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サッカーでボールをとられないためにはどうしたらいいか


あなたが攻撃的なポジションの選手で、相手からボールを奪う快感を覚えてしまった場合、その年齢が17歳以下であれば、もしかしたらボランチやサイドバックに転向したほうがいいかもしれません。それよりもドリブルで相手を抜く快感が身に染みついている場合は、そのまま攻撃的なポジションを変えず、得点感覚を今よりも更に高め、日本サッカー界のエースストライカーまで成長することを期待しています。
なぜ攻撃的な選手はふとした時に、そうした攻撃的な快感よりも守備的な快感に気付き始めるのか。それは紛れもなくあなたがドリブルで相手を抜く回数よりも、ドリブルで相手にボールをとられる回数の方が多いからです。それがたまたま守備側に回った時、思ったよりも簡単にボールを奪うことができるので、守備に対する自信の能力を過信することや、守備への可能性、そして快感を覚えてしまうのかもしれません。

本日は、そんな攻撃側の選手が勘違いしがちな錯覚が、日本サッカー界のエースストライカー不足問題にまで発展しているのではないかと想像してみます。

ボールをとられる原因はなにか



なぜあなたはボールを奪われるのでしょうか。その原因が何かを理解していれば、その原因に対する予防策や対策を考え、練習で修正して克服すれば今よりボールを取られる回数が少なくなり、プレーが改善されるかもしれません。ここではいくつかボールをとられるであろう理由について考えてみます。普段あなたがプレーしている中で、ボールを奪われたことのことを思い出してください。もしかしたら以下のどれかに当てはまっているかもしれません。
ボールとられた理由として考えられること。
①味方(相手)の位置が把握できておらず相手に囲まれ奪われた。
②相手にドリブル(パス)のコースを読まれていてボールをとられた。
③相手と競り合った際、身体がよろけて相手に競り負け奪われた。
④一人目を交わしたが二人目が見えていなくて奪われた。
⑤相手をうまく交わしたがすぐに追いつかれボールを奪われた。
⑥サイドでボールを受けて慌ててミスをし奪われた。
⑦シュートチャンスでキックフェイントをしたら取られた。
⑧ゴールに背を向けトラップしたら相手に囲まれ奪われた。
⑨その他
あえて少し難しく考えてみましょう。ボールを奪われるということは、それまではあなたがボール保持していたと言うことです。ボールを奪われる理由は色んな要素が重なっていて、結果とられるのです。そのボールを奪われるという結果が生まれた根底には、相手があなたのボールを奪いに来ているという事実がある訳ですから、相手とあなたとの関係性は常に「対」の状態であり、どちらかの能力が相手を上回ればボールの行方も決まることが言えます。
そのような状態の中、ボール保持者が絶対的に優位かと言えば、その確率性を考えると一概にそうであるとは言えません。あなたが試合でプレーしていても観戦していても、もしかするとボールを奪われる(た)回数の方が多いことが分かるのではないでしょうか。今すぐあなたのプレーを想い出してください。しかし、ここで言うボールを奪われるというのは、チームレベルでのボール支配率(ボール保持率)、つまりポゼッションの数値云々ではなく、あなたがボールを持っていて「仕掛けた回数」に対する「突破した回数」と「とられた回数」の確率性を指しています。
パスでも同じことが言えます。相手が目の前にいるからと言って、安全なバックパスや横パスをする「つなぎ」や「ビルドアップ」などではありません。ここでいうパスは相手の裏のスペースを狙ったロビングボールやスルーパス、またはサイドからのクロスを指し、得点につながるような仕掛けを狙うパスのことを言います。
ドリブル・パス、どちらを選択して仕掛けるにせよ、結果は思い起こせばボールを奪われる回数の方が多いことが分かるかもしれません。そうでなければサッカーのスコアは1-0という均衡した試合ばかりでなく、8-8など大量得点・大量失点のような展開になるでしょう。そもそもドリブルやパスを仕掛けた時、サッカーではボールを奪われる確率の方が多いことが言えるでしょう。

