高校サッカーにおける指導者の重要性について自分の中で思う事があり、私自信の経験による視点から少し話をさせて頂きます。
その前に、まず私の自己紹介をさせて頂きます。
私は、現在29歳の既婚男性です。サッカーとは小学校1年生の時から、社会人となった今でも社会人サッカーの地域リーグでプレーしており、サッカーとは約20年の付き合いとなります。サッカー経歴では、小学校では地域のスポーツクラブに入り、中学校は地元の中学校サッカー部に入部、そして高校は地元の公立ですが強豪校のサッカー部員としてサッカーをしていました。
小学生時代、中学生時代はサッカーを楽しむ程度でやれたらいいなと思い、地域トレセンなどの選抜などには特に縁がなかったわけですが、地元公立高校サッカー部の顧問が、なんと私の中学校まで自分をスカウトしに来てくれたのをきっかけに、
「おれってそんな強豪校で通用するんだ」
と考えるようになり、高校ではサッカーを本気でやってみようと、その強豪校に入学することにしました。
そして、運良く入学してすぐのインターハイからレギュラーで出場する事になり、高校2年間はインターハイ、選手権と全てレギュラーとして出場することができましたが、私は高校3年生の時のインターハイで引退することとなり、選手権まではチームに残りませんでした。高校時代のチーム最高成績は、県ベスト4という何とも言えない成績で終わりました。
大学に進学した後、2年ほどサッカーとは離れて、サッカーとは全く関係ないところで遊び続けてきましたが、大学2年の時に高校時代のサッカー仲間から社会人サッカー地域リーグでプレーすることに誘われたことをキッカケに、再びサッカーをして今に至ります。
と、どこにでもいそうな単なるサッカー好きのおっさんの話になってしましましたが、今からは「高校サッカー指導者の言葉」で、私の人生が変わっていたのかも知れない!という私の経験した想いから、「高校サッカーにおける指導者の重要性」についてお話をさせて頂きます。
選手の高校進学について指導者が考えるべきこと
上の自己紹介でも軽くお話はさせて頂きましたが、小学生時代、中学生時代と、あまりやる気がないサッカー選手でした。まぁ、お山の大将が気持ちよかったのかもしれません。
高校生時代は、入学したサッカー部の顧問が私をサッカー部に誘ってくれたことをキッカケに、サッカー強豪校でプレーする事になりました。
そして、その強豪校のサッカー部に入部をすると、その強豪の名の通り、同学年には県内のクラブユースや強豪クラブ出身の選手がほとんどでした。
何気なく選んで入った高校でしたが、本気でサッカーをやるならここに来てよかったと感じた当時の気持ちを今でも覚えています。
しかし、大人になった今になって思う事があります。
私の中で高校進学は人生における初めての大きな分岐点でした。ここでサッカー人生や今後の人生が左右されてもおかしくはないと思います。私自身、誘われたことをキッカケに強豪校へ進んだこと自体に後悔はありませんが、今思えば、人生を左右するような分岐点となる決断を、ただサッカー部の顧問が誘いにきたという簡単な理由で決めても良かったのでしょうか?
中学生なんて悪く言ってしまえば無知な子どもです。しかし、私と同じように、そんな簡単な理由で、高校進学やサッカー部への入学を決めてしまう人がほとんどであると思います。
では、高校へ進学する選手に対して、サッカー指導者の重要な役割とは一体何でしょうか?
私は指導者にとって状様なことは、選手一人一人の一生を預かるというぐらいの覚悟が必要ではないのかと思います。自分が預かる選手の中で、サッカーで飯を食っていく事が出来るなんて、はっきり言っていないと考えているのではないでしょうか。
サッカー選手としてだけでなく、サッカーに携わる仕事に就くのも日本では難しいのが現状です。サッカーを指導しつつ、サッカー以上に一人の人間として選手を成長させていく。それが指導者にとって最も重要視しなければいけない事であると私は考えています。
選手の在学中に指導者が考えるべきこと
ある程度の強豪校であると、サッカーがしたくてその高校を選んだ選手が多いと思います。その為、よく勘違いしているのはサッカーだけしておけば良いと思っている選手がほとんどではないでしょうか。
実は私自身もその一人でした。遅刻に関してはサッカー部の顧問に怒られるのが嫌という理由でしないように気をつけていましたが、授業中は寝て過ごし、部活だけを一生懸命に頑張り、家に帰ると遊びに出て、また次の日は学校で寝るというサイクルで過ごしていました。
高校の時に気をつけていた事は、顧問の目が行き届くところでは頑張り、見えないところではサボっているのをばれないようにしていた事でした。また、私の高校の野球部は甲子園にも出ていたのですが、甲子園に出場するレベルである野球部さえも同様に、顧問の見えるところでは学級委員などを行い、見えないところではサボっていたのです。
高校生活を部活中心で過ごしている選手は、ほとんどがこのレベルの高校生です。部活を頑張っているから自分はこれでいいやと思ってしまいます。
しかし、人間を比較するというのは良くないかもしれませんが、部活だけを頑張っている生徒と、学校で勉強を頑張っている生徒を比較した場合、どちらが人間的に優れているのかを考えたら、私は後者ではないかと考えています。やはり学生の本業は学業であるという事と、アマチュアであるはずの部活動をプロと勘違いしている選手が多いと考えるからです。
それではサッカー部の指導者は、選手に対して伝えなければいけない事はどのようなことでしょうか?
