手元に、JFAの選手育成のページを開いたまま印刷した紙が一枚ある。特別指定選手の段取りが書いてある紙で、そこには「Jリーグ向け」「なでしこリーグ向け」「Fリーグ向け」と、宛先の違う三つの名前が並んでいる。同じ制度の説明に見えて、実際には別々に立っている三本です。
コロンビアサッカー連盟のページに、10月1日の試合案内が出ていた。男子U-20フットサル代表が、ベネズエラのバルキシメトにあるドモ・ボリバリアーノで、現地17時30分からベネズエラと対戦する。グループリーグの最終戦で、すでに準決勝進出は決まっている、という一行が付いていた。
準決勝進出が決まったあとの最終戦に、わざわざ会場名と時刻を付けて告知している。U-20のフットサルが、サッカーの話の付け足しとしてではなく、それ自体の日程として国の連盟のページに載っている。この並び方が、さっきの紙の三本と重なって見えた。
三本目の宛先
JFAは2026年9月3日に、鶴和侑真選手を2026年JFA・Fリーグ特別指定選手として認定したと公表しています。所属は、リガーレヴィア葛飾U-18。
「U-18」が付いたままFリーグの公式戦に出られる、という一行が、サッカーのほうで毎週のように流れている認定と同じ形で立っている。制度の中身も同じ考え方で、所属を動かさずに上のカテゴリの試合に出す。違うのは、それがサッカーの文書の一項目ではなく、Fリーグ向けという別の文書として用意されている点です。
この別建ては、二つのことを同時にやっている。ひとつは、フットサルの側に自前の入口があるということ。サッカーの特別指定に空きが出たからフットサルの子が入る、という形ではない。もうひとつは、その入口の幅が、サッカーのそれとは全く別の数で運用されるということ。
週に一度回るものと、年に数えられるもの
Jのほうは、受入先のクラブが各週の火曜日の正午までに申請を出し、JFAの技術委員会が各週の木曜日に認定する。一週間ごとに回っている窓口があるから、シーズンの途中で何度でも動く。8月に出た認定の所属欄を見れば、国士舘大、豊川高、立命館大、東京学芸大、日本体育大、東洋大、日本大、桃山学院大、青山学院大、九州産業大、専修大、帝京高校と、ひと月でこれだけの名前が並びます。8月の特別指定の所属欄に大学名が並んでいた話は前に数えたとおりで、大学が主、高校が従という比率で出ている。
フットサルの三本目は、そういう並び方をしない。認定が出たら、クラブ名とU-18という区分が付いた一人の名前が、その日のお知らせとして載る。
数の多い少ないを、制度の出来不出来として言いたいのではありません。問題は、数が少ないほうの入口が、同じ形をしているせいで同じものとして語られてしまうことのほうです。
中学生や高校生が、自分の競技の上を見られるか
日本の育成年代で「上に出る」と言ったとき、たいていの子が思い浮かべるのはJリーグです。2種登録があり、特別指定があり、ルヴァンカップの一回戦で高校生がデビューする。そういう話が毎週のように出てくるから、道が見える。
フットサルをやっている高校生にとって、その道は何本見えているでしょうか。制度としてはある。Fリーグ向けの特別指定は、JFAのページに正式に置かれている。でも、年にどれだけ認定が出て、どのクラブのU-18から出ているのかを、自分で調べに行かないと分からない。サッカーの側は、認定が出るたびに受入先のJクラブも所属校も告知を出すから、探さなくても目に入ってくる。この差は、制度の有無の差ではなく、通った人の数と、その人の名前が流れてくる回数の差です。
見えている道の本数は、たぶんそのまま、その競技を続けるかどうかの判断材料になっている。中学で部活かクラブかを選ぶとき、高校でサッカー部に入るかフットサルのチームに残るかを選ぶとき、子どもも家の人も「この先どうなるか」を見ようとする。そこで出てくるのが、週に一度回っている窓口と、年に数えられる認定なら、どちらに寄るかはだいたい決まってしまう。
同じ形で置いてあることの意味
それでも、Fリーグ向けが別建てで置いてあること自体は、ちゃんと効いていると思っています。別建てだから、サッカーの運用に合わせて窓口の日を変える必要がない。別建てだから、フットサルの側のリーグ日程と高校年代のクラブの事情で、認定の出し方を決められる。なでしこリーグ向けも同じ理屈で立っている。
日本の制度設計の癖がここに出ていて、ひとつの原則を書いて全競技に適用するのではなく、同じ考え方を競技ごとに書き写して三本立てる。手間はかかるが、どれかが動かなくなったときに他が止まらない。
足りないのは、その三本目を通った人の記録が、通った本人とクラブの外に残らないことのほうではないかと。リガーレヴィア葛飾U-18の名前が、9月3日のお知らせとして一度流れて、それきりになる。何年目のU-18からは誰が出て、その子がその後Fリーグのどのクラブに行ったのか。サッカーなら街クラブからジュニアユース、ユース、そして大学やJへ、という段が公表の経歴に定型で載るのに、フットサルの側にはその型がまだ少ない。
NEWDIHでいま作っているものも、結局は同じところに向かっています。誰がどこで何分出たかを、本人とチームの手元に残しておく。公表される経歴の型が無い競技ほど、そこが効く。
次にJFAのお知らせでFリーグ向けの認定が出たら、受入先のクラブ名と、そのU-18の所属元を並べて書き留めておく。三年ぶんたまれば、三本目の太さがようやく数で言えるようになる。
出典: fcf.com.co(2026-10-01)