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生田隆司コラム:「遠藤保仁世代の再来か? 藤田譲瑠チマの一瞬の魔法と未来への期待」
先日のベルギーリーグ、シント=トロイデン対ユニオン・サンジロワーズ戦で、22歳の藤田譲瑠チマが見せたあのロングパス。SNS上では「まるで遠藤保仁の再来だ」と激しい賛辞が飛び交いました。僕自身、幼少期からブーツを履き、ピッチ上で何度も同じ瞬間を求め、そして味わってきた経験から、このプレーには単なる美技以上の意味を感じています。
試合は75分、絶体絶命の1点ビハインド、相手陣の猛攻に追い詰められたシント=トロイデン。そんな中、藤田が中央から一瞬の判断で左サイドの伊藤涼太郎にボールを供給。そこから右足を巧みに使い放った弧を描くロングキックは、まるで自分の体に定着した技術の延長のような滑らかさで、前線へと流れ込むパスへと変貌しました。その瞬間、フィールド全体が静まり返り、ルイ・パトリス、そしてFWアドリアーノ・ベルタッチーニと連動したかのような動きで、同点ゴールの発端となったのです。
サッカーは数字だけでは測り切れない芸術。あの一瞬の判断、そしてパスに込められた「先を読む力」は、長いキャリアの中で磨かれる大切な要素です。かつて自分もピッチ上で、試合終盤のプレッシャーを感じながらも冷静な判断を迫られた数多の局面がありました。藤田のようなプレーメーカーが持つその瞬発力は、単なるテクニックではなく、日々の努力と数々の試合での「心の準備」から培われるものです。
さらに、今回のロングパスは、現代サッカーにおいて、守備から攻撃への切り替えを瞬時に行う「攻守の一体感」を象徴するプレーと言えるでしょう。僕が現役時代に学んだことは、どんなに技術が磨かれていても、チーム全体の連携や精神面の強さがなければ、大局を覆すチャンスは掴めないということでした。藤田のプレーは、まさにその好例。対戦相手の背後を突くパスは、一瞬の判断とチームメイトへの信頼の表れでもあり、これからの日本サッカーにとって大きな希望となるでしょう。
ただし、成功の裏には常にリスクがあります。今回、試合はPK失点により敗北に終わりました。あの一瞬の輝きが、勝利に結びつくかどうかは、チーム全体の組織力や戦術の完成度にも関わるのは言うまでもありません。だからこそ、未来のスター選手たちには、技術だけでなく、試合全体を読み、仲間と一丸となって戦う戦略眼をも求めたい。そして、日々の練習の一コマ一コマが、次の決定的なプレーへと繋がるのだということを、改めて感じさせられます。
最後に、僕自身が下部組織から一途にプロサッカー選手を目指して戦い抜いてきた経験から、こうした一瞬の輝きを見逃してはならないという想いを伝えたいです。藤田譲瑠チマのプレーは、単なる派手なパスワークではなく、若手選手が如何にして大舞台でチームに貢献できるかを示す一例です。これからも、彼の成長と、個々の才能を結集させたチームが、さらなる高みへと進む姿を期待してやみません。
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以上、生田隆司が伝える、未来への視界と今の輝きを巡るコラムでした。