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プロか引退か、大学生選手の決断


Jリーガーの契約更新の時期が迫っています。その契約交渉が行われている陰で、多大なる影響を受けているのは大学生選手で進路を迷っている選手です。


どこか自分が納得するクラブに行きたいと言う選手の想いと、クラブが来シーズンに向けて誰を残し、また新たな戦力として誰を加えるかを最終的に決めた後で、その大学生選手を取るか否かを検討することが多いからです。


クラブが優先するのは現役Jリーガーで他クラブの契約が切れる選手、または出場機会の少ない選手を狙うのは当然のこと。大学生選手のメリットとしては、比較的安い年棒で即戦力ともなりうる可能性のある選手と契約を交わすことができるといったことぐらいでしょうか。


ただ、既に来季の加入内定している大学生選手とは違い、まだ具体的に進路が決まっていないが有望な大学生選手は、自分の進路を「引退」か「現役続行」かを決めるほどの人生の岐路に立たされているのは紛れもない事実です。


本日は、そんな大学生選手の進路について少し考えてみたいと思います。


練習生として参加できるクラブがあれば必ず参加したほうがいい

某日、ガンバ大阪ユースの後輩で現役大学四回生の選手と食事をする機会がありました。その選手はガンバ大阪に入りたい気持ちが人一倍強かったのですが、その裏で名古屋グランパスエイト、そしてヴァンフォーレ甲府の2クラブから練習参加のオファーを受けていました。


彼はこれまで一途に目指していたJリーグという舞台に挑戦せずに潔くあきらめて就職と言う選択肢を選ぼうという決断(引退)をするか、それとも本命ではないクラブの練習参加をするかどうか迷っているとの相談を受けました。


ちなみに彼は本命のガンバ大阪とは既にコンタクト済みで、強化本部でスカウトを担当している朝比奈伸氏(ガンバ大阪・サガン鳥栖などでプレーしたDFの元プロサッカー選手)から「練習参加を本気で望むなら、その環境を提供する」という回答を受けています。


ただ、そのクラブの強化全体を指揮している強化本部長である梶井勝志氏は「本気で獲る気持ちがあるなら練習参加をさせてもよいが、最終的に獲らないのであれば練習参加は認めない」と、現実的で非常に厳しい回答もしているようです。


選手当事者の立場からすると、そんな状況下で本命のガンバ大阪の練習参加をするかどうかは非常に酷な判断かもしれません。しかし、練習参加できる機会やチャンスが目の前にあるのにも関わらず、参加しないことは、今後の人生で後悔する時がくるのではないかと思います。


なぜなら、何かをやって後悔するよりも、やらなくて後悔するほうが一生引きずってしまうことは容易に考えられるからです。


それは、既に練習参加の正式なオファーを受けている本命ではない他クラブでも同じことが言えます。本気でサッカーをしてきた選手にとって、Jリーグはサッカー選手としてあくまでも通過点の一つであり、そのチャンスを得られる選手は大学生選手の中でも数少ない存在でもあります。


サッカー選手である以上、より高いレベルでプレーする環境を求めるのは当然のこと。そして、それがアマチュアからプロフェッショナルというカテゴリに変わるとき、日本人選手であれば、Jリーグに加入することが一つの目標になることが一般的です。


これまでにも、練習生から日本代表、またはクラブのキャプテンを務めるまでのぼりつめた選手も存在しています。むしろ、スカウトが来季構想の選手で注目度No.1として自信をもって獲得した選手でも、ほんの数年で契約が更新されなかった選手が意外と多いことも事実です。


彼の判断基準は大手の有名企業かJリーグか。大手企業には既に内定をもらっていて、将来的に勤め続ければ年収1000万を超えるのはほぼ確実な環境。一方、正式なオファーは受けていないが、目の前にあるチャンスを選択できる立場でもある環境。


夢か現実か。


先が見えていない不確実な環境を選択するのか、またはレールにしかれた一般的な社会人としてサッカーを諦めるのか。選手当事者の立場で考えれば、今この状態が非常に悩ましい状況であることが分かるかと思います。


一生に一度、今この瞬間をどう生きるか

最終的には自分の責任で、自分の判断で、どのような道を選択するかを決定するのは、誰のどんな人生でも変わることはありません。他人に何を言われようが、結局は自分の人生なので、自分がこれまで決断してきた連続が今まさに生きている等身大の自分の人生です。