ボールを奪われたのは「仕掛けた」結果である

では、ボールを取られる理由について再考してみましょう。上記で既に述べたような理由は、もう少し単純でシンプルにいうと以下のようになるかもしれません。
ボールをとられる理由として考えられること。(シンプルVer.)
①味方(相手)の位置が把握できておらず相手に囲まれ奪われた。
=周りが見えていなかった(情報不足)
②相手にドリブル(パス)のコースを読まれていてボールをとられた。
=単純・単調な仕掛けだった(相手に読まれやすい)
③相手と競り合った際、身体がよろけて相手に競り負け奪われた。
=170cmのFWが185cmのDFと体当たりした(身体能力の差)
④一人目を交わしたが二人目が見えていなくて奪われた。
=仕掛けるスペースがなかった(物理的な問題)
⑤相手をうまく交わしたがすぐに追いつかれボールを奪われた。
=50m8秒台のFWが50m5秒台のDFとよーいドンした(身体能力の差)
⑥サイドでボールを受けて慌ててミスをし奪われた。
=自信不足だった
⑦シュートチャンスでキックフェイントをしたら取られた。
=コネすぎた
⑧ゴールに背を向けトラップしたら相手に囲まれ奪われた。
=ボールに目が行き過ぎた
⑨その他
全てが上記のような状況ではありませんが、自身のプレーを想い出した時、じっくり考えると「そういうことが理由だったのか!」と頷くこともあるかもしれません。
あなたがボールを奪われたと言う結果には、必ず奪われた原因があるのです。それが何かを追究するべきです。全てにおいて完璧な状況で仕掛けたのに、結果として奪われたのであれば、そもそも「仕掛ける」タイミングではなかったのではないでしょうか。

ボールをとられない選手はなぜとられないのか



ボールをとられない選手はなぜとられないのでしょうか。ボールを奪われることが多い選手は、ボールを奪われない選手がどういうボールの持ち方をして、どういう体の使い方をして、どういうイメージで仕掛けているのかを知る必要があるかもしれません。
日本代表では本田圭佑は比較的ボールを奪われない選手として分類できるのではないでしょうか。その他、乾貴士、宇佐美貴史、武藤嘉紀、DFでは内田篤人、Jリーグでは遠藤保仁、家長昭博が代表格です。特に、家長昭博はJ2でプレーする選手ではなく、今すぐ代表でロシアワールドカップの中心選手として呼び戻すべき選手だと思います。
家長昭博
出典:http://www.ardija.co.jp/
ずば抜けた能力をなぜ日本サッカー協会は見過ごしているのでしょうか。不思議でなりません。代表では是非「家長昭博の活かし方を間違えた日本サッカー界」でも述べたように、1トップで起用してみて欲しいところです。
それはそうと、なぜこうした選手は仕掛けた結果として、ボールを奪われる回数が少ないのでしょうか。先ほど述べたボールを奪われることに原因があったように、ボールを奪われない原因も同時に追求する必要があります。ここでは、家長昭博についてみてみましょう。
ボールを奪われない理由として考えられること。(家長昭博Ver.)
①味方(相手)の位置が把握できておらず相手に囲まれ奪われた。
=周りが見えていなかった(情報不足)
家長→ボールを動かす時も味方や相手を直接視野に入れ、ボールを間接視野で捉え、常に周囲の状況を把握している。
②相手にドリブル(パス)のコースを読まれていてボールをとられた。
=単純・単調な仕掛けだった(相手に読まれやすい)
家長→仕掛けるタイミング(スピードの緩急と角度、相手との距離)を自分でコントロールしている。相手は付いて行くのに必死(後手に回る)。
③相手と競り合った際、身体がよろけて相手に競り負け奪われた。
=170cmのFWが185cmのDFと体当たりした(身体能力の差)
家長→メッシと同じように重心を低くして相手に見えにくい位置にボールを置き、(上半身も強いが)上半身で当たるのではなく下半身のバランスと体幹で勝負している。
④一人目を交わしたが二人目が見えていなくて奪われた。
=仕掛けるスペースがなかった(物理的な問題)
家長→ゴール前でも事前に裏のスペースとゴールキーパーの位置を確認していて、サイドから切れ込み縦横無尽に崩すことが多く、真ん中のエリアではパスやシュートを選択している。
⑤相手をうまく交わしたがすぐに追いつかれボールを奪われた。
=50m8秒台のFWが50m5秒台のDFとよーいドンした(身体能力の差)
家長→基本的に足が速く、ドリブルでも追いつけない。(タイミングをズらされる)
⑥サイドでボールを受けて慌ててミスをし奪われた。
=自信不足だった
家長→サイドには絶対の自信を持ち、トラップのファーストタッチの時点で仕掛けの一歩目が準備できている。相手は飛び込めない。
⑦シュートチャンスでキックフェイントをしたら取られた。
=コネすぎた
家長→コネることは多いので改善の余地あり。
⑧ゴールに背を向けトラップしたら相手に囲まれ奪われた。
=ボールに目が行き過ぎた
家長→相手を背負うプレーは嫌いではなさそう。背負っていても、ボールはあくまでも間接視野。相手を背負うための下半身の力と、相手のバランスを崩すことを常に考えてプレーしている。
⑨その他
基本的にはボールを奪われる選手の原因が後手であるならば、家長を筆頭とするボールを奪われない選手は常に先手をとっていると言えるのではないでしょうか。後手に回る時もあるかと思いますが、先手がとれる選手は常に準備ができているということです。
何と言ってもサッカーは自分にボールがこない時間が90分の試合で全体の96%を占めている訳ですから、準備ができていない選手は「仕掛けた時」にボールを奪われる確立がぐっと上がるのではないでしょうか。

