブ同士の対戦)に期待をするしかないのでしょうか。

上記はあくまでもスタジアム(箱)の席数が他を上回ることで動員数の上位を占めていることも一つの要因だと言えますが、観客動員数を高めるための施策として「希少性」というキーワードについて考えた場合、おそらく「ダービー」という手はもはや通用しなくなっているのではないでしょうか。

Jリーグがワールドカップなみの希少性価値を見出すには、もう少し時間がかかりそうです。


トップレベルのパフォーマンス



ワールドカップについては、もはや説明不要でありますが、各国のスーパースターが国を代表して戦う大会となっています。

ワールドカップのチケットは抽選制ですが、予選グループの試合でいうと対戦カードが予めわかっている状態です。ですので、狙いを定めてチケットの応募や購入ができるのです。しかし、予選を突破した時点で決勝トーナメントになると、どこの国が勝ちあがってくるかは不明であり、目に見えない対戦カードにお金を支払うと言うことになります。


例:ブラジルワールドカップの日本戦チケット

ただ、決勝トーナメントでもベスト4で言えばどこの国が勝ちあがってもトップレベルのパフォーマンスを観戦できることは間違いありません。時に予想もしていなかった国が勝ちあがり、そんな対戦カードを望んでいなかったと失望する時もありますが、ワールドカップを生で観戦できたと言う事実にお金を払っても満足するかもしれません。

では、Jリーグのヤマザキナビスコカップで決勝トーナメントの対戦カードが決まっていないのにも関わらず、チケットが完売することはあり得るのでしょうか。おそらく答えはノーです。

日本国内の大会では、どんなクラブが勝ちあがろうが観に行きたいと思ってチケットを買う人は極少と言ってもいいでしょう。その殆どが応援するクラブの結果をみてチケットを購入することがほとんどです。

その理由として、まだまだナビスコの決勝や天皇杯の決勝に進んだからと言って、それがその年の国内におけるトップレベルのパフォーマンスかと言えばそうではないからです。

事実、J2のクラブが天皇杯を優勝することや、J1で下位のクラブが決勝に進むと言ったことがあるのです。まさしく、日本のサッカーはトップレベルが均衡しているという表現ではなく、クラブのノリと勢いが勝敗を決めると言っても過言ではないでしょう。そう言う意味では、ワールドカップは番狂わせであってもトップレベルのパフォーマンスが観られるということではハズレはないかもしれません。

Jリーグも昔は、トップレベルの外国人が在籍していました。

ゲーリー・リネカー
ギド・ブッフバルト
ダニエレ・マッサーロ
サルヴァトーレ・スキラッチ
ジェラルド・ファネンブルグ
フレドリック・ユングベリ
フリスト・ストイチコフ
ドラガン・ストイコヴィッチ
ジーコ
ドゥンガ
ジョルジーニョ
カレカ
セザール・サンパイオ
レオナルド
ディエゴ・フォルラン
パトリック・エムボマ

最後のエムボマに関しては規格外の選手でしたが、このような海外選手の獲得によるJリーグの底上げは必要不可欠であり、フッキやフォルランに「Jリーグダメ」と言われる環境を変えていく必要があるのではないでしょうか。

トップレベルの試合、トップレベルのサッカー、トップレベルのパフォーマンスを観たいがために人が集まり、チケットが売れるのでしょう。


残席ゼロ、売りきるいう当事者意識



4年に一度。それは売り切らなければならない責任感とプレッシャーと色んな要素が入り混じっているのではないでしょうか。

以下は2006年ドイツワールドカップのチケット配分です。

060807_02※1:FA= Football Association 各国サッカー協会(各FA 8%ずつ)
※2:観戦チケットに、食事やカクテルなどの「ホスピタリテイ」をつけて販売したプログラム。スイスの代理店、ISEが販売した。

出典:http://www.nikkeibp.co.jp/

かなり関係者(スポンサー含む)への配分が高い中、一般客が争うキャパは31.7%と、決してそこまで大きな配分がされてはいません。だからワールドカップチケットはプレミアがついても売り切れるのかと思いきや、Jリーグでもパーセンテージは異なりますが、総じて関係者枠があるのは否めません。

明治安田生命がJリーグ各会場に社員や地域住民を動員…3月22日までに1万人超

(土日に強制出勤のような観点は一旦置いておいて)このようなスポンサー枠の他にもキャンペーン枠やホームタウン招待客、そして実は数が多い選手シート(実際には売上計上だが割引枠である)などがありますが、それでも一般客への割合が高いJリーグでは、チケットを売り切るのは決して楽な仕事ではありません。

ですので、考えようによっては今の販売方法、そして営業スタンスでは、関係者枠を埋めるどころか一般席の大半が空席となっているのが現状なので、もしかしたらJリーグチケットを扱う当事者の意識がワールドカップのように4年に一度ではなく、隔週で課せられるプレッシャーがあるがために、本来巻くはずの種も巻ききらずに収穫時期が来てしまい、見えている芽だけを摘んでいると考えられるのではないでしょうか。

種(潜在顧客)は巻き続ければ必ず芽(新規顧客:リピーター)はでます。種の数を増やせば増やすほど芽は沢山でるのです。だからこそ、その種が芽を出すために、プランター(マーケット)と水(告知)と太陽の光(営業マン)をうまく活用する必要があります。

ここで言う鉢とは、種が芽になるためのマーケットです。枝豆で言うと…よく分かりませんが、具体的には営業先と言えるかもしれません。営業先にはどんな種があるか、まずは具体的に理解するためにも、まずはどんなプランターがあるかを把握しなければなりません。

Jクラブは果たしてホームタウンに住んでいる住民の、個人単位での情報や特性をどこまで把握できているでしょうか。見方によれば、ホームタウン出身者を対象として、全国にまでマーケットを広げることができるかもしれません。

次に大事なことは水、すなわち告知です。人は忘れやすいもので、どんなに大事なことでも忘れることがあるのです。私の友人は就職活動の最中、全国でたった一人選ばれた者として、ある企業へと最終面接に呼ばれました。しかし、彼は面接の当日にその日が試験だと言うことを忘れてしまったのです。だからこそ、試合も同じで、告知をし続けなければ誰もが忘れる可能性があるのです。

むしろ、潜在顧客に至っては、耳にタコができるぐらい水(告知)を与えて反応をみるのもいいかもしれません。今の時代、メーリングリストのメール上に貼り付けたURLだけでも、仕掛けたアプローチに対する反応を見える化することができ、潜在顧客を顧客へグレードアップする方法なんていくらでもあるのです。

そして、最後に太陽の光である営業マンですが、太陽の光は広い範囲で常に光を当てなければなりません。集中して光を当て続けると、種が腐ってしまうことがあるので、時に日陰に隠れて暗闇を与えることも必要かもしれません。

おそらくそこは営業マンのセンスでしょう。ただ、1年間でホームゲーム17試合×ホームスタジアムの一般席数だけを埋めれば万々歳ということで、戦略的な取り組みも必要になるのは間違いありません。コアサポーターは自由席を既に指定席かのように陣取っています。

ようするに、バックスタンド・メインスタンドの指定席を本当の意味での指定席、すなわち指名席にするぐらいの勢いがなければ空席も埋まらないかもしれません。

ワールドカップと異なる環境で売り切らなければならないJリーグチケットですが、そもそもワールドカップのような気合いを入れれば売り切れるのではないでしょうか。

Jリーグチケットを扱う当事者の意識一つで日本サッカーが文化になる日がくると信じています。

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