終盤で足が止まる選手と、90分間走りきれる選手を分けているのは、体力の総量ではありません。高強度の動きをこなした直後に、どれだけ早く回復して次の一歩を踏み出せるか。その回復力の差が、そのままピッチでの生死を分けます。
マラソンのように一定のペースで走り続ける力と、スプリントと歩行を繰り返しながら90分間を戦い抜く力は、鍛え方がまったく別物です。サッカーで問われるのは後者、いわゆる「間欠的持久力」と呼ばれる力であり、日本サッカー協会(JFA)が指導者向けに公開しているデータとトレーニング例が、その鍛え方を具体的に示しています。
間欠的持久力とは何か
サッカーの試合では、全力に近いスプリントとジョギングや歩行が交互に訪れます。同じペースで走り続けるわけではなく、高強度の運動と回復を繰り返しながら90分間を戦うことになります。高強度の運動をこなした直後に、どれだけ素早く回復して次の高強度運動に移れるか。この能力こそが、一般に間欠的持久力と呼ばれるものです。
JFAは指導者向けに選手のフィジカルデータを収集・公開しており、その測定項目の一つがYo-Yoインターミッテントリカバリーテスト(Level2)です。間欠的持久力に近い能力を測るテストで、公式サイトは次のように説明しています。
40mダッシュ(20mの往復)を10秒間の休息を挟んで繰り返し、反復する高強度運動からの回復能力をみる。
JFA公式「フィジカル測定結果」(フィジカルフィットネスプロジェクト)
同種のテストは、JFAアカデミー堺が選手に実施した際の記事でも、次のように説明されています。
このテストは強度の高いエクササイズの後の回復能力に焦点を当てています。
JFA公式「フィジカルテスト」(2012年5月14日・JFAアカデミー堺ダイアリー)
どちらの説明にも共通しているのは、「一定のスピードでどれだけ長く走れるか」ではなく、「高強度の運動をこなした直後に、どれだけ素早く回復して次の高強度運動に移れるか」を見ている点です。これは、そのままサッカーの試合中に求められる能力と重なります。
JFAの「フィジカル測定結果」ページには、2023年から2026年にかけてナショナルトレセンおよび育成年代の代表チームで実施されたスプリントと立ち幅跳びの測定データが継続して公開されており、カテゴリーが上がるにつれて数値が伸びていく傾向が示されています。同じページにYo-Yoテストの説明も並んでいることからも、間欠的持久力がフィジカル測定の中心に位置づけられていることがわかります。
サッカーに効くインターバルトレーニングの組み立て方
間欠的持久力を鍛える直接的な方法が、インターバルトレーニングです。高強度の運動と短い休息を繰り返すことで、心肺機能と、運動後に素早く回復する力の両方が養われます。
JFAが指導者向けに公開している「トレーニング例」は、有酸素性トレーニングの目的を「①持久的運動パフォーマンス」と「②間欠的運動パフォーマンス」に分けて示しています。間欠的運動パフォーマンスを狙った中強度〜高強度のメニューでは、運動強度90%(心拍数の目安80〜100%)を基準に、2〜3分程度の運動と3分程度の休息を3〜5セット組む設計です。さらに強度を上げたスピード持久力のメニューは、30秒程度の高強度の運動と2分程度の休息を3〜5セット繰り返す組み立てになっています。
実際の運動と休息の時間・セット数は、選手のその日のコンディションを見ながら調整する必要があります。回復が追いつかないまま追い込み続けると、フォームが崩れて狙った効果が得られません。マッチデーに向けたフィジカルトレーニングの組み立て方と合わせて、試合に近い強度設定を意識すると実戦につながりやすくなります。
有酸素性の土台をつくる長距離ランニング
インターバルトレーニングだけでは、90分間を支える有酸素能力の土台は育ちません。一定のペースで長時間走るランニングが、心肺機能を底上げし、疲労への耐性を高める基礎になります。
選手の年齢や体力レベル、ポジションによって適切な走行距離や頻度は変わります。特に育成年代では骨や関節の発達段階をふまえ、走行量を急に増やすのではなく、段階的に負荷を上げていくことが求められます。
サーキットトレーニングとボールを使ったトレーニングを組み合わせる
サーキットトレーニングは、複数の運動種目を短い休息を挟みながら連続して行う方法です。全身の筋肉を使うため、持久力と筋力を同時に鍛えられます。切り返し、ジャンプ、スプリントといったサッカーの動きを種目に取り入れれば、競技特有の持久力に近づきます。
ドリブルやパス回しをある程度の時間続けるボールを使ったトレーニングは、技術と持久力を同時に鍛えられるうえ、単調な走り込みより選手のモチベーションを保ちやすい利点があります。高強度の運動と休息を繰り返すインターバル設計は、こうしたボール練習のメニューに組み込むこともできます。フィジカルを強化して相手を圧倒するテクニックで紹介されている筋力トレーニングと組み合わせれば、持久力と身体の強さを両輪で伸ばしていけます。
持続力は、トレーニングだけで完結しません。適切な休養とバランスの取れた食事があって、初めてこの回復力は積み上がっていきます。選手一人ひとりの特性に合わせて、コーチや専門家とともにプログラムを継続的に見直していくこと。それが、終盤まで足を止めない選手をつくります。
