手元のノートに、指導者ひとりぶんの経歴だけを縦に書き写した行がある。年と、チーム名と、肩書き。徳島ヴォルティスが6月に出した、大谷武文さんがアカデミーダイレクターに復帰するという知らせから写しました。
上から読むと、こうなる。セレッソ大阪サッカースクールのコーチが2005年から2007年。C大阪のU-12コーチ、U-18コーチ、エリートクラスのコーチ、U-12監督が2013年から2015年。高知ユナイテッドSCでヘッドコーチと監督を2016年から2019年。C大阪U-23のコーチが2020年。徳島ヴォルティスのアカデミーダイレクターが2021年から2026年5月。徳島ヴォルティスの監督が2026年5月から6月。そして2026年6月19日から、もう一度アカデミーダイレクター。
最後の二行のあいだは、ひと月ほど。トップチームの監督席に座って、そこからアカデミーの席に戻っている。保有ライセンスはJFA Proライセンスと、GKライセンス レベル1。
スペインのU-21代表に初めて呼ばれたカルロス・エスピが、AS紙のインタビューに答えています。レアル・マドリードでの出場時間は26分で、そのあいだに2得点。移籍が決まったのは7月30日で、友人にも言えないまま数日を過ごしたと笑っている。モウリーニョからは、5分でも10分でも15分でも持っているものを全部出せ、キリアンの隣でエリアにいろ、と言われているらしい。記事はそのうえで、フル代表のデ・ラ・フエンテが彼から目を離しておらず、当面はU-21のダビド・ゴルドが磨く、という書き方をしていました。
ダビド・ゴルドという名前が、クラブの監督とフル代表の監督の名前と並んで出てくるところで手が止まった。ひとりの選手のまわりに、カテゴリの違う指導者が横に並んでいて、渡す人と受け取る人がいる。手元のノートの行では、同じことが横ではなく縦に起きている。U-12のコーチも、U-18のコーチも、U-23のコーチも、トップの監督も、アカデミーの長も、ひとりの人の経歴の中に上下に積まれている。
下へ戻った行が、いくつあるか
育成はトップに上がるまでの下働き、という言い方を、こちらもどこかでしてしまう。指導者の経歴も、小さい年代から始まって上へ抜けていくものだと思い込んでいた。順に数えれば、スクール、U-12、U-18、エリートクラス、U-23、そしてトップ。たしかに下から上へ並んでいます。
そうならなかったのが最後の二行。トップチームの監督を務めたあとに、アカデミーダイレクターへ戻っている。しかもProライセンスを持ったままで。上のカテゴリに行くための通過点なら、戻る理由がない。戻る行があるということは、アカデミーダイレクターがそれ自体で立っている職だということではないかと。
もうひとつ、GKライセンス レベル1が併記されている点も気になる。年代で分かれるだけでなく、ポジションの専門でも線が引かれていて、ひとりの経歴にその二本が同時に入っている。
クラブの知らせで、選手の名前より先に読む行
ファジアーノ岡山も、U-15の育成スタッフ体制の変更を公表しています。この種の知らせは、加入内定やトップ昇格の告知にくらべると、ほとんど話題にならない。読むほうも選手の名前を先に探すので、スタッフ欄は目が滑る。
けれど、高円宮杯のプリンスリーグでも、2026/27シーズンに始まったU-21 Jリーグでも、日程表に出てくるのはチーム名と時刻までで、そこに誰が立って何を言うかは載っていない。子どもが一年間どんな言葉を浴びるかを決めているのは、スタッフ欄のほうです。JFAのライセンスの級と、Jリーグのクラブが用意した肩書き。その二つが重なったところに、その年代の教え方がある。
そして、ひとりの指導者がU-12からトップまでの上下を歩いてきたなら、その人は下の年代で言った言葉が上のカテゴリで何になるかを、自分の足で確かめている。逆に、上から戻ってきた人は、トップで通じなかったものを持って下に降りてくる。往復には、片道にはない情報が乗る。
日本の育成年代で指導者の話をするとき、たいていライセンスの級か、給料がどこから出ているかに寄ってしまう。それも要るけれど、経歴の行の向きはもっと安い手間で読める。次にアカデミー関連の知らせを開いたら、選手の名前を先に探すのをやめて、スタッフ欄の経歴を上から下へたどり、下へ戻っている行がいくつあるかを数えたい。
出典: as.com(2026-09-22)