高校生にもなると、選手は自分の頭で考え理解し行動が出来るようになっています。その為、冒頭でも書いた「サッカーだけではそう簡単に飯を食っては行けないぞ」という事を伝えて、人間形成をしなければいけないと考えます。
遅刻をするな!
授業はしっかり聞け!
クラス委員などの役員を担え!
などだけではなく、なぜそのような事をしなければいけないのか、そして、そうした事は、後に選手自身の糧になるということを諭すのが大切ではないかと考えます。
進学校の生徒であれば、長い目で自分の人生設計を計画できる生徒が多いと思います。しかし、サッカーは強豪校でも学力はどうかという高校では、案の定サッカーばかりして来た選手が集まっているので、残念ながら進学校のようにはいきません。
だからこそ、その選手の人生を大切にし、サッカーだけでない「人」として成長させることに時間を使うべきであると考えます。
それは自ずとサッカー人生にも生きてくると考えます。
サッカーの指導において指導者が考えるべきこと
これは私自身の経験になりますが、私の高校の指導者は誰に聞いても一生懸命に頑張っているという事は認められていました。卒業後もその指導者と関係を持つ人から、そのような話をよく聞きました。
その指導者が運転するバスで、夜通し10時間ほどかけて遠征に行った試合で、結果が不甲斐なかった時には、
おれは死ぬ思いで運転して来たのに、お前たちはやる気もなく遊びに来たのか
と怒られたので、「連れてきてくれと頼んだ覚えはない」と思ったことを今でも覚えています。
と、このように高校生であった自分にとっては、バスで10時間運転しようが、そのような事はどうでもよかったことで、実際ほとんどの選手は顧問が死ぬ思いで頑張っていると言うこと自体を理解しておらず、顧問が頑張っているかどうかなんて選手にとっては本当にどうでも良い話なのです。その見返りを求めるには相手が若すぎるのです。
ただ、自分が大人になってはじめて、顧問が自分を犠牲にしてまで選手のためにやってくれていたということを、完全に理解できましたけどね…。
私の高校は静岡学園や、国見高校、野洲高校、青森山田高校などの強豪校と練習試合をしてもらえる機会が多くあり、その度に対戦相手のグラウンドまで行っていました。
ただ、全国の強豪校と試合をする度に、相手のウォーミングアップや練習方法をビデオで撮り、自クラブへ持ち帰ってくるとそれを完全コピーする。と、一貫性のないことをよくやらされていました。
それは私からすると一貫性がないだけで、顧問には何か理由があったのかもしれません。しかし高校生ともなると、同じことをやらされるだけでは指導者について行かず、理屈や理由を求めるようになります。このトレーニングを行うことにより、結果がどうなるのかという説明が必ず必要になってくると思います。
他には、尊敬される指導者になるということは必須ではないでしょうか。その為には、指導者自らが模範となる毅然とした対応が必要です。
指導する相手が高校生と微妙な年齢なため、指導者は時に怒鳴りつけることも必要ですが、それだけでは選手は怒られたくないからやらないと、何の実も持たないまま育ってしまいます。
ONとOFFの重要性
基本的に、高校でもサッカーを続けている選手は、サッカーが好きだから続けていると思います。そんなサッカー選手がサッカーをやめることは、とても勿体無いと思います。
ですので、いくら強豪校であろうと、例えばそのレベルについてこれない選手をやめさせるのでは、高校の部活としては成立しないと考えています。指導者は一人の人間にとって大切な趣味を奪うということの意味をもっと理解すべきです。
だからこそ、厳しいトレーニングやサッカー人生にもOFFの楽しい時間を作ることが必要であると考えています。例えば、週に一度はクロッキーサッカーなどの楽しめる時間を作ることや、サッカーと離れて野球大会をしてみるのはいかがでしょうか?
高校生はまぁまぁ単純だと思いますので、しんどいトレーニングだけじゃなく、仲間とともに楽しめる「OFF」の時間があると、頑張れる選手は多いと思います。そして、OFFの時間は指導者も一緒に楽しむべきです。
指導者もこのようにON/OFFをしっかりと使い分ける事で、ONの練習時には必ず生きてくると考えます。
これまでお話ししたように、高校サッカーにおける指導者は、サッカーだけを教えるのが仕事ではありません。
まずは、選手一人一人を「人」として育成することを第一に考え、選手がサッカーを離れた時に「あの人のおかげで今の自分がある」と思ってもらえるような、そんな「人」を育てるのが仕事ではないでしょうか。