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世のサッカー少年よ、もっともっと考えてから行動に移せ


おまえはなんで行き当たりばったりなんだ。なんでそんなこともわからないんだ。なんで…なんで…世の中をなめているのか。そんな簡単には物事は進まないぞ。


そんな罵声を浴びせられることはなかなかありませんが、ここである少年の話をしたいと思います。


彼の名前は、少年A。だと少しネガティヴなイメージが脳裏に浮かびそうなので、彼の名前を「あさひ」と呼ぼう。


あさひはなぜ考えることができないのか

あさひはチーム内でも常にレギュラーで、どちらかと言うとエース的存在である。ゲームメイクも出来るし、シュートもうまい。守備的なポジションを与えれば、それとなくこなす。


ユーティリティで彼の特徴(武器)を見出すのは難しいが、チームも常に彼を経由してゲームが組み立てられている。あさひも高校生にして既にサッカーを十分理解してプレーをしている。


ただ、一つだけ気になる点がある。ある日、あさひにインタビューをした。


君が目指しているのはJリーグクラブだよね。今の君のプレーを見ていると、プロの中ではとても通用するとは思えない。今のままじゃ難しいと思うよ。


そんな厳しいようで少し彼を試した言葉を言い放った。するとあさひは顔色を変えてこう応えた。


僕はユース登録だけど、何回かトップチームに帯同してプレーしたこともある。全然自分のプレーをやれないこともなかった。あなたが僕のどんなプレーを評価しているのかわからないが、僕は自分に自信とプライドを持っていつもプレーしている。


彼からは少し期待外れの回答が返ってきたが、高校生だから仕方ないと当時は思っていた。しかし、彼にはあの時もっと論理的で全体を見渡している的確なアドバイスを送るべきだった。それが反省点であると感じている。


あさひは自分はこうだ、こうあるべきだと自分自身を決めつけていた感じがした。それが決して悪いとは思わないが、与えられた言葉を吸収する力と、それを動力に転換する力が少し足りないように思えた。


要するに、まだ考えが甘かったと言うのか、考えが浅かったと言うのか、自分で深くじっくり考えることを放棄しているような、人からの指摘を少し面倒臭そうに聞いている、そんな印象を受けた。


ユース世代の選手となると、もう一人前の大人と呼びたいところだ。


しかし、実際にはまだまだ考えが自分の中でも行き着いていない。まだまだそこらへんにいる高校生の中の1人である。


そのことを自分で実感していて、誰かからの言葉にしっかり耳を傾け、その言葉の意味を理解して吸収し、必要な箇所を取捨選択し確実に自分のものにする。


そして、自分で考えたことを実際に行動に移すことができる選手がなかなかいない。


あの当時、あさひには少し考える力が劣っているように思えたし、あの時は彼に対してこう言うべきだったと感じている。


君を評価するのは常に周りの人であり、その評価は君のもとには届かないものだ。周りの目を気にせず自分の道をしっかり歩んでいると言えば聞こえは良いが、高校生の君に足りないことは無数にある。君が普段見ている視点とは違う角度で物事を見ている人もいる。その言葉を受け止めれるか受け止めることができないかで、その後のサッカー人生は変わるだろう。


あさひはなぜ改善することができないのか

高校生だとすでに上のクラスの選手はJリーグで活躍している。活躍まではいかなかったとしても、着実に経験を積んでいる。


高校一年生でJリーグデビューをすると、人はそれを早熟というかもしれない。だが、今後のサッカー人生を考えると、そこそこ現役生活の息は長く、代表に呼ばれ中心選手となっている可能性も十分にある。


あさひはまだ今はそのような選手ではない。例え、これまでのサッカー人生の中で周りから上手いと言われていたとしても、自分でそこそこやれると自信を持っていたとしても、今の現状は周りの高校生と同じ土俵で戦っているし、その上のレベルのクラブやチームから引き上げ(飛び級)の誘いはない。


