海外に十日いた高校生の記録は、帰ってきてからの二試合にしか残らない

高校生が夏に海外のクラブへ十日ほど行くとき、混ざる相手は同い年なのか、それとも大人なのか。日本の育成年代の海外経験を読むときに、いちばん先に見るべきなのはここではないかと。

静岡学園高3年のFW坂本健悟が、8月にポルトガルへ渡って、2部リーグのAVSで10日間の練習参加をしています。受け入れ先はアンダーカテゴリーではなく、トップチーム。大阪市ジュネッスFCの出身で184センチ、インターハイの得点王で、2025年のプレミアリーグWESTでも起用されている選手。

十日。短いように見えて、学校に通っている高校3年生がチームを離れていられる長さとしては、ほぼ上限に近い。そしてこの十日がどこに置かれたかというと、8月。高校年代のいちばん上のリーグは年間を通して回っているが、前期と後期に割れていて、その切れ目が夏に来る。学校の夏休みと、リーグが止まっている期間。この二つが重なった一か所にしか、個人で海を渡る時間は置けない。行きたいから行けるのではなく、カレンダーが空いているところにしか置けないということ。

スイスサッカー協会のページに、U-18代表が勝ちと引き分けと負けをひとつずつ持ち帰ったという見出しが出ていました。一回の活動の結果を、三つ並べて数えている。

代表の活動なら、それでいい。三試合やれば三つの結果が残り、誰が出て何分やったかも後から追える。坂本の十日間には、それがない。練習に混ざった日は、どこの公式記録にも載らない。得点も出場時間もつかないし、対戦相手の欄すら存在しない。残るのは十日という日数だけ。

帰ってきてからの二試合が、十日間の成績表になっている

だから評価は、国内に戻ってから付く。帰国後の公式戦は2試合で6得点。この数字が、十日の中身を説明する材料として並べられています。ポルトガルで誰の隣に立って何を言われたかではなく、日本に帰ってから何点取ったか。海外で積んだものは、インターハイやプレミアリーグWESTという国内の記録に翻訳されて、はじめて他人に伝わる形になる。

これは本人の努力の話ではなく、数え方の話。日本の高校年代には、国内の公式戦以外に個人の時間を記録する場所がほとんど用意されていない。クラブのユースに所属していれば練習参加も遠征もクラブの告知に出るが、学校のチームに所属している選手の場合、その十日は学校の活動でもリーグの活動でもないので、どこの年間カレンダーにも行が立たない。帰国後の得点で語るしかないのは、語る側が意地悪だからではなく、ほかに書ける欄がないから。

「海外に行った」を三つに割って数える

だとすれば、こちらが数える軸を持つしかない。三つでいいと思っている。受け入れたのがトップチームなのかアンダーカテゴリーなのか。期間が十日前後なのか一か月単位なのか。そして帰ってから国内の公式戦に戻るまでに何日あいたのか。

この三つを並べるだけで、「夏に海外へ行った」という同じ一行が、まったく別のものに割れる。同じ十日でも、相手の育成組織で同い年と紅白戦をやるのと、2部のトップチームの中に高校生がひとりで入るのとでは、見ているものも、言われることも違う。期間も同じで、十日なら所属チームの日程を一切動かさずに済むが、一か月になると前期の最終節や後期の開幕にかかってくる。帰国から公式戦までの間隔は、その経験を試す場がすぐ用意されていたかどうかを示す。坂本の場合は2試合で6得点という形で、ごく短い間に出ている。

海外移籍の話になると、どうしても何歳で出たかという一点に集まりやすい。けれど高校年代でいま実際に起きている数のほとんどは、移籍ではなく、この十日のほうです。学校に籍を置いたまま、夏の谷間に一度だけ出て、帰ってきて後期を戦う。プレミアリーグWESTの順位表にも、インターハイの結果にも、その十日は一文字も出てこない。

次に高校生が夏に海を渡ったという話が流れてきたら、行き先の国名を見るより先に、受け入れたのはトップかアンダーか、何日いたのか、帰国から何日目に公式戦のピッチに立ったのかを並べる。坂本健悟の欄に入るのは、トップチーム、十日、そして戻ってからの二試合で六点。

出典: www.football.ch(2026-10-03)

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