「10日間」。
ゲキサカが9月に出した記事に、そう書いてありました。静岡学園高3年のFW坂本健悟選手が8月にポルトガルへ渡り、同国2部リーグのAVSで練習に参加した期間です。入ったのはアンダーカテゴリーではなく、トップチームのほう。坂本選手は大阪市ジュネッスFCの出身で、インターハイの得点王、2025年のプレミアリーグWESTでも起用されている。そして帰国後の公式戦は2試合で6得点。
引っかかったのは得点のほうではなく、10日という数字のほうでした。
10日は、何が入る長さなのか
10日を一週間ちょっとと読むと短く見える。けれど日本の高校生の8月に10日を空けるというのは、そういう話ではない。高校年代の最上位リーグは前期と後期の間に夏が挟まっていて、インターハイが終わって、選手権の予選が始まるまでの、ちょうど切れ目の時期にあたる。この型の報せが8月に集まるのは偶然ではないと思う。
そして渡った先がトップチームだった、ということの意味。2部リーグのトップチームに18歳が10日間混ざるというのは、同じ年代の相手とやるのではなく、生活のかかった大人の中にポンと置かれるということ。練習参加という言葉は同じでも、U19に10日入るのと2部のトップに10日入るのとでは、見られているものが違う。
数えるべきは「何歳で出たか」ではなく「何回ぶん出たか」
海外に出た育成年代の話は、だいたい年齢で語られる。16歳で渡った、18歳で渡った、と。でも坂本選手の8月は、移籍ではない。10日で帰ってきて、国内の公式戦に戻って点を取っている。これを年齢で数えようとすると、記録のどこにも残らない。
同じことが、ほかの形でも起きている。JFAとアディダスの短期留学は年に何枠と決まっていて、行き先はヨーロッパだけでなく南米や北米にも広がっている。Jクラブが自前で組む遠征もある。ブラウブリッツ秋田のようにリーグの助成金を使って動くクラブもあれば、FC岐阜のように欧州のクラブとつないでU-18・U-15の選手を送るところもある。どれも一回ごとに数日から十日ちょっとで、終われば帰ってくる。4名という人数が並ぶ理由を数えたときにも思ったことだが、海外経験は一回の大きな移籍ではなく、小刻みな回数として配られている。
だから聞くべきは「何歳で海外に行ったか」ではなく、「高校を出るまでに何回、海外のピッチに立ったか」のほうではないかと。
回数の出どころは、全部ばらばらになっている
ここが厄介なところで、その回数は一か所に集まっていない。JFAのプログラムで行った一回はJFAのページに載る。クラブの遠征で行った一回はクラブのアカデミーのページに載る。坂本選手のポルトガル行きのような、個人でクラブのトップに混ざった一回は、サッカーの媒体の記事にだけ残る。本人の経歴欄には、たぶんどれも書かれない。
進路を考えている高校生の側から見ると、これは相当に不便な話です。自分の前に同じ道を通った人が、どういう順番で何回渡って、そのあとどうなったのかを並べて見ることができない。インターハイの得点王が8月に10日だけ行って戻ってきたという一例は読めても、それが例外なのか、ある程度の数が同じことをやっているのかが分からない。
受け入れ側のカテゴリー、期間、国内の公式戦に戻るまでの間隔。この三つを並べれば、個人で行った一回も、クラブが組んだ一回も、同じ物差しに乗る。坂本選手の場合は、トップチーム、10日、帰国後すぐ公式戦。この三つが揃っている記録は、育成年代ではかなり珍しい。珍しいのは本人がすごいからではなく、三つとも書いてある記事が少ないからだと思う。
2試合6得点を、どう読むか
帰ってきて2試合で6得点、という一行は、気持ちよく読める。10日間が効いた、と書きたくなる。でもそこは慎重でいたい。もともと得点王になっている選手で、全国のリーグでも起用されている選手です。10日間の前と後で何が変わったのかは、点の数だけでは分からない。
むしろ注目したいのは、10日で帰れる設計になっていること。チームを長期で離れずに済むから、所属先も出しやすい。これは移籍とは別の種類の経験で、もっと多くの選手に配れるはずのものです。配れるはずなのに、誰がどれだけ行っているのかを数えられる場所がない。
うちではいま、クラブと選手の活動が一人ずつの記録として残るものを作っている。十日間の練習参加が、どこにも残らず消えてしまうのはもったいない。
高校生の海外経験を語るとき、ヨーロッパに移籍した何人かの名前ではなく、夏の10日をどこで誰と過ごし、戻ってから何節目の試合に出たのかを、一人ずつ数えるところから始めたい。
出典: www.abola.pt(2026-10-07)