ボールを奪われないためには「仕掛け」を迷いなくやってのける選手のことを参考にする。

究極論、周りの選手を修正すればボールはとられない



それでもボールを奪われる。なぜか。
それはボールを持っている人の周りの選手、つまり周囲のサポートや動き出しが悪いと言えます。あなたがどんないい状態でも周りにパスコースやドリブルコースを作ってくれない周囲の選手を修正するべきです。チャンスを潰しているのはあなたではなく周りの選手なのです。
これは責任を相手に押し付けている訳ではありません。サッカーはチームスポーツであり、自分がボールを保持してプレーする時間は圧倒的に少ないことを考えると、オフザボールの動きがどれだけ大事かが理解できるかもしれません。
そう考えると「個」の力を育てることは十分大事なことではありますが、その中身を見てみると、その「個」はボールを保持している状態だけでなく、ボールを保持していない時の能力を上げることがキーポイントとなるのではないでしょうか。
今、育成年代の指導者は練習中に、ボールを保持していない周りの選手のサポートや動き出しについて指導していることが多いかもしれませんが、その動きの質や精度を今まで以上に高めたトレーニングをする必要があるでしょう。
テレビやスタジアムで試合を観ていても、主にボールを中心に目で追った試合の見方をしているかと思いますが、まずは攻撃的な選手は自身が所属するクラブと同じフォーメーション、同じポジションの選手だけを90分間見てみてはいかがでしょうか。
テレビでは90分間特定の選手を追いかけるのは、一昔前一時的に流行った「◯◯専用カメラ」で放送される必要があります。そんな機会は非常に稀で、やむを得なくスタジアムへ足を運び観戦するしかありません。
世界で活躍する選手の動きを参考にしたくなる気持ちは分かりますが、まずはJリーグで活躍する選手のボールを保持していない時の動きを追ってみてはいかがでしょうか。
ボールを持っていない時の、視野、体の向き、周囲を確認する回数とタイミング、走り出すタイミングと角度とスピード、ポジショニング、観るべき箇所は挙げればキリがありません。
まずは宇佐美貴史、家長昭博、遠藤保仁がプレーする試合を観戦してみてはいかがでしょうか。

ただ、あなたもJリーガーもボールを奪われるという状況は同じですが、仕掛ける前にボールを取られていたのであれば、それは96%の時間の中で犯した準備不足であり、論外だということを大前提とするべきでしょう。

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