過去に同じような境遇を経験してきた大学生選手がいることも知っていて損はありません。そのような人は過去にどのような選択をして、今どのような人生を歩んでいるのか。同じような境遇の時にはどのような気持ちで決断したのか。また、その決断はどういう結果を経て、今はどのように感じているのか。そんなことを聞く機会があれば是非聞いてみてください。


一つだけ言えることは、どんなカテゴリであってもサッカー選手として現役続行を選択した人の中で、人生の選択をミスしたという人には出会ったことがありません。そして、逆にサッカーを諦めた人が、いつまで経ってもサッカーに未練を残しながら、今の人生を歩んでいる人がいることも否めません。


ある選手の話です。


彼は自分が思う実力と現実に起きている結果を受け入れることができないまま、サッカーの道を諦め現役を引退した過去がありました。しかし、引退してもずっとサッカーを忘れることができぬまま、約5年の月日をアルバイトをしながら料理人として、なんとなく日々を過ごしていました。サッカーと離れてからは身体をろくに動かすこともないまま、毎日厨房に立ちながらもサッカーに対する強い気持ちだけが残っていたのです。


そして、ある日突然彼は決断したのです。


「自分の中でサッカーとの縁が切れていないから、他の人生を選択することに対して積極的になれない」


そう言い切った彼は、なんと約5年のブランクを経ていたのにも関わらず、横浜Fマリノスのプロテストへの参加を表明しました。


そして、プロテストを実際に受けることになりましたが、当然ながら結果は不合格。しかし、彼はテストを受けた後にこう言ったのです。


「自分の中でサッカーを本当の意味で引退することができた。これからの人生は別の選択肢を前向きに考えることができそうだ」


そんな彼は今、世界各国で日本大使館専属の料理人として世界を渡くほどの腕利きの料理人として人生を歩んでいます。


もし、自分と同じ境遇の人が周囲に存在しないというのであれば、NEWJIが同じような境遇を経験した人をご紹介させて頂きます。


人生の選択で迷ったときに救われる言葉

世界を基準として考えた場合、大学を卒業する時点の22歳でプロフェッショナルになるということは、決して早いとは言えません。しかし、最近でいうとマインツに所属している武藤嘉紀やインテルに所属する長友佑都は、周知の通り大学出身の選手です。


日本代表の中心選手にまで成長し、普段から世界レベルのサッカーを経験している彼らは、大学時代にずば抜けた選手であったとも言い切れません。しかし、彼らには共通する点があったことも事実です。


それは、大きな夢や希望があったこと。自分の中でどうなりたいかが明確であったこと。そして、それは日本だけにとどまらず世界に目を向けていたことです。


世界一になるには、世界一になりたいという気持ちが、世界一になった時になれる。


彼らはそのような気持ちを持っていたのではないでしょうか。今もそんな気持ちを持ち続けてサッカーを純粋に楽しんでいるはずです。そのような少年のころに抱いたピュアな気持ちがなければ、例えJリーグを選択してJリーガーになれたとしても、先は長くはないかもしれません。


有望であるにも関わらず、クラブから正式なオファーがまだない大学生選手が、Jリーグのクラブを選択するのか、または一般的なサラリーマンとして企業を選択するのかは、先ほども述べましたが最終的に自分で決断することです。


これまでの話でも分かるかもしれませんが、プロフェッショナルのサッカー選手を選択できるのは「今」、まさに「今」しかありません。その瞬間を逃した場合、ほぼプロフェッショナルとしてのサッカー選手の道はあきらめざるを得ないでしょう。


一方、サラリーマンという選択肢はいつでも選択することが可能です。大手・中小零細の規模を自分で選ぶには、一般的な大学新卒生と比較した場合、若干選択肢が少ないかもしれません。しかし、Jリーグで活躍した選手が引退し、広告代理店大手の電通に入社して1000万以上稼いでいる人がいることも事実です。サラリーマンはその気があれば、いつでも誰でもなれる万能な職業です。


そんな自分の人生の岐路に立っている大学生選手に以下の言葉を送ります。


諦めなければ無限の可能性、潔くやめれば無数の可能性。


さぁ、決断の時。今後も今までに描いてきた自分の夢に向かってサッカー人生を謳歌するのか、それとも周囲の目を気にしながらサラリーマン人生をこなすのか、自分の決断で自分の人生を歩んでください。

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