現実と理想は異なり、事実をいかに受け止めることができるかで、自分の立ち位置や、やらなければならないこと、そして今の自分を改善して理想の自分に近づけなくてはならないことに気づく。


あさひはなぜ理想の選手に近づくために改善しようと思わないのか。そもそも改善する必要があることをわかっていないか、もしくは改善する方法を知らないのかもしれない。


そうなると成長する上で致命的な問題を抱えていることになると思うが、もし彼に改善する力が足りていないのであれば、以下のようにアドバイスをしていればよかった。


まずは自分の理想としている「あるべき姿」と「今の自分」のギャップを客観的に見ると良い。


そのギャップを漠然としたものから、自分の抱える問題・課題として、具体的に思いつく限り列挙する。書き出すことで自分に何が足りていないかを知ることから始める。


そして、100以上列挙できた時点で、今度はその問題や課題を整理する。


その問題や課題は本当に解決する必要があるのか、また、解決することで理想に近づくことができるのか、まずは自分で考えて見ると良い。


次に、やめることはできないかを考える。その問題や課題を解決することをやめるのだ。なんどやめようと考えてもやめられないものが残った時点で、ようやくスタートラインに立てる。


その時点で一度、他の人に相談してみよう。


僕に今足りないことを100以上書き出して見たが、自分で考えて整理すると50個残った。あなたから見て僕に足りないことがまだあるだろうか。僕が切り捨てた中から、あなたが僕に向き合うべきだと考える問題はあるだろうか。


あさひはなぜ前に進むことができないのか

自分では着実に成長を感じて、前に進んでいるはずだ。それはあさひを別の角度から見ていても、そう感じることができる。


ただ、あさひはなぜ前に進めないのだろうか。ある日の夜、あさひが珍しく相談してきて、唐突に自分の言葉で語り始めた。


僕は最近取り残されているような気がしてならない。自分が目指すべき道を確実に前へ進んでいるのだけど、ゴールがすごく遠く感じるし、歩いた道の景色は一向に変わることはない。


そんなことを言えるようになった時点で、彼の成長を感じることはできている。しかし、彼自身が自信とプライドを持って臨んでいたサッカー人生で、なぜか前に進めていない状況に日々悩んでいるようだった。


彼はなぜ前に進めないのだろうか。


それは日本サッカーが世界のサッカーにいつまで経っても追いつけないように、あさひも
他の選手に追いついていないことが考えられる。


もちろんそれだけの理由ではないだろうが、あさひが自分でチームナンバーワンだと感じていても、所詮それは井の中の蛙。


大きな海の中では彼の歩むスピードは決して早くはない。サッカー人生は非常に短いことを考えると、いかにして効率よくスピードを上げて成長できるかが非常に大事であることを知らなければならない。


おそらく彼が取り残されたと感じるようになったのは、周りの選手のスピードが彼より早かったのか、彼自身がそんな周りの選手の存在に気付き平常心を保つことが出来ていないかである。


前に進んでいるのだが、進むスピードが常に一定であるに過ぎない。サッカーに緩急がとても重要であるように、マラソンでも勝負所はペースを上げる。


あさひにはこう応えた。


周りの選手が君を追い越そうとしているのではない。彼らの目的は君を追い越すことではないんだ。彼らはその先に彼ら自身で設定している高いゴールにたどり着こうと、ただただ夢中で必死になっているだけなんだ。君は前に進んでいないのではない。今そう感じている瞬間こそか、ゴールをもう一度設定し直すきっかけなんだ。もう少し高いゴールを設定してみるのはどうだろうか。


あさひにこの言葉が伝わったのかはわからない。人は三段階の分かるを経験する。


理解・納得・共感(共鳴)だ。あさひがもしこの三つの分かるに共感できたのであれば、今この瞬間からの行動が変わるだろう。


理解・納得しても自らは動けない。共感して初めて自ら考え行動に移す。もっともっと考えて考えて行動に移すことができた時点で、彼のサッカー人生は好転するだろう。

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